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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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パニック関連

寒冷化によって生きる場所を失ったら人は何をするのだろう

作者: よぎそーと

 薄い太陽がわずかばかりの陽光を照らしてくる。

 その光がもたらすかすかな温かさ。

 それをほんの少しでも得ようと、誰もが外に出ていた。

 薄暗い昼の時間に。



 世界全体を雲が覆うようになってどれくらいだろうか。

 陽光を遮断するそれは、世界的な寒冷化をもたらしていった。

 寒冷地では例年以上に雪が降った。

 その雪は、薄暗い夏の間、溶ける事もなく残った。

 そして、冬に再び降った雪が、大地を白く染めていく。



 雪によって陽光が遮断されていく。

 気温もあがらず、更に寒冷化が進む。

 寒冷地は拡大していった。



 かつての温暖な地域は冷気に覆われていった。

 農作物もまともに育たなくなった。

 迎えた食料危機は、全世界を巻き込んだ戦争に発展した。

 政治的な野望による侵略ではない。

 生存をかけた殺し合いだ。



 人口は激減した。

 減少した農産物の収穫量でまかなえるほどに。

 それでも人は、争いによって生まれた恨みと憎しみに駆り立てられた。

 人口は更に減った。



 やがて、これ以上の騒動に意味が見いだせなくなった頃。

 人は自然と争うことをやめた。

 それだけの元気もなかった。



 ただひたすら陽光を求めた。

 薄暗い昼に与えられる、かすかな温もりを。

 あるかないかなど分からないほどか細いそれを、人はこぞって望んだ。



 しかし、よりいっそう色濃く空を覆う雲は、人々と太陽の間を遮る。

 決して壊せぬ壁のように。



 そうした土地を捨てて、多くの人がかつては赤道直下を目指した。

 あらたに温帯となった場所を。

 当然、先住者との間に争いが起こった。

 分け与えることが出来る土地など無いのだ。

 その奪い合いもまた戦争の原因になった。



 その戦争が終わり、押し寄せた者は渋々ながら来た道を戻った。

 暖かな場所に住む事は出来ないと悟って。



 それでも時に人は赤道直下をめざす。

 かなわぬまでも陽光を全身にあびようと。

 あるいは、穏やかな温かさを奪おうと。

 行けば争いになるのは分かっていてもだ。



 どうせ失うものはない。

 そこまで追い詰められた者達である。

 死んでもかまわないと開き直っていた。

 少しでも温かさを感じて死ねるなら、その方がマシだとすら思っていた。



 赤道直下の地帯は、そうした者達に常に脅かされていた。

 倒しても倒してもやってくる襲撃者。

 それらを撃退して自分たちの居場所を守っていた。



 彼らもギリギリの生活をしてるのだ。

 情けで食料は分けているが、それとて限界がある。

 その情けを踏みにじって攻め込んでくる者達に容赦はしなかった。



 それが当たり前になっていた。

 良く起こる現象になっていた。

 薄明かりが照らす世界で、人々は殺し合いを余儀なくされていた。

 太陽が隠れた日から。



 再び太陽が顔を出すまで、この状況は続くだろう。

 そんな日が訪れるのかどうかも分からぬままに。

 ただ、生きのびるために人は殺し合いを続けていく。

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