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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
3章 獣人の集落
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44 冒険者パーティと古代遺跡

 

 ――それはまだ、トアがエナポをキメまくりながら、なまはげテンションで封罪宮『怠惰』を攻略していたころのこと。


 獣人の集落がある場所より、さらに数日ほど奥へと分け入った辺りに、四人の男女の姿があった。


 それぞれに完全武装した彼らは、森からほど近い場所にある町、ロウデンからやってきた冒険者パーティだ。


「そろそろだと思うんだけどなぁ。方向は合ってるよな?」


 言いながら力強く踏み込み、同時に突き出された槍の穂先が、魔物の胸部、そのど真ん中を貫く。

 魔物の瞳から光が消え、完全に絶命したのを確認。力の抜けた体から引き抜いた槍を一振りし、血糊を払いつつそのまま肩に担ぐのは、やや軽薄そうな印象を受けるものの精悍な顔立ちをした青年、槍使いのヴィレム。

 このパーティのリーダーだ。


「はい。問題ないのですよ。〈導きの羅針〉は、ちゃんとこの先を示しているのですよ」


 横から迫る魔物を結界にて足止めしつつ、手元のアイテムの指針を確認しながらのほほんと答える少女セルカは、ヒーラー兼バッファー。パーティの最後尾で銀杖を振るい、ひたすら回復と支援に徹している。


 ヴィレムが一体倒したのを見て取り、セルカは結界を解除。遮るものがなくなった魔物が、怒りもあらわに突進してくるのを、ニメートル近くもある大きな盾が受け止めた。


「ふむ。しかし本当に、この森の魔物は奥にいくほど強力になっていくな」


 と言いながらも平然と、不動の体で巨体の突進を一身に受け止めている青年はギデオン。パーティの守護者たる盾戦士だ。


 大盾をわずかにかたむけ、狙いどおりにつんのめった魔物の首を、逆の手に携えた剣で両断したギデオンは、首と胴に分かたれた死体には一瞥もくれず、逆方向から迫っていた数体の魔物へ大盾を向ける。


 その見るからに重そうな大盾を、されど彼は軽々と巧みに繰って、魔物の群を翻弄していた。


「こっちは急いでるってのに、ほんとうっとうしいわねっ」


 まとめて放たれた三本の魔法矢が、いいように誘導される魔物たちの急所を見事に射抜いた。

 それをなしたハーフエルフの魔弓士ミリーは、一度弓を下ろし、その少しばかり長い耳を小さく動かす。


「……それで最後よ。索敵範囲内に魔物の反応はないわ」

「了解だ。さくっと取れるもんだけ取って先に進むぞ」


 本来であれば、倒した魔物はしっかりとその場で解体し、売却できるものは余さず持ち帰るのだが、彼らの目的は狩りではなくほかにあった。

 それも、可能なかぎりの急ぎだ。


 それでもすべてを捨て置くのは懐具合から惜しいとして、時間をかけずに取れる部位と魔石だけを回収し、彼らは目的地を目指してさらに奥へと進んでいく。


 ◇


 ここは、名もなきうっそうとした、樹海と呼ぶべき大森林地帯。

 いくつか亜人種の集落があると聞くが、主となる住民は魔物だ。


 なんでも、この森の最奥部には、伝説級の魔物も生息しているという話もあるそうだが……あくまで噂であり、真偽のほどは定かではない。

 少なくとも、この辺りにいる魔物はまだ、ヴィレムらのパーティでも多少の余裕を持って倒せるレベルだった。


 ヴィレムたちは、その後も順当に、息の合った連携でもって魔物を撃破しながら進んでいく。

 すると、やがて樹々が途切れ、ひらけた場所に出た。


 そこには、あまりにも場違いな建造物がひっそりと、だが異様かつ圧倒的な存在感をもってたたずんでいる。

 この場所こそが、彼らの目的地であった。


「これが、例の古代遺跡か。予想の数倍はでかいうえに、ずいぶんと妙ちくりんな建物だなぁ」


 ヴィレムがそうこぼしたように、それはこの世界の現代における建造物からしてみれば、まさに奇妙このうえない代物だ。


 しかし、古代の遺物たるこの建造物をトアが目にしたなら、間違いなくこう言うだろう。「え、この近未来的SFチックな建物が古代の産物なの?」と。

 そのあとには「いやまぁ、SF要素を加えたファンタジー世界だと、わりと定番な設定ではあるけどさ」と続くのだろうが。


 そんな異世界人たるトアの観点で言えば、実に典型的な近未来風で、実に例えの難しい前衛的なデザインの建物である。


 何百年もの月日を雨風にさらされていると思えないくらいには、目立った風化は見られない。

 だが、材質不明なのっぺりとした白い外壁は全体的にくすみ、または汚れたり黒ずんだりしていて、さらに森の中ゆえか植物が這っているその様相が、永い時の流れをたしかにうかがわせた。


「ふむ。何やら、とてつもない破壊の跡があるな」


 ギデオンが視線を向ける先、上部の一角が見事に抉れている。まるで爆破でもされたかのようだ。


「まぁ、古代超文明が崩壊した理由は、大きな戦いによるものだと言われてるからね。そんなことより、さっさと中に入りましょ。時間がもったいないわ」

「だな」


 建物の入口は、もともと閉じていたものが突き破られたようになっていた。

 おそらくは魔物の仕業だろう。その証拠に、内部にも魔物の姿があった。


「けっこうな数の魔物が住み着いてるらしいな」


 ヴィレムが槍を担ぎながら疎ましげにボヤく。

 森など自然の中に存在する古代遺跡にはよくあることだ。


「この中は、外よりも魔素が濃いみたいね。魔物にとってはとても魅力的な住まいってことよ。内部があちこち破壊されているのは、大方この遺跡をめぐって争ったのでしょう」


 そしてここにいる魔物たちは、外から入ってきたヴィレムたちを、人間であるという以上に敵視したのだろう。

 やたらと殺気立って向かってくる魔物たちを順当に処理したあとで、彼らはあらためて内部を見まわした。



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