第十四話 ー イラン
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イラン ー
イラン国境では税関吏がバスに乗り込んで来て、先頭から全員の乗客を眺め回すだけ。この税関吏が私たちアジア人の顔を見て何も言わないで、その後、すんなりと通関できたのは幸いだ。アフガニスタンで出会った欧米の旅行者が言っていたが、「イラン入国の際は大麻の所持検査を厳重に受け、今では監獄に20人前後の欧米人が留置されて退屈な日々を送っている」と。この国境からイランの首都テヘランまで1000キロの距離。
テヘラン着。標高1200mで、かなり大きな町だ。この日はホテル泊まり。昨夜、野宿で被った砂をシャワーで洗い流して休んでいると、ホテル近くで女性の叫び声がした。何だろうと思ってホテルの玄関へ向かおうとすると、フロントに受付係りがいた。
「今、ホテルの近くで叫び声が聞こえたんですけど」
「泊り客のイギリス人女性がホテルの前で突然、誰かにからだを触れられたって言うんです」と受付係り。
「何か盗られたものでも?」
「いや、何も。いつものことですよ」
ちょうど、その時、宿主がやって来た。
「ここでは外国人女性への触り魔が目に余るわい」と憤慨して言う。
イランの法律はイラン人男性に寛容なのであろうか、日本では痴漢で訴えられてしまう。
現在のテヘラン・グリーンストリート
翌朝、出発までには少し時間があるので、散歩すると道路を行き来する車の数に圧倒される。交通地獄と言うのか、排気ガスで多くの街路樹は枯れかけている。信号機もないし、その上、人間より車が優先だ。それから、食事はというとこの国はカバブ(ケバブ)しかないのかと思われるほど。北へちょっと行ったところにカスピ海があって、キャビアの有名な産地がある。しかし、値段が高い。他、ペルシャ絨毯と言う高価なものもあるが、とにかく、通過するだけなので、観光する余裕もない。トルコのイスタンブル―ルまであと2000キロ強。バスは予定通りテヘランを出発した。
翌年12月、イラン革命の狼煙が上がって、当国は数年、閉ざされることになる。




