目が覚めると、そこは森林でした。
前回書いてから九か月ほど経過していて、時の流れの恐ろしさを感じますね。
まだ全然書きたいところまで行っていないのでアレですが、この物語は神話要素を含んだバトルもの?になる予定です。
次回更新はさすがに今回ほど開かないと信じたい……
ポタ、と額に雫が落ちる感覚がする。
どうやらあの後、気を失ってしまっていたらしい。
まだはっきりしない頭で、自分の身に起こった事を整理する。
(爺さんからの遺品が入った箱……。切れ目もないのに、俺が触れた瞬間に亀裂が入って……)
今でも、あの箱に触れた時の痛みが指先に残っている。
(中から出てきたのは、小さな刀。そういえば、あれはどこに――)
重い体を起こそうと、床に手をつく。いや、床に手をついたはずだった。
しかし、返ってきたのはしっとりとした感触。木の板の感触ではない。
「ッ!?」
慌てて飛び起きる。
「なんなんだ、ここは……」
和也の目の前に広がっていたのは、住み慣れた家などではない。全く見覚えのない、森だった。
それも、ただの森ではない。辺りに生えた木は、和也が知っているどの木よりも高い。正直、「バカ高い」としか表現できないほど、遥に高く、太かった。
それ故に、樹冠の部分は天蓋のように日を覆い、辺りは薄暗く、今の時刻もわからない。
先程まで家にいたはずなのに、目が覚めれば、見知らぬ森の中にいた――。
他人に話せば、夢でも見ていたのだろう。
だが、この土の感覚、森の中特有の湿った空気、そして、生物の動く環境音。
夢にしては、あまりにリアルすぎる。
「……とりあえず、登ってみるか……」
じっとしていても何か変わるわけでもない。和也は大きくため息をつくと――
「フッ……!」
身近にある巨木、その一本に、勢いよく跳躍した。
その勢いのまま、枝から高い枝へと飛び移る。それを繰り返す。
そうしているうちに、段々と鬱蒼たる樹幹へと近づき――
ガサ!と和也は樹冠から飛び出した。
「おお、流石に高いな……」
眼前に広がるのは、やはり巨大な森だった。
どこを見渡しても木々、木々、木々。どうやら今和也がいる場所は、森の中心に近い所らしい。
「クソ、手掛かり無しか……?」
折角登ったのだから、せめて人の痕跡か何かを見つけたい。再び目を凝らしながら和也は辺りを探すと――
「――?」
視界の端で、何かが動いた気がし、そちらに目をやる。すると――
突然、森の中にぽっかりと穴が開いた。
それと同時に、しがみついていた巨木も突然に揺れだした。
「何だ、地震か!?」
地震大国に住んでいるのだ。突然揺れだしたら、地震だと思うだろう。
だが、今回はどうやら違うようだ。
「地面じゃねえ……、揺れているのはこの木か――!?」
そう、周りの木々は全然揺れていない。だとすると震源は――
「ヴォォォォオオオオオオオ!!!」
大気を震わす轟音と共に動き出した巨木は、和也を空中へと放り出した。