表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説どもの眠り場

ブレる気持ち

作者: 那須茄子

 夕方、溶けていく陽を見ている。

 あの地平線に重なる瞬間を、僕は待っていた。


「地味だね~。いっそのこと、この葵空 星怎(あおぞら せいそ)を撮れば? 間違いなく映える写真の出来上がりだよ!!

なんて言ったって、私は葵空清楚だしねぇ~星怎だけに」

「あっそ。悪いが、それはまた別の機会にさせて貰うよ」

「つまんないの~。頭でっかちマンめ~」

 

 デジカメをぶらぶら下げながら、葵空 星怎(あおぞら せいそ)は退屈そうに口を尖らせる。部活動中だというのに、まるっきり意欲がない。

 部長の僕でも、気分屋の葵空は手に負えない。


「仕方ないだろ。これが写真部の部活動なんだからさ。お前も部の一員として、部活動に励む姿勢を見せろよ」

「えぇ~写真撮るとか興味ないんですけどぉ~」


 またか。つくづく分からない奴だ。

 僕はこれで何度目かになる葵空のその言葉に、疑問を持たずにはいられないのだ。

 

 せっかく他の部員も居ないことだし、その事について聞いてみるのも悪くないか。


「なぁ、お前写真に興味ないのに、何で写真部なんかに入部したんだよ? ────あ、」


 間が悪いことに、ちょうど夕陽が地平線に重なった。


 急いでカメラを構えるも、葵空が目の前に立つ。


 レンズが捉えるのは、にやにやした葵空。

 レンズの先に見えるのは、夕陽をバックに微笑む葵空。

 

「逆に何で分かんない? 私結構、アプローチ掛けてるつもりなんだけどな~。

....つまりね、乙女の事情なのさ。君が写真部にいるから、私もいたい。ただ、それだけ!」


 耐えきれなかったらしい。葵空の頬は、夕陽のせいだと言い訳できないほどに、赤く染まっている。

 僕の目の前にいたのは、可愛らしい乙女の少女。


 本当に葵空は、僕の手には負えない奴だよ。 


「ったく。お前って奴は──」


 どこまで僕を困らせるんだ?

 






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ