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第1話

 私は、光の中にいた。


「ヴェスティーナ、私の一番のお気に入り……よく、魔王を倒しました」


 突如、美しい澄んだ声が降り注いだ。天から神々しい女神が舞い降りた。


「私は貴方の剣です、女神ミスティルディンよ。女神の騎士として、務めを果たしたまでです」


 私は敬意をこめて、ゆっくりと跪いた。


「謙虚さは美徳ですが、このようなときは、誇っても良いのですよ」


 女神が微笑む。しかし私はそのまま無言を貫いた。


「あらあら、本当に、お堅い娘だこと」


 女神はため息をつくと、表情を引き締めた。そして厳かに語り掛ける。


「ヴェスティーナ・フォン・ルデンブルクよ、此度の功をもって、汝の魂を楽園世界エストルファンへと送ります。エストルファンで魂を浄化し、来るべき神への昇格へ備えなさい」


 女神が右手を掲げると、光り輝く一枚の紙が現れた。そして同じく光り輝くペンを左手にだすと、私の名前を書き始める。だが、私は声を発し、女神を止めた。


「女神ミスティルディンよ、魔王の魂は未だ消滅せず」


「ええ、勿論承知しています。しつこい邪神の加護です」


「楽園世界エストルファンへ行くことは、身に余る光栄と弁えております。その上で申し上げます。愚かな願いですが、私をもう一度、あの世界へ転生させてはいただけないものでしょうか?」


 私は、顔を上げて女神を見る。その瞳に強い意志を込めながら。


「理由を聞かせてちょうだい」


「は! 魔王は転生した後、私の故郷である日本を滅ぼすと宣言しました。私はそれを阻止したいのです」


「それは、次代の騎士たちに任せれば良いでしょう? あなたが背負うべきことではありません」


「次代の騎士も、必ず魔王を打倒しましょう。しかし、日本のことまで考えてくれるのでしょうか?」


「それは……」


 女神には、わかる。魔王討伐が優先される。次代の騎士たちは、自分たちに無関係な日本のことなど、気にもかけないだろう。だから、言うべき言葉が見つからなかった。


「どうか、私のわがままを、お聞き願えませんでしょうか?」


 私は、女神をひたすら見つめる。


「なんと、健気な……」


 女神が感激したように小さく呟く。そして目をつむり、考え始めた。私は、伝えるべき願いは伝えた。ただ黙って、女神の決定を待つ。


「はぁ……今回だけです」


 しばらくしたのち、女神がおれた。


「あなたの神界行きは、すでに決まっています。しかしあなたの魂は、後、2回しか転生できません。よって、今回だけです。次回は、ありません。次回の転生で、楽園世界エストルファンに行くことは、覆すことのできない決定事項です」


「女神ミスティルディンの慈悲に、感謝いたします」


 私は首を垂れた。


「あなたの功績を考慮して、いろいろと特別なはからいをしましょう。例えば、あなたが身につけたスキルと魔法は、そのまま使えるように保護するとか。ただし、分かっていますね?」


「もちろん、わかっております。成長の伴わないスキルや魔法の使用が、いかに危険であるか」


「ならばよいです。無理に使用すると、魂そのものを摩耗させてしまう可能性がある危険なものもあります。特に極大魔法など」


「肝に銘じておきます」


「よろしい。では、ヴェスティーナ・フォン・ルデンブルクに命ずる。今一度、惑星メランに転生し、いずれ復活するであろう魔王ゼルグリードが二度と転生できぬよう、その魂を滅するのです」


「は! 確かに拝命いたしました」


 女神があらためてペンを走らせると、私は眩い光に包まれた。


 女神がにこやかに微笑むのを見ながら、私は旅立っていった。

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