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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
1章 封罪宮『怠惰』攻略
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2 このまま封印だ、封印

 

 自宅にダンジョンの入口が出現した系の小説は、何作も読んだことがある。主にネット小説だが、わりと好きな題材だ。


 しかしそれはフィクションだからこそ。読む分には面白い。わくわくできる。けれども、それが現実で自宅に出現したら?


「いや入るわけないでしょ、普通に考えて」


 なまじサブカル知識があるから、ダンジョンが危険な場所だなんて一般常識レベルで知っている。


 物語で読む分にはいい。ゲームで攻略する分にもいい。むしろ嬉々として挑む。

 でも、リアルに命を落とす可能性があるとなれば、誰が好き好んで飛び込んでなどいくものか。


 私は命が惜しいのだ。

 そういうのは、命の危険のない物語やゲームでじゅうぶんである。


「このまま封印だ、封印」


 私みたいな人種にとって、ネット通販というのは至高のツールだ。

 徒歩圏内のスーパーやコンビニくらいになら出てもいいけど、電車に乗るような外出は論外である。

 残念ながら、ホームセンターは徒歩圏内にない。


 木板やら工具やらを速配で注文、翌日に届いたそれで、隠しダンジョンとやらの入口をきっちりと、厳重に塞いだ。

 でかい穴がすでに空いている時点で、ネジの穴なんて誤差だろう。


 それからは、いつもどおりのぐーたら生活を送り、そんな日々が至極幸せで、しばらくしたら穴の存在を忘れた。……が、それは唐突に起こった。


 ◇


 ある夜のことだ。ガンガンと、何かを叩くような音で目が覚めた。


(……え、なに? なにごと? 泥棒? ストーカー?)


 この部屋には私しか住んでいないのだ。

 室内の暗さもあいまってさすがに恐怖を感じ、とりあえずありえそうな可能性を胸中で並べつつ、そろりとベッドから降りる。


 そうして抜き足差し足で音源へと向かえば……そこはクローゼットの前。

 取っ手を握り、思い切って扉を開く。


「あぁ……そういえば、ダンジョンの入口があったんだっけ」


 木板で塞いでいたのだが、それがあたかも内側から殴打されているようにして震えている。

 そして次の瞬間、木板が弾け飛び、中から毛むくじゃらの怪物が姿を現した。


 ファンタジーでは定番の、コボルトそっくりの異形が。


「ちょっ……!?」


 棍棒で殴りかかってきたのでとっさに避け、


「なに人の部屋に勝手に入ってきてんのっ!?」


 折り曲げて力を溜めた脚を勢いよく伸ばして、棍棒を持った怪物の手を思いきり蹴りつける。


「ギャイッ!?」


 犬頭の怪物が悲鳴を上げ、その手から棍棒が離れ落ちる。

 それを即座に拾い上げ、振りかぶり、躊躇なく殴り倒した。


 ◇


「はぁぁぁ……」


 額に浮いた汗を拭い、大きく息を吐く。


「……なんとか倒せたけど、やっぱゲームみたいには、いかないよね……」


 相手が一撃の殴打で死ぬくらいに弱くて助かった。


「うぅ、体、重ぉ……いまのだけで、息も上がってるし……少し、運動量、増やそう……ダイエットしよう……」


 なんて、明日には忘れているだろう一時の決意を口に出しつつ、一撃で息絶えたコボルトらしき怪物を見下ろす。

 すると、死体が目の前で黒い靄となって消えていく。

 あとには、小さな虹色の水晶が転がっていた。


「これ、魔石ってやつかな? にしては、やたらきれいだけど」


 摘み上げて眺める。……が、それが罠だったのだ。


 私はごくごく自然な目のはたらきとして、瞬きをした。

 その一瞬で、目の前の景色ががらりと変わっていた。


「――は?」


 立っているのはフローリングの床ではなく、石の床で。


「はあっ!? 嘘でしょ!? 強制イベント!?」


 私は……ダンジョンの中にいた。



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