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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
22/140

22 いらないよ、そんな才能

連投①

 

「トア? いまの、金属でできた繭みたいなものは何? それに、その肩に乗っている生きものはどこから出てきたの? さっきまでいなかったはずよね?」


 レーナがムゥを指差しながら、しきりと目を瞬かせている。


「さっきの繭みたいのは、私の安息。まぁ気にしなくていいよ。この子はムゥと名付けた。よろしく」

「いや全然答えになっていないのだけど」


 だってちゃんと説明するの面倒なんだもん。


「……まぁいいわ。でも、なんか似てるわね、あなたたち。全体的に気だるそうなところが」


 そりゃあ、私もムゥも常に気だるいからね。ぐーたらを至上として愛する、自堕落で怠惰な生きものだからね。


「むー……」

「あれ?」


 肩に乗せていたムゥが、気だるげな鳴き声一つ残して忽然と姿を消した。

 どこに行ったと見回してみるが、どこにもいない。


『スロースコクーンの中に戻ッタようダゾ。そモ、奴は顕現自在ダ』


 まったくもって腹いせにも八つ当たりにもならなかったらしい。……ぐぬぬ。

 けどまぁ、しょうがない。ムゥのことは忘れよう。精神衛生的に忘れたほうが身のためだ。


「さて」


 さくっと気持ちを切り替えて、現状へと意識を戻す。

 いくら安全堅固な移動手段を手に入れたといっても、まずは鉄格子をどうにかしないと外へは出られない。


「鉄格子を素手でどうこうするのは、さすがに無理だしなぁ……」


 ぐにーっ。(両手で掴んだ鉄格子がそれぞれ左右に広がるかたちで変形した)

 ぐにーっ。(なにごともなかったようにもとに戻した)


「……鉄格子を素手でどうこうするのはさすがに無理だしなぁ(棒読み)」

「それでごまかしたつもりかしら!?」

「はは、なんのことかな(棒読み)」

「あなた絶対、役者に向いてない……じゃなくてっ! え、噓でしょう!? あなたいま、素手で鉄格子を曲げたわよね!?」

「見間違いだよやだなぁ。どこの世界に素手で鉄棒を曲げられる女子がいるのさ」

「いるわ、目の前に!! 私、ちゃんとこの目で見たもの! あなたが鉄格子をぐにーって粘土みたいに曲げちゃうところを!!」

「あ、そっか。これ粘土でできてたんだ。なら非力な女子の力で曲げられるのも納得納得」

「んなわけあるかぁっ!!」


 お嬢様の荒っぽいツッコミが鋭く響いた。

 そして彼女が実演してみせるが、当然のように鉄格子はびくともしない。そういうことだ。


 とまぁ、現実逃避はこのくらいにしておこう。

 あまりにも不毛だし、余計に悲しくなる。


 つまるところ、私はいつの間にか、鉄の棒を腕力で曲げられる怪力女子になっていた、ということなのだった。


 ◇


 悲しい現実が露見してしまったものの、ともあれ鉄格子の問題は解決した。

 そうとなれば、いつまでもこんなところにとどまっている理由はない。

 さっさと脱出してぐーたらするんだ。


「じゃあ、私は行くね」

「ちょ、ちょっと待ってトア。ここで無理して危険を冒さなくても、そのうち我が家の騎士が救出に来てくれるから」

「うん。だからレーナはここにいなよ。ついて来いとは言わない。私は私で動くだけだからさ」


 ひらりと手を振って、再び粘土のように曲げた鉄棒のあいだから抜け出す。


「あ……待って! やっぱり私も行くわ!」


 そう言って、レーナも友達を連れてついてきた。すると捕まっていたほかの子たちも、互いに顔を見合わせたあとでそれに続く。

 結局、全員での一斉脱出と相成った。


 総勢十一人で、ぞろぞろと通路を行く。

 逃げられることなど想定していないからか、檻の前に見張りはひとりもいなかったが、少し歩いたところで、いかにも悪党面した男と鉢合わせた。


 十中八九、ここの従業員、もとい犯罪組織の構成員だろう。

 要するに、敵だ。


「なっ、てめぇらは、商品!? どうやって檻から――」

「ふんっ」


 一息に男の懐へと潜りこんで鳩尾に拳を突きこむ。

 男は声を出す暇もなく、どさりと床に倒れ込んだ。


「は、早……しかも、一撃……トア、あなた、いったい何者なの?」

「だいぶ自堕落でちょっと怪力なだけの、どこにでもいる普通の女子だよ」

「あなたみたいなのがどこにでもいたら、いまごろ世は女性の天下だわ。普通って単語の意味、ちゃんと理解してる?」

「してるよ。さ、早く行こう」


 そのあとも、行く先で敵、もとい従業員と遭遇しては、即座に意識を刈り取って先へと進む。


 それからしばらくして、私は足を止めた。

 くるりと、後ろにいるレーナを振り向いて言う。


「どうしたのよ?」

「出口ってどこにあるのかな?」

「いまさら!?」


 レーナの鋭いツッコミがことのほか響き、それに反応したらしい従業員が横の通路から顔をのぞかせる。

 しまった、と青ざめるレーナだが、ちょうどよかった。あの人に聞こう。


 さっと男の背後を取り、腕の関節を決めて動けないようにする。


「ねぇ、出口までの道、教えてくれる?」

「てめっ、くそっ、こんなことしてタダで済むと――」

「タダで済まないのは、あんたのほうじゃないかな? 私がちょっと力を入れさえすれば、この腕、簡単に折れちゃうよ? それが嫌なら、さっさと出口を教えて」

「っ、誰が――」

「いいの? 折れたらものすごく痛いと思うけど。私だったら耐えられないなぁ。まずは右腕でしょ? 次に左腕、その次は右足、そして左足。それでもまだ、手首に足首、指の関節とか、人間には折れるところがけっこうあるからねぇ」


 それっぽく声を作って耳元でささやくと、男がぶるりと身を震わせた。


「まぁ、それでも教えてくれないというなら、仕方ない。最後は首を折って、別の人に聞くことにするよ。ここには人もいっぱいいるしね」

「ま、待ってくれっ……! 言うよ、言うから折るのはやめてくれっ……!」


 案外チョロかったな。いや、末端の構成員ならこんなものなのかな?


「……あ、あっちだ。角を右に曲がって、突き当たりを左に曲がったところが、裏口になってる」

「ありがとう」


 一応お礼を言いつつ、首に手刀を叩きこんで意識を奪う。


「……あなた、尋問の、いえ、拷問の才能ありそうね」

「いらないよ、そんな才能」


 フィクションでよくあるから真似してみただけだ。

 アングラ系の映画とか、けっこう好きなんだよね。



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