祭り
とある世界。
ここでは魔族の王が死ぬと喪期を置いてから次の魔王を選ぶ祭りが行われる。
選ぶ、というのは建前で、今生きている者全ての中から一番魔力が高い者が選定されるのだが、それは選ばれた本人たちにしか分からないのだ。
だから過去の魔王たちの出自も種族も様々である。
そして同時にその妻も絆で繋がった運命の相手が選ばれる。
だが祭り当日まで誰が選ばれるのか誰にも分からない。
そして前代の魔王が死に喪が明け、今代の祭りが始まる――
何だかふわふわしていた。
いつもなら親友のアオと一緒に出掛けるはずなのに、1人でふらりと家を出て。
普段誰も立ち入らないような、裏手の深見山に来ていた。
霧の先を抜けたらキラキラ光る湖があって。
湖の向こう岸に、誰か立っているのが見えた。
その瞬間、ああ、「そういうこと」なのだと理解した。
ザブリ、ザブリ、自分も相手も戸惑うことなく湖の中へ入ってゆく。沈んでゆく。
でも少しも怖くないし息も出来ている。
水中で相手と向かい合って、一言だけ交わした。
「雅」
「―エア」
互いの名を。
そしてお互い手を取り合って口付けたとき、空に虹の光が走った――
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