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トレントって言うんだっけ?

突然の事に驚きつつも、和也は空中で体をひねり、軽く地面に着地した。

「ヴォオオオオオオ!」

先ほどまで乗っていた木--いや、ただの木だと思っていたそれは、赤々と2つの眼が光っていた。

よっぽど上に乗られたのが嫌だったのだろう。木は体を大きく揺らし、そのたびに枝がこすれ、ガサガサと大きな音を立て葉が落ちていた。

高さにして、約10メートル。横幅は5メートルほどだろうか。

「こういうの、前にゲームで見たな。確か、トレントってやつだったか……?」

そんなことをつぶやきながら、仮称トレントの様子を見る。

だが、先ほど乗っていた木がこのトレントであるならば、なぜかずいぶんと縮んでいるような気がーー

そんなことを考えていると、トレントの真っ赤な目と和也の目があった。

「ヴォオオオオオオオオオ!」

トレントの感情は和也にはわからないが、おそらく怒っているというのだけは感じられた。

ミシミシ、と大きな音を立てながら、トレントの根本付近が震える。

そして、和也の胴体ほどもある太さの根が、地面を割りながら現れた。

「すげえ、その巨体で自立できるのか!?」

根を足のように動かしながら、ゆっくりとトレントが和也の方へとにじり寄る。

「ヴォオオオオオオ!!!」

そして、巨体を震わせながら、和也に勢いよく突っ込んできた。

「おいおい、思ったより素早いな!」

自動車並みの速度で突っ込んでくるトレントを、和也は笑いながら、ひらりとかわした。

「正直、全面的に悪いのは俺だけど……お前がその気なら、俺も容赦はしないぞ」

心の中で勝手に上に乗ってしまったことを謝りつつも、和也は拳に力を込めた。

再度突撃しようと方向転換するトレントを、今度は迎え撃つつもりで構える。

「ヴォオオオオオオオオオ!!!」

サイズ差にして、約5倍。一般的な3階建てのマンションほどの巨大な木が、自動車並みの速度で突っ込んでくる。

というのに、和也は落ち着きながら、まっすぐにトレントに向き合った。

地響きが、巨大なトレントの顔が迫る。

「フッ…!!」

赤々と輝く目のちょうど中間部--人間でいう眉間に、和也は勢いよく拳を叩き込む。

「ヴォオオオオオアアア!?」

ドン、という鈍い衝撃音と、トレントの驚きが混じった叫び声が周囲に響く。

この巨体が、宙に浮くなど、初めての感覚だったのだろう。

仰向けに後方に吹っ飛んだトレントは、バキバキバキ!と枝が折れる音を鳴らし、大量の土煙を巻き上げ動かなくなった。

「ハア……まあ、こんなもんだよな……」

物足りなさを噛みしめながら、和也は拳をさする。

トレントといえば、大体のゲームでもモブキャラだ。大した強さは期待していない。

「……にしても、結局ここはどこなんだよ。知らないうちに異世界にでも転生したのか?」

思考を回すために、和也は地面にドスンと座る。

実際、今思ったように、あのように動く木など、ゲームや物語の世界でしか見たことがない。

それに、トレントを殴った時のリアルな木の感触。到底、作り物のようには思えなかった。

考えられるとしたら、もし可能性があるとしたらーーあの、祖父からの遺品が何か関係しているのだろう。

「そういや、あれはどこに行ったんだ……?」

あたりを見回すが、遺品らしき箱は見当たらない。

もしかしたら、トレントと戦っているときに巻き込まれてしまったのかもしれない。

「とりあえず、探すしかないよな」

面倒くさくても、唯一の手掛かりだ。和也が溜息をつきながら立ち上がる。

「ッ、なんだ!?」

ヒュン、と風を切る音とともに、何かが和也の頭目掛けて飛んでくる。

油断していたとは言え、間一髪でそれをつかむと、大きく後方へと飛び退る。

「なんだこれ、矢……!?」

和也の手に握られていたのは、一本の矢だった。もしとっさに反応できなかったら、この矢は和也の頭に直撃していただろう。

矢のような道具を使ってきたということは、和也を狙ったのは、道具を使える知能の高い生物--人間の可能性がある。

もしかしたら何か状況がわかるかもしれない。そう思った和也は、自分に敵意がないことを伝えるべく、大声で叫んだ。

「待ってくれ、俺は敵じゃない!急にこの森に倒れていて、正直訳がわからないんだ!」

和也の声が、薄暗い森の中に響く。これで、相手が姿を現してくれればいいのだが。

しかし、そんな和也の願いもむなしく、再び和也目掛け、矢のようなものが飛んでくる。

再度それを空中でつかみ、和也は矢が飛んできた方に叫ぶ。

「頼む、話をーー」

叫びながら、和也は矢に何か青い果実のようなものが刺さっているのを見た。

すると、パアン!と大きな音を立て、果実のようなものが破裂した。

「なっ!?」

とっさに鼻と口を覆うも、少量吸い込んでしまう。とたんに、和也を強烈な眠気が襲った。

「何……が……」

薄れゆく意識の中で、和也はこちらに弓を構えながら近づく、人影を見た。

前回から約二年半ですか、経ってしまいましたが続きです

やっとこさ導入の部分が終わったので、次からようやく話が進みます。

創作活動をこの二年半、まったく行っていなかったので、リハビリを兼ねてですが、次回はできるだけ早く投稿したいと思ってます。


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