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第29話 新しいことをはじめましょう

 

 クラウスに専属執事の人数を増やすことを伝え、固まっている彼を無視して部屋を出た。

 やることは山積している。


(これでいい。これでいいんだわ)



 ***



 ラファエルおじさまは四十過ぎ前後で、銀色の髪に片目に、眼帯をした海賊の船長を絵に描いたような外見だが、人情味に溢れた御仁だ。

 服装はキモノと呼ばれる絹で作られた袖がゆったりした特徴的な服を着こなしている。帯剣する二本の剣もカタナといい、黒くてサーベルとは別の美しい形をしている。


 ラファエルおじさまと朝食を交えながら、裏カジノの実体について話を進めた。


「モルガナはエル・ファベル王国で暮らしていたらしいが、前伯爵からの契約書を手にしてからジャック・ド・フルノーと共にスフェラ領へと訪れ、一旗揚げたらしい」

「エル・ファベル王国で?」

「ああ」

「……ディーラの彼は?」

「ディーラー? ああ、ジャックは現在投獄して、事情聴取している」


 ふともう一つの疑問を投げかける。


「レティシア様の再従姉弟が闘戦士にさせられた経緯は――人身売買によるものであっているかしら?」

「ああ。どうもスフェラ領ではなく、エル・ファベル王国で人身売買を行っていた奴隷商人がスフェラ領を訪れて貴族や商人たちに声をかけていたらしい。俺らのような闇組織じゃなくて貴族たちのサロンやら社交界を狙うという狡猾さだ」

(貴族たち経由……)


 レティシア様の再従姉弟が奴隷商人に捕まったのは、エル・ファベル王国に旅行に行った途中だったとか。お忍びでエル・ファベル王国の文化に触れたかった彼は美術館巡りの後、忽然と姿を消したらしい。話を聞くに案内人もグルだった可能性が高いだろう。


 エル・ファベル王国は亜人族や魔族に興味を持つ者が多い。

 もっともエル・ファベル王国を訪れるような多種族は、完璧に人族に擬態しているので正体を気取らせないのだが、今回はそうはいかなかったのだろう。


(とりあえずスフェラ領で人身売買が行われていないのはよかった。大罪人以外に奴隷に貶める行為は違法とされている)

「今回はお忍びで護衛やら警戒心を怠った殿下の落ち度だということも分かったので、レティシア様も溜飲が下がったようだ。お嬢に怒りをぶつけたことも反省しておられた。……あとで謝罪したいと言っていたので受け取ってほしい」


 ラファエルおじ様は頭を下げようとしたが、私はそれを制止した。


「いいえ。私も大事な家族が行方不明になったら冷静でいられないと思います。だからレティシア様の気持ちは、少しはわかるわ」

「そうか。……そうだな」


 ラファエルおじさまはクライスについては言及してこなかった。

 食事のときに姿を見ていなかったが、どこで仕事をさぼっているのだろうか。

 代わりにロベルトとロルフが傍に付いてくれているので、警護に関しては問題ない。二人とも昨日に引き続き、裾の長いジャケットを着こなしており護衛者と言うよりも貴族の令息に見える。


(二人とも格好いい。目の保養)


 ラファエルおじさまとの食事が終わり自室に戻る途中、二人に振り返った。


「お嬢?」

「どうしたの?」

「今回のことを反省してクラウス以外に専属執事を三人増やそうと思うのだけれど、二人は執事に興味ない?」

「私が?」

「僕が?」

「そう。どちらかというと、領地経営に関してのサポートを手伝ってほしいのよ。情報収集とか警護なんかも含めて。ああ。もちろん、今の職務が気に入っているのなら――」

「やる……いえやらせてください。私はお嬢の剣であり盾になりたい」


 即答するとは思わなかったけれど『ロルフなら色よい返事が貰えるのでは?』と、期待していたところはある。

 ロベルトはあわあわして結論はすぐに出せないようだ。


「ロベルトは土いじりや庭仕事が好きだし、無理にとは思ってないの」

「そうじゃなくて、どうして……どうして僕? 僕よりも他の人のほうが有能だし……頭も良くないし……」

「ロベルトはアトラミュトス獣王国の王子だったでしょう。幼少時代に培われた所作や礼儀作法は武器になるし、それに相手が嘘を付くのを察知できるし、直感力に優れているからその辺を頼りたいって思ったの。あー、でも気軽に考えて自分で選んでいいの」

「姫様……」


 ボン、と煙を立ててロベルトは狼の姿になって私に寄り添う。

 彼がいつも本心を語るときは魔力が暴走しそうになって、本来の姿に戻ってしまうことが多い。

 モフモフ好きとしては役得なだけだけれど。


「僕も姫様の役に立てるのなら――専属執事になる」

「うん! ありがとう」


 せっかくなのでモフモフに抱きついてみた。いつ抱きついてもロベルトは、お日様の匂いがして落ち着く。

 これで二人の許可は貰えた。あと一人は――交渉次第といったところだろうか。


 自室に戻るとクラウスの姿はなかった。

 専属執事が増えることにショックだったのか、それとも退屈になるかもしれないと新たな火種をばら撒きに行ったのか。

 クラウスがどう動こうと私のやるべきことは決まっている。


 私たちは事後処理などの手続きを行った後、一度屋敷戻ることにした。

 レティシア様は再従姉弟が目を覚ますまではホテルで過ごすというので、ラファエルおじさまに連絡を入れて警護を強めてもらうように連絡。


(レティシア様は昨日の発言を撤回してくれたけれど、私の方針は変わらないことを伝えられたことはよかったかな)


お読み頂きありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و!


短編新作を書いたので興味がありましたら、お読みください!

読み切りです。


初めまして旦那様。約束通り離縁してください

~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~

https://ncode.syosetu.com/n3326ii/



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