表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
7章 封罪宮『強欲』攻略
102/140

102 でも、悪いね

 

「これはオレの持つ数ある魔導機の中でも、とびっきりの逸品さぁ! 普段はなんの変哲もない刀剣で、もちろんこの形態でも切れ味抜群の名剣だが、魔力を流すことでギミックが作動し、分割された刃が中のワイヤーで連接した鞭状の剣へと変形させることができるんだ!!」


 途端に饒舌となり、得意げにしゃべり始めたエインバースの説明を、温度は対照的ながらも、まったく興味がないわけではないので、魔導機獣を両断、または魔導機兵の核を突きながら聞く。


 どうやら、得物自体はあのときと同じものらしい。

 ただ搭載されたギミックを使っていなかっただけで。


 鞭のように伸びてうねる蛇腹剣は、樹々のような背の高い障害物ばかりの場所だと取り回しが難しく、かえって戦いにくいからだとか。


 そのときの環境や状況で使い分けているそうだ。


「魔力消費に関してはそれほどでもないんだけどな、オレはあんまり魔力が多いほうじゃないから、無駄づかいはできない。だからここぞというときに使うようにしてんだ。けど――」


 連節する刃を縦横無尽に振るいながら、エインバースは高らかに謳う。


「魔導機兵相手なら、むしろ使う場面なんだよなぁ!」


 鞭のごとく宙をうねる複数の刃が、大きく弧を描いて魔導機兵へぐるんと巻きついた。

 拘束――だが、その真価はそこにはない。直後、まばゆいスパークが弾け、魔導機兵が刹那、駆動を止める。


 その後、再び動き出す魔導機兵だが、その身を放電させた魔導機兵の動きは、明らかに鈍っていた。


「この剣には、雷撃を発生させる機能も備わってるんだ!」


 魔導と機械で動く魔導機兵だから、単純に回路をショートさせての破壊停止は無理だが、雷撃に弱いことに変わりはないので、動きを鈍らせたり、一部の機能を殺したりなんかはできるのだとか。

 もちろん、魔導機獣の機械部分にも効く。


「最高だろ、このウィップソードは!」

「そうだね。すごく頼もしいよ」

「だろだろ!?」


 実に無邪気で楽しそうな笑い声を響かせるエインバースは、その機構を使い効率よく敵を倒していく。


 蛇腹剣、もといウィップソードはもとより架空の武器だが、ゲームで使っている人を見たことがある。かなり扱いは難しいと聞くけど、エインバースの取り回しは見事なものだった。


 相当、練習したのだろう。たぶん騎士としてではなく、オタクとして。


 頬ずりしちゃうくらい大切で自慢の魔導機らしいから、ちゃんと扱えるよう死にもの狂いで練習したに違いない。目に浮かぶようだ。


「でも、悪いね」

「――ん、なんだ? いきなり謝って」

「いやほら、私たちが攻略したら、あなたの楽園も消えちゃうから」


 封罪宮は攻略したら消滅するタイプのダンジョンなので。


 ダンジョンが消えれば当然、魔導機兵も魔導機獣も湧かなくなる。魔導機兵らが湧かなくなれば当然、魔導機のパーツは得られなくなる。


 なお、攻略してもなくならず、ボスが何度も復活するタイプのダンジョンも存在するらしい。邪神ペディアより。


 途端、フリーズしたエインバースが、ずずーんというオノマトペを背負っていそうな沈み具合で、物理的にも沈んだ。

 四つん這いになり、喉の奥から絞り出すようにして言う。


「……いいんだよ、いいんだ……だって、人の命よりも大切なものなんて、この世には、ないんだから……そうだろ……?」


 顔を上げたエインバースは、それこそ穴という穴から血を吹きそうな表情をしていた。正直、引いた。


 でも、彼もそれを承知で攻略に参加したのだ。

 ここで自分の趣味を優先して妨害してくるような人じゃなくてよかったよ。

 仮にも貴族に仕え、人々を守る騎士なのだから、当たり前だけど。


 この場にいるほかの冒険者やオタクマニアたちにも「ごめんね」と一応、心の中で謝っておいた。


 ◇


 ハイエルドは小さな都市国家とはいえ、一つの大都市ほどの面積は有している。

 魔導機兵らが湧き出している城は、都市の入口から一番遠い場所に位置しているので、エインバースのナビがあってもそれなりに時間がかかった。


 そうしてたどり着いた城の中へと踏み込んでいき、一体目を倒したところで、虹色の石がドロップした。隠しダンジョンへの挑戦権だ。


 たぶん城内を徘徊する魔導機兵が、挑戦権をドロップする仕様になっていたのだろうけど……ちょっと強運がすぎないだろうか。


(これ、邪神の意図入ってない?)


 と心に浮かべた疑問に、邪神からの返答はなかった。

 だが、その無反応こそが雄弁に語っている気がした。


 そう言えば、この挑戦権の件――邪神の言っていた『挑戦権を手に取るイコール権利の行使』は真っ赤な嘘だった。


 ヴィレムたちが封罪宮『暴食』の挑戦権を得たときは、ちゃんと行使するか否かを問う、確認のアナウンスが流れたそうだ。行使すると答えてから、あらためて封罪宮へと移動させられたと彼らは言っていた。


 私のときは事実、問答無用だったし、邪神の干渉があったことは間違いない。

 力の大半を使ってダンジョン自体をつなげたのも邪神だから、挑戦権のほうもその力でどうにかしたのだろう。


 私だったら、その虹色の石が隠しダンジョンへの挑戦権であるとわかれば、絶対に行使なんてしないからな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ