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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
4章 『暴食』の解放
57/140

57 米粒ほどは感謝してるよ

 

「ライラが目覚めて、完全に回復してからの話になるけど、もし行くあてがあるなら私が送ってくよ。けど、もしあてがないのならここにいていいって、村長から許可をもらってるんだ」


 姉妹のことに関して、ゼストとはすでに話をつけてあった。


 進化生命体とはいえ魔物だから、その危険性をゼストも危惧していたが、言ってもゴブリンの進化種。進化生命体は進化元の魔物の強さにも左右されるので、小鬼の戦闘力はたかが知れている。


 もちろん絶対というわけではないが、もし何かあれば私が対処すると伝え、それならばと同意を得たのだ。


 普通、というかたぶん人間の町なら断固拒否されるだろうけど、このあたりの寛容さは、自分たちが差別の対象となっているがゆえだろう。


「その場合は、あなたたちを診てくれたテホランが、身元を引き受けてくれることになってる」


 テホランのほうへ視線をやると、相変わらず福の神みたいな彼が、穏やかに微笑みかけてくる。


 彼は、いまは独身だが、病気で奥さんと子供に先立たれたそうな。

 その代わりというわけではないけれど、ゼストとともにこの話をしたとき、自分から率先して二人の身元を引き受けてくれたのだ。


「……行くところは、ない。でも、二人だけで生きていくのは、難しいから……迷惑じゃないなら、ここでお世話になりたい」

「わかった。村長にもそう伝えとく。ということで、よろしくね、テホラン」

「任され、たよ。ノーラ、ライラとともに、歓迎、するよ」

「……ありがとう、ございます」


 弱々しくも、ノーラはそこで初めて笑みを浮かべた。


 そしてその二日後には、妹ライラも無事に目覚めた。


「あのね、トアおねえちゃんがね、ライラたちを助けてくれたって聞いたのっ。トアおねえちゃん、ありがとうっ」

「どういたしまして。いまはゆっくり休んで、早くよくなってね」

「うんっ」


 元気よくうなずくライラはとても愛らしい。


 傷は完全に癒えたとはいえ、体力は回復してないから、いまはまだ立って歩くのも難しいだろうけど、食欲はあるそうなので、しばらく療養していればすぐによくなるだろう。一安心だ。


 ◇


 衝撃的な来訪から、ちょうど一週間。指定されていた期日どおりに、件の赤鱗の竜は再び村へとやってきた。


 今回は事前にわかっていたので、朝から中央の大樹の天辺――森林が一望できる見晴らしのいいそこに設けた小さなスペースにて待ち構えていた。

 レイニスの活躍によって、せっかくきれいな村へと生まれ変わったのに、すぐに壊されてはたまらない。


 リストの料理はどうにか作り上げ、魔法箱の中に詰めてある。準備は万全だ。


 しかし……この一週間は本当に、本当に大変だった。地獄のようだった。


 グラトニーグルメのメニューはこちらの言語だが、文字を読める者はほとんどいないか、読めても限られた単語だったりするので、ひとつひとつこれと指示し、村の人たちにはひたすら交代で料理を作ってもらい、そのあいだ、私はひたすら魔物を狩った。

 狩って狩って狩って狩りまくって、合間に指示を出す。その繰り返しだ。


 ここが森の奥まった場所であり、めったに人が入ってこないがゆえに魔物が腐るほどいた点は、幸いだったと言えるけれど。

 膨大にすぎる料理分のポイントは、どうにか賄えたから。


 作業的な魔物狩りは封罪宮『怠惰』での慣れがあるとはいえ、さすがに今回はきつかったなぁ……。

 はからずも、存在位階もけっこう上がってしまった。


 ほかのみんなも、かなりしんどかっただろう。

 私以上の単調作業だから、ずっとやっていたらきっとノイローゼになる。なので事前に注意して、上手く短時間で交代しながらやっていたみたいだけど、それでも大人たちはみんなやつれた顔をしていた。


 けれど、大人も子供も全員が協力してくれたおかげで、どうにか期日までに間に合ったのだ。本当に感謝しかない。

 これがもし私ひとりだったなら、到底、間に合わなかった。


 というかこれ、またやる羽目になるんだよな。……せめて、もうちょっとこまめに補充させてもらえないか、竜に頼んでみよう。

 そのほうが精神的にも肉体的にも負担が少ないと思うから。


 にしても……料理を準備し終わってから少しだけ寝る時間を取れたけど、まだぜんぜん寝足りない。


 朝は目覚ましで起きれなくて、邪神の、頭に直接叩きつけられる大音声で起こされた。ありがたいはありがたいけど、いっそう殴りたくなった。


 朝から機嫌は最悪で、寝不足もあって相当ひどい顔をしていたらしい。ゼストたちにたいそう心配されてしまった。申し訳ない。九割方、邪神のせいだ。


『九割は言いすぎダろウ。オマエが起きナイから、俺が気を利かせテやッタとイウのに』

(米粒ほどは感謝してるよ)

『恩知らズな奴ダ』


 そういうのは全部、ここに放り込まれた件で相殺されてるんだよ。


「――うん? なんか、様子がちょっと変わったか?」


 こちらも新たに作った門前広場に降りてもらった赤き竜が、ぐるりと首をめぐらせて疑問を吐露する。


 ちょっとどころではないかなりの変化なのだけど、竜から見れば大した違いでもないのだろうか。



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