ブレる気持ち
夕方、溶けていく陽を見ている。
あの地平線に重なる瞬間を、僕は待っていた。
「地味だね~。いっそのこと、この葵空 星怎を撮れば? 間違いなく映える写真の出来上がりだよ!!
なんて言ったって、私は葵空清楚だしねぇ~星怎だけに」
「あっそ。悪いが、それはまた別の機会にさせて貰うよ」
「つまんないの~。頭でっかちマンめ~」
デジカメをぶらぶら下げながら、葵空 星怎は退屈そうに口を尖らせる。部活動中だというのに、まるっきり意欲がない。
部長の僕でも、気分屋の葵空は手に負えない。
「仕方ないだろ。これが写真部の部活動なんだからさ。お前も部の一員として、部活動に励む姿勢を見せろよ」
「えぇ~写真撮るとか興味ないんですけどぉ~」
またか。つくづく分からない奴だ。
僕はこれで何度目かになる葵空のその言葉に、疑問を持たずにはいられないのだ。
せっかく他の部員も居ないことだし、その事について聞いてみるのも悪くないか。
「なぁ、お前写真に興味ないのに、何で写真部なんかに入部したんだよ? ────あ、」
間が悪いことに、ちょうど夕陽が地平線に重なった。
急いでカメラを構えるも、葵空が目の前に立つ。
レンズが捉えるのは、にやにやした葵空。
レンズの先に見えるのは、夕陽をバックに微笑む葵空。
「逆に何で分かんない? 私結構、アプローチ掛けてるつもりなんだけどな~。
....つまりね、乙女の事情なのさ。君が写真部にいるから、私もいたい。ただ、それだけ!」
耐えきれなかったらしい。葵空の頬は、夕陽のせいだと言い訳できないほどに、赤く染まっている。
僕の目の前にいたのは、可愛らしい乙女の少女。
本当に葵空は、僕の手には負えない奴だよ。
「ったく。お前って奴は──」
どこまで僕を困らせるんだ?