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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
30/140

30 お家は森の中……らしい

 

「わたし、リューリっ!」


 そう元気いっぱいに手を挙げて最初に名乗ったのは、狼人の少女だった。

 褐色の肌に、好奇心の塊みたいなキラキラしたスカイブルーの瞳がよく映える。


 銀色の耳としっぽ、そして同色の髪は、その内面を表すように毛先がところどころ元気に跳ねているが、後ろは背中まであって一つに編み込まれている。


 さっき代表して発言していたことからわかるように、三人の獣人の中で、彼女がリーダー的な存在のようだ。


「私、ヤエ」


 次いで名乗ったのは、肩の長さで切りそろえられた濡れ羽のような髪を持つ、鳥人の少女。

 無表情がデフォルトなのだろうか、目元はやや眠たそうな感じで親近感が湧くけれど、金色の瞳は月のようにきらめいている。


 鳥人の特徴として腕に黒い羽根を生やしているのだが、鳥のように飛べたりはしないらしい。ただ、落下速度を減衰させたり、跳躍の距離を伸ばしたりする程度の補助にはなるそうだ。


「アルマは、アルマ、なの」


 獣人三人娘の最後、一人称ですでに名乗っているのは、兎人の少女だ。


 黒くつぶらな瞳に、ウサギでいうところのオレンジカラーの髪は腰のあたりまである。髪と同色の長い耳と、おしりについたポンポンみたいな丸いしっぽがとても愛らしい。


「ボクはレイニスと言います。見てのとおりエルフです」


 最後は、唯一種族の異なる少女が、長い耳をぴこぴこと動かしながら名乗った。


 ステレオタイプのエルフで、金色の髪に翡翠の瞳を持った、まさに妖精のごとき可憐さだ。しかもボクっ娘。だが、彼女からはどことなくレーナにも似た気品のようなものを感じる。


 見た目から、彼女が一番年上で、私の外見年齢くらいだろう思っていたが、やはり十七歳だという。どうりで言動がしっかりしているはずだ。

 ちなみに、獣人三人娘は全員、十一歳ということだった。


 そのあとで私も名乗ったら、獣人三人娘から、示し合わせたように「トアねえ」「トア姉」「トアおねえちゃん」と呼ばれた。

 それぞれ順に、リューリ、ヤエ、アルマだ。


 いずれにせよ〝姉〟なのだが、私は彼女たちの姉ではない。が、まぁ、呼び方なんてなんでもいい。好きに呼ばせておくことにした。


 にしても、獣人三人娘はやけに原始的な恰好をしてるな。


 みんな捕まったときの恰好のままらしく、レイニスは簡素だがいかにも村娘が着てそうなワンピースを着ているが、獣人たちは――布ではなく、動物や魔物の皮らしきものを二枚、体の前後から挟み込むようにして、肩と脇に皮紐を通してとめている。


 なんというか、裁縫という概念すら感じられない服なのだけど……いや、皮紐を穴に通してつなげるというのは裁縫の範疇なのか? 

 とまぁ、それはさておき。


 そんな彼女たちを連れて、私はやや足早に通路を行く。

 まずはこの建物からの脱出だ。


 出口までのルートは、生き残りの従業員から聞き出した。

 今度こそ嘘はつかれていないはずだ。死体の前で血まみれになり、放心状態でへたり込んでいたから、嘘なんてつく余裕はなかっただろうしね。


 ◇


 事実、嘘じゃなかった。無事に裏口へとたどり着いた私たちは、そこから外へと出る。扉の先は洞窟になっていた。


「洞窟の地下に、あの人工的で立派な施設があったのか」


 レーナがついぞ見つけられなかったと言っていたが……たしかに、こんなところに闇オークションの会場があるなんて誰も思わないだろう。


 そしてこの洞窟は、どこぞの村の端にあるらしかった。


 入口は正面と裏の二か所。通路も分かれているらしく、ぐるっと回って茂みから様子をうかがうと、正面には見張りなのだろう騎士が二人立っていた。


 裏口のほうは、何かあったときの避難口といったところか。

 人ひとり通るのがやっとといった狭さで、さらには存在を隠すためか樹々の陰になっているため、騎士たちも見つけられなかったようだ。


 少女らを促しつつ、こそこそと移動する……が、まるで誘蛾灯に誘われる虫のように、リューリがふらふらと村のほうへ歩いていこうとしたので、慌てて腕を掴んで引きとめる。


「ちょっとリューリ、何やってるの。駄目だってば。見つかったら面倒なことになるから、こっそり出てきたのに」

「……はっ! ごめん、なさい」


 と言いつつも、そっちから目を離せない様子のリューリを、私はそのまま引っ張っていく。


 ざっと見たところ、あの闇オークションの会場以外、特にこれといって特徴も見どころもなさそうな、非常に簡素な田舎村だ。リューリはいったい、この村の何に興味を惹かれたのだろうか。


 まぁなんにせよ、村に立ち入るつもりはない。

 せっかくこっそり出てきたのに、こんなところでまごついていたら、いずれ中での処理を終えた騎士たちと鉢合わせしてしまう。


「それで、みんなの家はどこにあるの?」


 村から離れつつ、少女たちに訊ねる。


「森のなか!」


 リューリからものすごく大雑把な答えが返ってきた。

 森の中って、ここも大概、森の中なんだけども……。


「森の中、集落、ある」

「そこが、家、なの」

「場所は?」


 ヤエとアルマが顔を見合わせ、きょろきょろと首を振って、そのままこてんとかしげる。わからないらしい。……いや、どうすんの。



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