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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
2章 波乱の闇オークション
20/140

20 ダンジョンの攻略報酬とか、そんな感じのやつじゃない?

 

 その後、しばらくして馬車が止まった。

 幌の後ろが開いて、男がひとり荷台へと上がってくる。


 男は私の手足を縛っていたはずのロープが千切れていることに慌てていたが、すぐに別のロープを持ってきて縛り直す。さらに目隠しもされた。


 なんで目隠し? とは思ったけど、もちろん質問なんて許されるはずもなく。

 私とレーナを含めた全員が荷台から降ろされ、荷物のように運ばれていった。


 そうして放り込まれたのは、鉄格子のはまった檻だった。


 入れられてすぐに目隠しは外され、見れば、そこには私たちのほかにも囚われていた人たちがいて、その中にレーナの友達もいた。


 二人はいま、感動の再会中だ。


 ともあれ、ここまで来たら、もう配慮する必要はない。

 さっさと逃げ出してしまいたいところなのだけど……檻の鍵がなぁ。

 さてはて、どうしたものだろうか。


「鍵を奪うってのは、あんまり現実的じゃないよね。とすればピッキングしかないわけだけど、やったことないしな。しかも、内側からだと余計に難しいし。ま、ものは試しか。なんか細い針金みたいなもの、ないかな……」


 見回していて、ふと自分の手首についているものが目にとまった。

 シルバーの太めの腕輪で、青色の石が一つ埋め込まれている。


「何これ。私、こんなのつけてたっけ?」


 と首を捻るものの、見覚えがないのだから、私が自分でつけたものじゃない。

 よくわからないその腕輪に意識を向けていると――頭の中に文字が浮かび上がってきた。


「スロース、コクーン?」


 どうやらこれの名称らしい。

 スロース……あ、もしかして。


「これって、ダンジョンの攻略報酬とか、そんな感じのやつじゃない?」


 ボスを倒したら報酬がもらえるのは鉄板だ。


 あのとき、スロウス・アーマファオルの死体が、光のキューブとなって私の中に入ってきた。それがこの腕輪になったのでは、となかば確信する。


 ともあれ、不思議と使い方もわかったので、さっそく試してみることにした。

 二つのモードなるものがあるらしく、その内の『ムービングシェルター』のコマンド〝展開〟を唱えてみる。


 すると、石から光が飛び出して、目の前で大きな光の球となる。

 その光が消えたとき、そこには人ひとり収容できそうなサイズの、繭みたいな形をした金属の箱があった。


「おおっ」


 思わずと感嘆の声がこぼれる。


 正確な材質は不明だが、白色のつるりとしたフォルムで、なんだかここだけ世界観がおかしい。

 馬車があって貴族がいて、服装的にも中世ヨーロッパ風の世界観だと思ってたんだけど……これはなんというか、ひどくSFチックだ。


 まぁ、そんなことは正直、どうでもいい。

 それよりも、私の興味はこれが持つ機能にあった。


「シェルターってことは、たぶんこの中に入れるんだろうけど……入口らしきものは見当たらないな。どうやって入るんだろ」


 ボタンか何かがどこかにあるのかな、と思って装甲に触れた途端、ふっと視界が切り替わった。


「おおーっ!」


 そこはムービングシェルター、もといスロースコクーンの中らしかった。


 前部にはホログラムのモニターと操作パネルらしきものがあって、コックピット風ではあるが、座席にあたる部分はベッドになっている。


 キングサイズはありそうだ。雲みたいなふかふかなマットに、同じくふかふかな枕があり、ふかふかな布団がかかっている。……うずうず。


 後部には扉らしきものが二つ、設けられている。

 前に立てば、自動でシュンッと横にスライドするタイプの扉だ。

 うーん、サイエンス。


 中を確認してみると、片方はトイレ、もう片方は風呂になっていた。


「へぇ、お風呂もあるんだ。これはかなり嬉しいな」


 ぐーたらを愛する私は基本的にものぐさだから、面倒なときは二日入らないこともあったけど、それ以上はさすがに耐えられないし、風呂自体はけっこう好きなのである。


「にしても……広さ、おかしくない?」


 明らかに外から見たサイズと内部の広さが合っていないのだ。


 外観は巨大な卵を横たえた感じで、大きさはニメートルほどだった。

 トイレと風呂はおろか、こんなキングはあるだろうサイズのベッドが入る余地すらない、はずなのだ。

 風呂場の広さも、大人が五人は一緒に入れそうなくらいで、明らかにおかしかったし。


 まぁ、ここはファンタジーな世界みたいだし、大方、空間拡張とかそんな感じの技術なんだろうけど。


『その通リ』

「うわ、出たな邪神」


 ばっくれたわけではなかったか。


『俺をゴキブリか何かのよウに言うナ』

「ゴキブリなんかよりよっぽどタチ悪いでしょ。というかあんた、よくも勝手に異世界になんて送り込んでくれたね。一度呼んだのにシカトこいてくれたし。いますぐ私を元の世界に戻してよ。あと何発か殴らせて」

『そレはできン相談ダナ』

「なんで」

『できんモノはできン。諦めロ』

「それは、あんたの力でも戻せないってこと? それとも、あんたが帰したくないから?」

『さぁナ』


 まともに取り合う気がないってことだけはわかった。


「じゃあ殴るほう」

『そッチも無理ダ。残念だッタナ』

「ちっ」


 納得はいかないし、どちらも完全に諦めたわけではないけど、これ以上は不毛そうなのでいったん置いておく。



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