第十三話 ー アフガニスタン(3)
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アフガニスタン(3) ―
まばらな人影に驚きもし、忙しく行き来する人に目を見張る早朝のカブール。私は指定されたイスタンブール行き直行バスの集合場所に向かった。着くと奇遇にもパキスタンで火口湖に一緒に行った日本人の一人と出会う。私たち以外の乗客と言えば、地元の人ばかり。
「僕一人で乗るのはちょっと不安だった」と70キロの体重を優に超える彼が言う。
「ちょうどいい具合に出会ったね」と、私は痩せに痩せて45キロを切っていた。
このバスを利用する旅行者はよっぽど物好きと見える。なぜなら、4000キロ超の距離を3泊4日で走破するのだから。この距離は日本列島を縦断しても及ばない。バスは満員で座席は木でできていたと思うが、とにかく堅いものだったと記憶する。若さゆえ、もちろん、私は物ともしない。振り返って思うに「病体にもかかわらず頑強だったんだ」と。
アフガニスタンを抜けてイランに入るには1000キロの道のりがある。途中から右手には山脈が連なり、左手には砂漠があって遥か向こうに山々がうっすらと見える。瓦礫の上に砂漠の砂がうず高く積もって道を塞いでいるので、それらを縫うようにしてバスは走った。夜も更けて来るとどこかで宿泊せねばならないが、この辺りにホテルがあるとは思われない。そうこうしているうちに運転手が今夜はここで一泊すると言う。全員バスから降りて適当なところに敷物をして寝床をこしらえる。夕食が運転手の手から配給された。食べるとまたまた下痢に悩まされる。今宵の月は満月で真昼のように地上を照らして明るい。高く積もった砂山の影に隠れて用を足すしかないが、探しているうちに100メールぐらい野宿のみんなと離れてしまって、その光景はアラビアンナイトっぽくて、幻想的だ。
山脈伝いを右手にバスは走行
ここ南天の満月の大きさは尋常ではない。太陽の大きさに匹敵する。大きな円い電灯を夜空に吊し上げたようなもので、その夜から月天子に見守られてか、不思議にも下痢はピタリと止んだ。
早朝、出発。旅行者から「高山には山賊がいるから不用意に近づかないこと」と言われていた。急に山から下って来てバスジャックされるかも知れないという不安を抱きつつ、イラン国境に無事に着いた時、ホッと胸を撫で下ろした。




