第十一話 ー アフガニスタン
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アフガニスタン ―
ペシャワールから直行バスで8時間掛かってアフガニスタンの首都カブール(カーブルとも表記)に着いたのは夕方だった。そこでいつものようにすぐ宿屋探しだが、ペシャワールと同じ名前の旧市街にあるグリーンホテルというところに泊まった。二つ星だが、温水シャワー無料。重さ7キロにも満たないリュックサックを部屋のベッドに投げ捨て、街へ繰り出す。
ここアフガニスタンは多民族国家だ。山岳地帯が大部分を占め、平野はごく一部分。北部はシルクロードと接していて、『文明の十字路』と呼ばれるお国。商いの物資は、穀物・金・銀・宝石類・香料・カーペット・毛皮・猟銃・武器など。古くから鉱脈が数多く存在することが知られており、もっとも歴史があるのは青色の宝石ラピスラズリで、こういったものがバザールで多く見られる。又、街を歩いているとアジア人顔なのに透き通った青い目の人に出くわして思わず立ち止まってしまったものだ。
メロンの露店市場
このようにして3日ほど過ごしているうちにあるアフガン人と知り合い、見た目にも優しい人のようなので私は警戒心を起こさない。「家に遊びに来ないか」と誘われて、断る理由もないことから、「じゃあ~、お邪魔しよう」となって、一緒に行く。連れて来られたところは平屋建ての普通の家。
「どうぞ」と彼は言ってドアを開ける。
正面に見えるのは事務机を前に平然と腰掛けている一人の壮年。私は家庭的な雰囲気ではないと気付いたが、事務机に進む。
「パスポート」と、この壮年は尋ねる。
私は黙ってパスポートを渡す。
「オッケー」と彼はパスポートの中身を一目して、退いてもいいという仕草をする。
私はドアに向かい、案内してきた人がドアの前で待機しているものの、目を合わすだけで声も掛けずに外に出た。
数年後、理解したのだが、当時、日本赤軍が中近東を中心に潜伏していたのを当局は問題視していて、この平屋建ての一軒家はもしかするとカモフラージュした警察の建物だったかも知れない。




