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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
27/140

27 そういうカラクリかっ

 

 先ほどまで悪魔とやり合っていたシウカは、刃を交えるごとに動きが鈍くなっていっているように見えた。


 たしかに、シウカよりも悪魔は強く、体格だって比べるべくもない。ともなって体重は悪魔が圧倒的に勝り、くわえて剣の重量もある。


 真っ向から打ち合うのは本来、愚策だったのだろう。しかし、仮にそうであったとしても、どうにも不自然に感じた。違和感が拭えなかった。


 そしていま――自分自身で体験して、先に感じたそれらが、私の気のせいではなかったことを知る。


「っ」


 いやに体が重い。動きが鈍い。

 一瞬でも気を抜けば、膝が落ちてしまいそうだ。


 まだ、疲労するほど打ち合ってはいないのに。

 当人同士のスペック自体は、そう変わらないはずなのに。


『原因は悪魔の持つ魔剣だナ。アレの放つオーラに、一種のドレイン能力がアルんダ。触れル、あるいは打ち合ウ距離まで近づくコトで、気力や体力が吸い取られルらシイ』

(そういうカラクリかっ)


 やっぱりマトモな剣じゃなかった。


 にしても……厄介だな。

 このままじゃ、私のほうが先にへばる。


『スロースコクーンを使エ。アレの装甲ならドレインの影響を受けナイ』

(でも、スロースコクーンって戦闘機能ないんでしょ? 身を守れても、攻撃できないんじゃ意味がない)

『モードがもう一つあッタだロウ』

(あ、そういえば)


 さっそく、もう一つのモード『パワードスーツ』のコマンドを唱える。


「コマンド――〝着装〟」


 直後、展開されたスロースコクーンが形を変え、鎧のように私の全身を覆った。


 自分で見える範囲でも、かなりスマートなデザインで、頭部だけは鼻あたりまでを覆うヘルムのようだ。バイザーを上げれば目元も出るが、上げずとも透過されたように視界を遮ることはない。


 体のラインに沿ったスマートなデザインとはいえ、それなりの重量がありそうなものだが、不思議と金属装甲をまとっているという感覚はなかった。

 重さも感じず、関節の動かしにくさもない。


「ハッ、なんだぁそりゃぁっ!?」


 面白いものを見つけた子供のような顔で笑い、叩きつけるようにして魔剣が振り下ろされる。

 それを真っ向から受け――すぐにわかった。


(ほんとにドレインが効いてない!)


 魔剣のオーラを完全にシャットアウトしている。

 さらには、装甲で直接、刃を受けても切れることなく、蹴りを防いでも衝撃さえ伝わってこない。


 ただ、このモード、パワードスーツと謳ってはいるが、スロースコクーンはシェルターとしての役割が主で、防御力こそ折り紙付きだが、それ以外は多少の機動補助がある程度だ。パワー系の補助はない。


 けれどもいまは、そのアーマーとしての機能こそが何よりありがたい。

 パワーアップはせずとも、鎧としてはこれ以上なく最高な代物だった。


 消耗以上に気力体力を持っていかれないのなら、まだまだ戦える。まだ出力も上げられる。必然――押し返せる。


 速度がわずかに上がり、一撃の重さが増したことに気づいた悪魔が「へぇ」と呟いて片眉を上げる。


「面白れぇ。こいつの能力が効いてねぇな? そのへんてこな鎧のおかげか。なら――もっと上げても問題ねぇなっ」


 にわかに押していた私の攻撃が、その瞬間、再び拮抗した。

 悪魔の攻撃も、同様に速度と重さを増したのだ。


 打ち合うごとにどんどん速く、重くなっていく。

 それに合わせ、私もまた出力を上げていった。


 互角の攻防――だが、悪魔が何ごとか呟いた直後、その周囲に闇色の球が三つ、出現する。

 魔剣のオーラ以上に禍々しく、混沌とした漆黒の球体だ。


 アレはヤバいと直感が警告するに従い、向かってきたそれを回避。目標を失った闇色の球は、そのままの軌道を突き進む。――客席を抉り取りながら。


 それは、純粋な破壊ではない。例えるなら、獣が顎門を開き、進路上にあったものを食らっていった、といった感じだ。


(ちょっ、なにアレ!? アレって、触れたらアウトなやつじゃない!? この装甲は大丈夫だよね!?)

『アレの原理は、触れタモノの分解ダ。硬いモノほど分解速度は遅くナル。完全に防げるワケではナイが、生身ヨリは断然マシダ』

(冗談じゃない。私が無事でも、私の大事なぐーたらルームがなくなっちゃう)

『心配スルのハそこなのカ。オマエが死んデタら、それこそ意味がないダロウに。まァ、安心しロ。星鱗結晶が無事ナラ、そのうち勝手に修復さレル。損傷具合に応じテ時間ハかかるガナ』

(そんな感じになってたんだ。初耳なんだけど)

『別に訊かレてナイからナ』

(…………)


 ともかく、それならたしかに安心だ。

 その星鱗結晶とやらだけ、死にもの狂いで守ればいい。


(で、その星鱗結晶はどこにあるの?)

『腕輪に嵌まッテる、ソノ青い石がソウダ』


 あぁ、これがそうだったのか。


 たしかに、スロースコクーンはこの石から出た光で構成されている。

 まさかこれが核だったとは。腕輪、断固死守だ。


 この腕輪は私の手首と一体化しているようなものなので、奪われる心配はしなくていいが、腕ごと斬り飛ばされればどうしようもない。

 万が一にも斬られてしまわないように、あとで何か腕防具でもつけよう。


『魔力を通せバ、ギリギリ防げルんだがナ。オマエ、魔力ないしナ』

(えっ、そうなの!? え、まったく?)

『あァ。まったく、ダ』

(じゃあ、私って、そもそも魔法が使えないってこと?)

『ソウいうコトだナ。言ッタだロウ、オマエの世界に魔素は存在しナイと。魔力の源こそが魔素ダ。すなわち、そうイウことダ』


 そっか、私って、どうあがいても魔法を使えるようにはなれないのか……って、いまはそんなことどうでもいい。

 嘆くなら、スロースコクーンに通せる魔力がないことのほうだ。

 そしてそれも、ないものは仕方がない。どうしようもない。



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