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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
4章 『暴食』の解放
55/140

55 美味しいものが世界を平和にするって話だよ

 

 集落へと戻ったあとで、私はあらためてグラトニーグルメを展開する。


 それは、やはりスロースコクーンと似たSFチックな機械で、二つのカプセルを立てて並べたような外観をしていた。


 そのカプセル二つがつながった部分、真ん中に液晶パネルがついていて、起動させると、そこに操作方法が表示された。


 その説明どおりに、右のカプセルにつけられた扉に触れると、装甲の一部がダストのように開いたので、そこへ少し前に狩った魔物の、肉以外の毛皮などの部分を投入する。


 と、パネルに表示された『P』――ポイントの『0』が『5600』に変わった。

 これは、いま入れた魔物素材を売却した際の金額をポイント化したものらしい。


 いまはちょうどあったから解体済みの素材を入れたが、解体前の魔物の死体をまるごと放り込んでもいいし、魔物素材じゃなくても、売却価値のあるものならなんでもポイント化できるようだ。

 また、お金や、その料理に必要な食材でも可。


 パネルのメニュー欄には料理の名前がずらりと並び、その横に必要ポイント数が表記されている。

 料理の種類はものすごく豊富で、ファミレスの三倍は軽くありそうだ。しかも、新たにレシピを登録することも可能らしい。


 メニューの中から、いまあるポイント内で選択できる料理を選んでタッチ。さらに決定ボタンを押せば、自動調理が開始され――たったの十秒でできあがってしまった。


 左のカプセルの扉がパカリと自動で開き、中にできたての料理――親子丼が、あたたかな湯気と香ばしい匂いを立ち昇らせている。


 思わず唾を飲み込んでしまうくらい、見た目も香りも実に美味しそうだ。


「でも、調理を自動でしてくれるってのはまだわかるんだけど……これ、材料とかどうなってるんだろ」


 お金とか換金素材だけとか、その料理に必要な材料じゃなくてもいいなんて、普通に考えてさっぱりわけがわからない。なんなら怖いまである。


『星鱗結晶の持つ力が、その料理に必要な食材や調味料に変換しテいるんダ』


 なにそのファンタジーもファンタジーな現象。

 説明されてもよくわからなすぎて余計に怖いだけだけど……しかし、この暴力的な香りには抗えない。

 少なくとも匂いや見た目は、私の知る親子丼そのものだから。


「ええい、ままよ!」


 女は度胸。思いきって口に入れた私は、直後、ぐーたらしているときに匹敵するくらいの幸福感に包まれた。


「……お、おいしい」


 そんなありきたりな感想しか出てこないほど、口の中が幸せいっぱいだった。


 まさか異世界で、高級店レベルの親子丼が食べられるとは思いもよらない。

 向こうでだって食べたことないぞ、こんなに美味しい親子丼は。


 火の通りすぎていない、とろっとろな半熟たまご。鶏肉はぷりっとしていてほどよい弾力があり、つゆの甘さは控えめで優しい味わい。

 鶏肉の旨味とたまごのコク、つゆの染みたごはんの絶妙な調和が素晴らしい。


 最高だ。ただただ絶品としか言いようがない。


「……もう、食材がどうなってるかとか、心底どうでもいい。美味しいは正義、美味しいは世界を救うんだよ……」

『何言ッテるんダ、オマエ』


 美味しいものが世界を平和にするって話だよ。


 ◇


 ドラゴンとの協定のために入手したグラトニーグルメ。


 もちろん、最優先に作るべきは竜たちに提供する料理だが――私が試食しているのを、周りでよだれを垂らしながら食い入るように見ている獣人たちにも、振舞わないわけにはいくまい。


 暴力的な香りをこれでもかと漂わせているので、彼らにとっては拷問にも等しかっただろう。気づくのが遅れて申し訳ない。親子丼のあまりの美味しさに軽くトリップしてた。


 まずはありったけの素材を投入してポイントを追加し、彼らにメニューを言ってもわからないだろうから全種類を適当に選択していく。


 そうして完成した料理たちに、それこそ餓えた獣のごとく群がる獣人たちが、焼肉祭りのときよりも狂喜乱舞していて、だいぶ怖かった。

 まぁ、気持ちはわかるのだが。


 特に彼らにとってはすべての料理が未知だっただろうし、みんな遠慮なんてかけらもなく、腹がパンパンになるまで食べていた。


 いま私の目の前で、はち切れんばかりの腹をさらした獣人たちが、広場のそこら中に転がっている。

 食べすぎてしまい、苦しくて動けないらしい。


 まぁ、そんな漫画みたいに膨らんだお腹じゃね。

 でも、その表情は実に幸せそうだ。


 彼らがひとしきり食べたところで、ようやく協定用の料理を作り始める。


 とは言うが、私がやるのはひたすら魔物狩りだ。グラトニーグルメに料理を作ってもらうために、とにかくポイントを稼がなくてはならない。


 私がやるのは魔物狩りと、でき上がった料理をひたすら魔法の箱に入れるだけ。


 しかし、これがなかなかに辛い。

 なのでリューリたちにも手伝ってもらった。


 率先して手伝うって言ってくれたから、意地も見栄もプライドもない私は、遠慮なく子供にだって手伝ってもらうのだ。


 そして、それを見たほかの人たちも手伝ってくれた。


 自動かつ十秒で作ってくれるといっても、ポイントのために魔物を狩る必要があるし、量も量なのでかなり時間がかかりそうだが……まぁ、期日までにはなんとかなるだろう。なるといいな。



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