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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
7章 封罪宮『強欲』攻略
103/140

103 言ってる場合かっ!!

 

【隠しダンジョン:封罪宮『強欲』の攻略を開始します】


 挑戦権の行使を宣言した途端、別の場所へと転送され、脳裏に機械的なアナウンスが流れる。


 そこは、封罪宮『怠惰』とはまったく異なる様相を呈していた。


「これぁまた……全部、金属か?」


 と周囲を見回しながらシグマが言うように、天地も左右の壁もすべてが金属に覆われていて、電子回路のような青紫色の線が幾筋も走っている。発光するそれが、光源となって通路を照らし出していた。


 実にサイバーチックなダンジョンだ。


「行こう」


 さっさと全部を終わらせてぐーたらしたい私は、先頭に立って通路を歩き出す。


 私が最初に封罪宮『怠惰』を攻略したときは、いきなり放り込まれ、力どころかまともな武器すらも持っていなかったこともあって、宝箱目当てで隅から隅まで探索したが、今回は必要ない。


 今回はポーション類など必要な物資はたくさん買い込んで、料理も数か月は生きていけるだけの量を作り、スゥの『無限異袋』に詰め込んできてるから、ドロップだって拾う必要がないのだ。


 まぁ、お金にはなるので極力、回収していくけれど。


 ◇


 スロースコクーンは移動系に強い魔導機だ。

 もとより一定範囲の地理把握はお手の物だし、そのうえでルートを設定し自動で目的地に向かわせることもできる。


 その機能は、ダンジョンの階層フロア程度なら全域をカバー可能で、その機能を使えば最短ルートの割り出しもたやすい。


 そしてその程度であれば、スロースコクーンを展開せずとも、その一部である、耳の上につけるタイプのパーツを一つ付けておけば使用可能だ。


 そのパーツを介し、目の前に展開されるホログラムに映し出されたマップを見ながら、寄り道せずに最短のルートを進む。――が、たとえ最短のルートがわかっていても、そう簡単には進ませてもらえなかった。


「これ、明らかにトラップよね」


 少し歩いた先、目の前に伸びる床が四角いパネルに分かれ、そのパネルの一部に魔法陣のような幾何学的な模様が描かれている。


 試しにそのパネルを踏んでみたら、直後にごうっと火柱が立った。


 そう、このダンジョンには、トラップやギミックがふんだんに盛り込まれていたのである。『怠惰』にはなかったものだ。


 踏んでから作動までにコンマ秒程度はラグがあるので、火柱は即座に避けて事なきを得たが、これはなかなかに厄介だ。なぜなら……


「魔導機獣がくるのですよ」


 セルカの言うとおり、前方から魔導機獣が五体、こちらへと迫ってきている。


 当然と言えば当然ながら、魔導機獣がトラップパネルを踏んでも作動はしない。反応するのは、侵入者たる人だけのようだった。


 視覚的に明白な、非常にわかりやすいトラップだ。それだけなら、踏まなければいいだけの話。魔導機獣だけでも、そう苦戦することはない。


 けれど、トラップパネルに注意しつつ魔導機獣とも戦わなければならないというのは、けっこうな難度だった。


 ◇


 狼タイプの魔導機獣から放たれる魔力エネルギーの塊――魔力弾を、最小限の動きでかわしながら肉薄する。


 いまの私は、銃弾だって見てから避けられるのだ。それより遅い魔力弾をかわすのはたやすい。


 それでも邪魔であることに違いない銃砲を、まず一刀のもとに斬り落とし、返す刃で首を断つ。魔導機獣は半分生物なので、これで死んでくれる。


 軽くステップを踏んで血しぶきをかわす。そこへ、横から別の狼タイプが、機械の爪を振りかざし飛びかかってくる――タイミングを合わせ、パリィ。弾かれ、さらされた生身の腹を一薙ぎにする。


 黒刃を振り切った流れのまま、そちらへ倒れ込む。真横を、レーザーのごとき魔導砲の放射が通り過ぎていった。


 床の上をごろんと一回転、立ち上がると同時に一閃。闘気の刃が宙を駆け、砲身を背に担いだ虎タイプの魔導機獣を両断する。


 真後ろに跳びつつ、もう一閃。両断された個体の陰から飛び出してきた、猿っぽい魔導機獣が斜めに真っ二つになった。


「――っ、と」


 危ない危ない。危うくトラップパネルを踏むところだった。


 無理やり身をよじって着地の位置をずらし、ギリギリのところに足をついて小さく息を吐く。が、


「む――しまった」


 その横で、ギデオンが誤ってトラップパネルを踏んでしまったようだ。


 即座に飛びのこうとするが、もとより彼は重量タイプ。あまり機敏には動けず、直後にパネルが消失した。一瞬の浮遊。


「ふむ。落とし穴か」

「言ってる場合かっ!!」


 すでに落下は始まっていて、ヴィレムが床を蹴り腕を伸ばそうとするも、それでは足りないと判断。くるりと手元で回した槍の柄を伸ばす。ギデオンはそれを、損ねることなくしっかりと掴んだ。


 ニメートルの巨漢に、そこそこの重装備。重量のある彼を、敵をいなしてから駆けつけたシグマも手伝って、二人がかりで穴から引っ張り上げる。


「すまない。助かった」


 と二人に頭を下げるギデオンだが、彼は危機感というものが欠如してる気がしてならない。というより、やっぱりどこかズレているのか。


 と、そんな男性陣のかたわらでは。


「ふえぇぇぇ、底が見えないのですよぉ……」

「これって、下層につながってたりするのかしら?」

「どうだろうねー。ダンジョンって異界の一種って言われてるし、本当に底なしなのかも。なんにせよ、落ちたら確実に死ねる高さはありそうだねー」


 こちらは穴を覗き込んで、まるでお茶飲み話のようにおっかない結論を出している女性陣である。……おっと、ミルミトは違った。



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