不穏の胎動
一方の雅は、雅の姿で湖界隈に戻ってきていた。
発表後の余波を調べるためである。
まだ皆興奮冷めやらぬという様子で人は多い。
魔族側は魔王の方針に則り、何も事を構える気配もなく穏やかな様子だ。
先程よりも人間の人数が増え、騒いでいる者も多い。
今度の魔王は穏健派、むしろ人間寄りか?というニュースでも流れたのだろう。
…確率は低いが、魔王が人間であると一部にはバレているかもしれないな、とチラと考えながら耳に入る言葉を手繰っていると、ふと気になる言葉が流れてきた。
急いで振り返ったが魔王スペックでなかったのと一瞬だったのでどこからだったのかが分からない。
不味ったか、と思いながら思考を練り直す。
「妃を使えば」か…
エアをダシにしてどうにもならない自分を消そうと考えている輩がいるのだろう。
元々魔力量が高く、自分が次期魔王だと思っていたら違ったとか、他の領地を犯して戦争を起こして金を蓄えようとする輩か。
可能性を考えればいくらでも出てくる。
まずはエアの周りを固めるのを先にした方が良さそうだ。
エアには母親もアオという親友もいるし、同じく高校にも通っている。
それらを全て犠牲にして魔王城に預ければ安全ではあるが、エアは幸せではないだろう。
エアが笑顔でなければ意味がないのだ。
俺は、彼女の笑顔が好きなのだから。
雅はまずは魔王城へ向かい、共に対策を練れる参謀を探しに行くことにした。
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