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舞い散る花びら  作者: 三毛猫ジョーラ


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最終話 桜



 その後、私達三人はそれぞれ病院へと運ばれた。祐加理ちゃんは首の痣が少しの間残るものの三日程で退院。私も三週間程で退院できた。


 高橋は重症ではあったが命に別状はなかった。左目は失明したようだが……


 当然彼は逮捕となった。傷害罪、殺人未遂、その他諸々。かなり重い罪となるとのことだ。


 事件はニュースにも取り上げられ、ネットやワイドショーでも話題となった。高橋修哉の名は全国へと知れ渡り、生徒達に行った非道な行為は「禁断の個別指導」と銘打たれ、彼の顔と名前はネット上に永遠に残る事となった。


 そして祐加理ちゃんと私も過剰防衛を行ったとして裁判を受けた。しかしあの時、祐加理ちゃんは咄嗟にスマホの録画ボタンを押していた。映像の方ははっきりと映ってなかったが会話は全て録音されていた。それが大きな決め手となり正当防衛が無事認められた。






 ――翌年の春。




 私と祐加理ちゃんは二人であの橋の上にいた。桜並木は満開に咲き誇り、あたり一面桜で覆い尽くされていた。


「本当に綺麗ね……」


 私はそのあまりの美しさにしばらく目を奪われていた。


「姉はここからの景色が大好きだったんです。放っておけば一日中眺めてたかもしれません」


 彼女は笑いながらそう話した。その目は少し潤んでいるように見えた。


「そういえば、裁判ではお世話になりました。あの弁護士さん、先生のお知り合いなんですよね?」


「ああジョニー先輩? そうそう大学が一緒だったの。学生の時は頼りなかったけど今じゃ敏腕弁護士だもんなぁ。最初に祐加理ちゃんのこといろいろ話したら『おれが絶対無罪にしてやる!』って息巻いてたんだよ」

 

 そう言って私が笑い掛けると彼女もくすっと笑った。やっぱりこの子には笑顔が一番似合う。


「ところでなんでジョニーって呼ばれてるんですか?」


「なんだったかなぁ……名前が譲二郎じょうじろうだから?」


「それならジョージなんじゃ……」


「だよね~。今度お礼の食事に誘うつもりだから聞いておく。よかったら祐加理ちゃんも来る?」


「はい! 喜んで」



 二人で笑い合い再び桜を眺めた。少し散り始めた桜の花びらが風に運ばれ私達の目の前へと飛んできた。思わず手を伸ばして掴みたくなる。


「これは警察の方が言ってたんだけど……あの動画で愛伊香さんは頭を強く打ってたじゃない? あれで脳に相当なダメージを受けてたんじゃないかって」


「確かにあの日、姉はずっとぼーっとしてました。浮気を見た精神的ショックだったと思ってはいるんですが……」


「それもあるだろうけど、刑事さんが言うには脳挫傷で意識が混濁こんだくしていた可能性もあるって。夏休みだったのに制服を着てたでしょう? あれも記憶障害とかがあったんじゃないかしら。もしかしたら幻覚とか見えていたのかも……」



「桜……」



 そう呟いて祐加理ちゃんは橋の欄干に手を掛けた。目の前には愛伊香さんが大好きだった景色が広がる。


「監視カメラの映像では、愛伊香さんはなにかを掴もうと身を乗り出していたように見えたって……」 


 私も祐加理ちゃんの横に並びその美しい光景に目を移す。


 彼女は飛んできた桜の花びらにすっと手を伸ばした。



「小さい頃、二人で落ちてくる桜の花びらを捕まえて遊んでいたんです。


 お姉ちゃん、ちゃんと捕まえたかな……」


 

 そう微笑む彼女の目からは一滴ひとしずくの涙がこぼれ落ちた。





 その時、強い一陣の風が私達の横を通り過ぎた。




 暖かい春風が私達を優しく包み込む。 




 儚く美しい桜の花と共に。 










  end

この作品はこれで完結となります。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


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