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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
4章 『暴食』の解放
48/140

48 スライムこんにゃくの悪夢

 

 隠しダンジョン、封罪宮『暴食』の攻略を開始したヴィレムら冒険者一行。


 ダンジョンではコアが魔物を生み、ダンジョンへと侵入した者たちの行く手を阻んでくる。


 この天然洞窟を模したダンジョンに出現するのは、ひたすらに『スライム』のみだった。

 といっても、消化と吸収をするだけの、ただのスライムだけではない。


 生物の皮膚を溶かす強酸、または武装を溶かす腐食液を飛ばしてくるものや、火や水などの魔法を使ってくるもの、岩壁に擬態し天井から奇襲をかけてくるもの、通路を塞ぐほどの巨体を持つものなど、実に多種多様だ。


 ただ、どのスライムにも共通しているのが、ジェル状の肉体を持ち、物理攻撃がほとんど効かないことで、その点は厄介である。


 が、例外はあれど急所の核は見えるし、攻撃を避けつつ、その小さな的を的確に突くことは、ヴィレムにもギデオンにもわけはない。


 ミリーにいたっては、射撃の正確さ、連射性、そして魔法の効果とスリーコンボでもっとも活躍していた。

 物理の効かないスライムには、魔法がよく効くのだ。


「ミリーがいるとスライム狩りが楽でいいぜ」

「ふふん。あたしがいてよかったわね。もっと褒めて称えて崇めなさい?」


 寂しい胸を得意げに張って言うミリーに、クソ真面目なギデオンが「ははー、ミリーさまー」とクソ真面目な表情と声音で言って拝み始めるので、ヴィレムとセルカが吹き出した。

 彼はふざけてやっているわけじゃない分、余計にタチが悪い。


 そんなギデオンはともかくとしても、ときおりおふざけや軽口をまじえながら、彼らは探索を進めていく。


 仲間の命がかかっているうえに未知のダンジョン探索で、よくそんなふざけていられるなと思われるかもしれないが……だからこそ、なのだ。


 彼らのそれは、気が逸るのをごまかし、平静さを保つためのものだった。


 ◇


 ダンジョン内に何日もこもるとなると、倒した魔物のドロップアイテムが生命線となってくる。


 ランダムドロップにはなるが、何体かに一体は食材アイテムを落とす。


 空間拡張の施された魔法の鞄があっても、容量には限度があり、さすがにそう何日もの物資は持ち歩けない。

 ゆえに長期におよぶダンジョン探索では、手持ちの物資とドロップアイテムとを併せて、どうにかやり繰りしていくのが普通だ。


 だが、このダンジョンは……あまりにも辛かった。


「うぅ……もう、〈スライムこんにゃく〉は、飽きたのですよぅ……」


 しくしくと涙を流しながら、セルカはソースをちょろりと垂らした〈スライムこんにゃく〉を口に入れる。


 それはスライムの、いわば肉にあたるドロップ食材だ。

 まさに触感はこんにゃくそのものだが、本家特有の匂いもなければ味もない。


 煮込みの具の一つとして入っているのならまだしも……現在、彼らの主食は〈スライムこんにゃく〉そのものとなっていた。


 攻略開始から、すでに一週間。町から持ってきた生もののたぐいはとうに食い尽くし、いまは干し肉を少しずつ付け合わせにし、堅パンと〈スライムこんにゃく〉で食いつないでいる状態だった。


「……うるせぇ、言うな、セルカ。肉だと思って、食いやがれ……」


 げんなりしているヴィレムの横では、


「これは肉だ、これは肉だ、これは肉だ……」


 彼の言をクソ真面目に真に受けたギデオンが、ひたすら自己暗示をかけている。


「まぁ、魔力の回復が促進される点は、あたしとしてはありがたいけど。普通のこんにゃくよりはカロリーもちゃんとあるし」


 ミリーも微妙な顔こそしているが、ほかの面々よりかは堪えた様子はない。


「そういう問題じゃないのですよぅ……いいですよねぇ、ミリーは、もともとこんにゃく好きですしぃ……わたしなんて、〈スライムこんにゃく〉に追いかけられるという、恐ろしい悪夢を見たくらいですよぅ……」

「スライムじゃなくて?」

「こんにゃくのほうですよぅ……地の果てまで、追いかけてくるんですよぅ……」


 さめざめと涙しつつも、決して残したりはしない。たとえ味気なくても、ちゃんとエネルギーになるのだ。飽きて嫌だからといって、食べずに動けなくなるような愚は犯さない。


 そうしてだだ下がりしてしまった士気も、目的を思い出せば否応なしに上がる。

 仲間を救う、ただその一心でスライム食に耐え、行く手を阻むスライムたちを蹴散らし、彼らは最奥を目指してひた進む。


 しかし、いまの彼らにとって非常に幸いなことが一つ。妙な直感力を持つセルカがパーティメンバーであることだ。


 未知のダンジョンでは、フロアを踏破し次層への階段を見つけるのも容易ではない。マッピングをしながら、手探りで地道にいくしかないのだ。


 けれど彼らは、セルカの直感力によりほぼ最短のルートを行き、本来であれば数週間、下手をすれば数か月単位でかかるだろう道のりを、たったの十日で踏破し、そしてついに最奥へとたどり着いたのだった。


 本当に最後までスライムしかいないダンジョンだったが、しかし決して楽な道のりだったわけではない。


 危ない場面も多々あったし、死にかけたりもした。

 セルカの扱う高位の治癒魔法がなければ、全滅だってありえたかもしれない。

 そのセルカはと言えば、〈スライムこんにゃく〉で精神的に死にかけていたが。


 全員が心身ともにボロボロ。しかし彼らはそこへとたどり着き、そして――それを見つけたのだ。



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