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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
21/140

21 ご主人様を差し置いてのぐーたらは許さん

 

 邪神の説明によると、魔法的な技術によって空間が拡張されたスロースコクーンの外装には、特殊な合金素材が使われているという。


 戦車以上の強度を持つ金属ゆえ、徹甲弾でも傷がつかず、さらに魔法やレーザー系の攻撃も弾いてしまう、この世界では最高硬度を誇るシェルターだそうだ。


「すごっ。この中にいたら絶対安全じゃん」


 また、ムービングを冠するとおり、このシェルターは移動を可能としている。

 六本の脚部を備えていて、出し入れは自由。モニターに映し出された外観図を見るに、多脚ロボみたいな感じだ。


 フォルムはちょっと蜘蛛っぽいが、脚パーツが太めだからか、不気味さも気持ち悪さもない。むしろ愛嬌さえ感じられる。


 身の安全を高いレベルで確保しつつ、ベッドでぐーたらしながら移動もできるなんて、これほど最高なシェルターがあるだろうか。


「えいっ!」


 ひととおりの確認をしたところで、もう辛抱たまらんとベッドへダイブする。

 もふんっ、と絶妙に沈みつつ、マットが体を柔らかく受け止めてくれる。


「うあぁ……しあわせぇぇ……」


 ダメ人間をさらにダメにする魔性のベッドだ。

 これはしばらく起き上がれそうにない。というか起き上がりたくない。


「むー! むー!」


 ……うん? なんか声がする。

 というか私、なんか潰してる? 


 体をずらすと、たしかに何かがいた。どうやら先客がいたらしい。ベッドが雲のようにふかふかで、埋もれていて全然、気づかなかった。


 生きものらしいそれをひょいと持ち上げる。


 手のひらに収まるくらいの大きさで、ぬいぐるみめいたそれの、あらわとなった全容にはひどく見覚えがあった。


「スロウス・アーマファオル? だいぶちっさいけど」

「むー」


 封罪宮『怠惰』のボスをそのまま小さくしたうえで、若干デフォルメしたような生きものが、眠たげに半分しか開いていないじっとりした黒目をこちらへと向け、不服そうに鳴く。


 装甲めいた鱗を持っていても、ナマケモノベースゆえにもとよりいかついモンスター然とはしていないけれど、すっかりちっちゃくなって妙に愛らしい。


「いやでも、私、たしかに倒したよね? なのに、なんで生きてるの? もしかして子供がいた?」

「むー」


 どうやら意思疎通はできないようだった。

 いや、さっきから「早くおろせよコノヤロー」的な感情が、その視線からひしひしと伝わってきてるのだけど。

 ついでに「おれのぐーたらタイムを邪魔しやがってー」とも言ってる気がする。


『ソイツは分体だナ。ソレも討伐報酬の一つで、まァ使い魔みたいなモノダ。本体は大して役にハ立たんダロウガ、連れていれバ奴の権能が使えルゾ』


 へぇー、あの権能か。それはまた、破格な報酬だな。


 まぁ、両手に乗るサイズのぬいぐるみみたいなものだし、特に邪魔になるものでもない。

 それに、彼もまた同志。ぐーたら仲間は大歓迎だ。


「じゃあ、これからよろしく、ムゥ」


 鳴き声から適当に名前をつけてベッドにおろすと、ムゥはその名前を歓迎することも拒絶することもなく、どうでもいいとばかりにぐーたらを再開する。


 なんとも気持ちよさそうにぐーたらするものだと、同じぐーたら仲間の私でも感心するほどのぐーたらぶりだ。


 ぐーたら選手権なんてものでもあれば、上位入賞は必至だろう。

 そしてダントツ一位だろう私もまた、その隣でベッドに沈み込んだ。


「…………」

「…………」

「……って、そんな場合じゃなかった」


 私いま、捕まってるんだった。

 絶賛、檻の中に監禁中なんだった。


 ふと見ると、モニターにレーナのぽかんとした顔が映っている。

 どうやら、取得した外部の映像がモニターに映し出される仕組みらしい。


 スロースコクーンの機能が気になって周りのことなんて忘れてたけど、いきなり金属の繭が現れて私が消えたのだ。

 レーナとその友達は唖然としていて、その横には、獣人だろうか、三人の少女がこちらを見ている。


 狼人と思しき少女は、空色の瞳をキラキラと輝かせ、銀毛のボリューミーな尻尾をこれでもかとぶんぶん振っている。大興奮といった様子だ。


 その後ろにいる、腕に羽根の生えた黒髪の少女は、無表情ながらも同じく目が輝いているし、その脇ではウサ耳が愛らしい少女が黒い目をぱちくりさせている。


 そんな映像を横目に見つつ、私はぐーたらの誘惑を振りきって、泣く泣くベッドから体を引きはがした。


 しかし、私が断腸の思いで身を起こすかたわらで、当然のようにムゥはふかふかマットレスに沈んだままだ。

 気持ちよさそうに寝息を立てている。


「…………(むかっ)」


 無性に腹が立ったので、ひょいと持ち上げて肩の上に乗せた。


「むーっ! むーっ!」


 そんな抗議の声は無視し、スロースコクーンから出ると、コマンド〝格納〟を唱えてさっさと片づけてしまう。


「むー……」


 使い魔だというなら、ご主人様を差し置いてぐーたらを満喫するなんて許されるわけがない。

 私は心が狭いのだ。ぐーたらのこととなると特に。



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