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第4話

(殺す……)

 私の胸を、無理やり三度揉んだ男。


(殺す……)

 私の唇を、無理やり奪った男。


(殺す……)

 私に濡れ衣をきせ、我が家を没落させた男。


(殺す……)

 私の母の仇。


(殺す……)

 私の不倶戴天の敵、許されざる者。



 ことの始まりは、ヴェスティーナ・フォン・ルデンブルクだった前世、この男と夏の社交パーティーで会ったことだった。当時、私は女神の騎士である聖教会直属の聖騎士隊を養成する学校、聖ミスティルディン学院に通っていた。


 この学院は世界中から身分にかかわらず、素質のある子供を集めて養成する。生徒総数は1,000名を超える。この学院に所属するだけでも箔がつくが、学院で上位の成績を修めていたため、私は注目を浴びていた。だからか、私は下級貴族の娘だが、父は私を無理やり社交に連れていった。


 夏の社交パーティーで、このセクハラ皇太子にダンスに誘われた。正直、ヴェスティーナとしての私の顔は美人だったと思う。聖騎士見習いとして鍛えていたし、スタイルも良かった。胸は年相応だったが、肩幅は華奢だったため、傍目から見れば、可憐な騎士見習いに見えたかもしれないし、清楚なドレスのおかげかもしれない。


 世界的に中間ぐらいの国力のレストランデ王国の下級貴族の娘である私と、世界一の大国ガルディック帝国の皇太子では、身分違いもはなはだしいが、聖ミスティルディン学院に通っているため、勘違いをした私は、ダンスの誘いを受けてしまった。


 そして、曲の終わり、ターンをして受け止めてもらうとき、胸を鷲掴みにされ、揉まれた。

 軽く、一度揉まれただけだったため、そのときは、たまたま受け損ねただけだろうと考えた。


 だが、その翌年のパーティーでも、またしてもダンスに誘われた。そしてこのとき、お互い向かい合って踊るときに、堂々と胸を揉まれた。だが、私は、何も言えなかった。藤崎恵麻だったときの経験が、さらに身分差が、私の思考を止めた。セクハラ皇太子は何度も胸を揉んだ。


 結局私は、踊り終わるまで、我慢した。その後、一部の学院男子の間で、私の胸が話題になっていることを小耳にはさみ、悔しい気持ちになった。皇太子は学院にはいなかったが、誰かに話し、それが人伝に広まったのだろう……


 そして私は成人し、学院を卒業し、聖騎士隊でもとりわけ優秀な、女神の威光という部隊に配属された。


 だが、翌年のパーティーで、それは起きた。起きたというのはおかしい。皇太子が起こしたのだから。私はダンスに誘われなかった。皇太子の、一時のお遊びから解放されたと、安心した。そしてパーティーの終盤、テラスで一人で休んでいるとき、皇太子に声をかけられた。私は身構えた。だが、もしかして実は、皇太子は私のことを好きなのかと、どこか期待してしまった。


 言われるまま陰に誘われ、唇を奪われ、胸を揉まれた。人気のない所だし、この程度の皇太子は簡単に制圧できるのだから、すればよかった。だが、大国の皇太子から無礼を訴えられたら、レストランデ王国は下級貴族である我が家を切り捨てるかも知れない。そう考えると、体が動かなかった。


 皇太子は満足したのか、しばらく胸を揉み続けたら、去っていった。「君、よかったよ。またね」と言い残して。


 私は、泣いた。だが、それだけでは終わらなかった。目撃者がいたのだ。翌日、騒ぎになった。そして皇太子は言った。わたしから誘われたのだと。


 事実は違うのだが、一瞬でそういうことになった。わたしは身分違いにも、皇太子を誘った淫乱女になった。


 それを境に、社交に呼ばれなくなった。私は鍛錬に打ち込み、実力を高め、任務をこなしていった。


 だが、噂は甘くはなかった。我が家は没落し、母は体調をくずし、四十歳で亡くなった。私が一九歳のときだった。私は怒り狂い、隊舎で暴れたため、逮捕され、レストランデ王国に送還された。そんな私を救ってくれたのは、レストランデの珠玉と称される、美しきレストランデの姫だった。

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