表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
31/140

31 こっちのほうが断然、興味をそそられるよね

連投①

 

「だいじょうぶ! わたし、匂い、わかる!」


 そこで、リューリが得意げに胸を張りながら言った。


 要するに、集落までの道自体はわからないが、集落の匂い、もとい集落にいる仲間たちの匂いをたどれば行ける、ということなのだろう。


 さすがは狼の獣人といったところか。

 かなり鼻が利くらしい。


 だが、


「…………」


 くんくんと小さな鼻をしきりに動かしていたリューリのしっぽが、しばらくしてへにょんと垂れた。耳もぺたんとしている。


「匂いがしなかった?」

「……うん」


 つまり、リューリの優れた嗅覚をもってしても捉えられないくらいには、ここから集落が遠いということだ。


 よくよく聞いてみれば、彼女たちはこれまで集落のある森から出たことがなく、捕まったのは集落の近くだが、会場までは私たちと同じく幌付きの馬車で運ばれたため、どこを走っているかもわからなかったという。


「方角もわからない、か。……困ったな」


 どうしたものかと私が内心で頭を抱えていると、


「あの、トアさん。わかりました、集落の場所」


 天の声に、ばっとそちらを見る。

 確かめるまでもなく、声の主はレイニスだ。

 振り向いた勢いがよすぎて驚いたのか、目をぱちくりさせている。

 ごめん。


「どういうこと? というか、あなたもその集落の出身?」

「いえ、ボクは別、だと思います。そこは獣人たちしか住んでいない集落みたいなので。実はボク、記憶がなくて、どこに帰ればいいかわからないんですよね」


 なぜか照れくさそうに頬をかきながら、さらりと深刻な事実が投下された。


「一般的な知識はありますし、生活するには特に支障はなさそうなんですけど、自分のこともよくわからない状態でして」


 自分が以前どこにいて、何をしていたのかもさっぱりなのだとか。

 ただ、目が覚めたとき、彼女は血まみれだったそうだ。傷はなかったが、それは明らかに自分の流した血で。

 魔物か盗賊か、はたまた何か厄介なトラブルにでも巻き込まれていたのか……。


「そのわりには、あっけらかんとしてるよね。不安とかはないの?」

「うーん。不思議とないんですよねぇ。記憶がなさすぎて、不安になりようがないのかも?」


 と疑問形で返されても、私にはわからない。

 そういうものなのかも、彼女がおかしいのかも。


 ともあれ、記憶がなくて帰るところのわからない彼女を、事情を聞いたリューリたちが自分たちの集落へと誘ったらしい。


「なので、向かう先はボクも同じです」

「そっか。それで、集落の場所がわかったってことだけど」

「はい。精霊たちが教えてくれました」


 レイニスはやはりエルフらしく、自然界に存在する精霊と交信し、力を貸してもらうことができるそうだ。


 リューリが頑張ってくんくんしているあいだ、彼女は彼女で風の精霊を中心に聞き込みをしていたらしく、その結果、獣人三人娘の出身らしき集落を見つけた、というわけなのだった。なんて優秀な子か。


 本当に助かった。最悪、なんの手掛かりもなく、ひたすら森の中を探すはめになるところだったから。

 家に送ると約束した手前、それを反故にするわけにはいかないし。


「でも、ここからだとかなり遠いみたいですね。徒歩だと、おそらく一週間くらいはかかるかと」


 歩いて一週間の距離……そりゃ、リューリの嗅覚も届かないわけだ。


 そうして話しているうちに、村からだいぶ離れたところまで来ていた。


 そこで一度足を止めた私は、同じく立ち止まって首をかしげている子供たちをよそに、スロースコクーンを『ムービングシェルター』モードで展開する。


「あっ、これ、あのとき、の!」


 途端、自分が役立たずだったことにしょんぼりしていたリューリが復活。

 三角の耳をピンと立たせ、しっぽをぶんぶんと振り、空色の瞳をキラキラさせてスロースコクーンを見る。


 村への興味もすっかり失せたらしい。清々しいほどの鞍替えっぷりだ。

 まぁ、こっちのほうが断然、興味をそそられるよね。


「中、入る?」


 こてん、と無表情に首をかしげるヤエ。


 ともに檻の中にいた彼女たちは、私がスロースコクーンを出したのも、中に入って出てきたのも、その一部始終を見ているのだ。


「うん。本当なら私しか入れないんだけどね」


 スロースコクーンの所有者は私だ。獲得した時点で登録されているらしい。


 スロースコクーンの操作権限は所有者にしかないのだが、その所有者である私が許可を出せば、その者も特別に中へ入れることができる。


 とはいえ、いくら空間が拡張されていて、みんな体の小さい子供とはいえ、五人も入ればやや狭く感じてしまうのだが……まぁ仕方ない。


 距離が距離だ。せっかく移動式シェルターがあるのに、一週間かかる距離を歩くなんてバカバカしいにもほどがある。


 しかもこのスロースコクーン『ムービングシェルター』モード、時速はマックスで八十キロも出せるうえに、オート操縦なのだ。進路を入力すれば、そのとおりに進み、障害物なんかも勝手に避けてくれる。


 森のように障害物ばかりの悪路では、さすがにそこまでの速度は出せないが、多脚式ゆえの自在さがあるので、タイヤで走る乗り物では行けない獣道だってすいすい進めてしまう。


 さらに装甲は戦車よりも堅固だし、その重量もかなりのものらしい。魔物の襲撃もなんのその、そのまま跳ね飛ばしていける、ということだ。


 本当に、なんて素敵なシェルターなんだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ