第二十三話 ー フランス(3)
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フランス(3) ―
翌朝、ユースホステルから地下鉄でエトワール凱旋門に向かった。シャルル・ド・ゴール=エトワール駅で降りて地上に上がると凱旋門が眼前に現れ出る。南回りの旅の目的地がパリで、この凱旋門を見て最終と決心していたので、無事旅を終えたことを喜んだ。4年前に私はこの凱旋門の屋上のテラスまで登ったが、今回はラ・マルセイエーズの彫刻を広場越しに見るに留めた。
エトワール凱旋門
ラ・マルセイエーズの彫刻
私はシャンゼリゼ大通りを下ってコンコルド広場に向かって歩いて行く。途中、老舗カフェ「フーケ」があるので、ちょっと大枚をはたいて、と言っても、カフェ・オ・レぐらいしかオーダーできないが、旅の成功を祝うのも意義があるだろうと思って足を向けた。秋の日差しもよく、又、午前中の早い時間なのでテラスの席は空いている。腰を掛けて一息つき通りを歩く人を見ているとツーリストが多いような気もするが、ファッションを観察するのには好適な場所だ。
インド風の民族衣装を纏う一組のカップルがこちらに近づいてくる。男性は白髪の紳士で連れ添いはペルシャ系の可愛い顔をしている女性だが、年齢差は40あると思える。私は漠然と彼らを見ていたが、突然、椅子から飛び上がった。インドのタージマハルの男優と女優にそっくりなのだ!
「ムッシュー、どうかされましたか?」とウェイターが私に気遣う。
「いや、どうも」と意味のない言葉でつぶやく。
大通りを今一度振り返って見るとカップルの姿はもうどこにもない。幻覚なのか、私は夢を見ていたのか。
やっと落ち着きを取り戻して辺りを見渡すと、ジョルジュV大通りの向こうに1976年当時、あるはずのないルイヴィトンの建物がある。先ほどまで座っていたテラスの椅子もテーブルも消え失せていて、私はシャンゼリゼの歩道で茫然自失の態で立ち尽くしていた。
2021年5月現在コロナ禍により閑散としたシャンゼリゼ大通りに活気が戻ってくるのは数年かかるとしても、間違いなくやってくる。
* 和訳・歌詞付きの曲「オー・シャンゼリゼ」。歌はダニエル・ビダル。彼女は70年代前半に日本で活躍した歌手。1976年から1977年に掛けて2、3回、パリで会っているので、懐かしさの余りご紹介する。動画で「CAFE Fouquet’s」が1、2秒確認できる。リンク先はYouTube。以下のリンクをコピーし、URLに貼り付けてご覧あるべし。
https://www.youtube.com/watch?v=rK_v4iNQFV8




