第一話 ー 香港
小説風旅行記。全24話で完結する。各話は長いものではないが、読者の皆様には私と共にファンタジーの世界に足を踏み入れていただきたいので、写真をできる限り取り入れた。
先ずは大阪から香港に向かい、その後、やっとの思いでインドに辿り着き、陸地を鉄道、長距離バスを利用してイスラム教の国々を通過、滞在し、最終目的地フランスのパリに凱旋。旅に5ヵ月を費やし、15ヶ国の訪問となった。
ゆく先々での出来事、ハプニングを面白おかしく、又は、真摯に綴っています。
1
香港 ー
1972年の冬の2月、ナホトカ経由でソ連邦(現ロシア)・北欧を旅してパリに到着した私は一旦、帰国し、1976年4月に南回りで陸路、パリを目指した。大阪空港(伊丹空港)から数時間後、香港の啓徳空港(当時)に降り立つ。税関を通り過ぎる際、女性の税関吏が私の首に掛けていた紐に気付いて何も言わずに腕を伸ばしてひょいと持ち上げる。この動作に私はビックリ。日本なら調べる際、何なのか見せなさいと言うはずだ。紐の先にはパスポートを入れる布袋があった。この税関吏はそれを確認するだけだったが、とにかく、無事に通関。
香港 夜景
ユースホステルで宿泊し、翌日は露天市場に行ってみた。ここでは商売人がヤンキー座りで物を売っている。ある露天商のおばさんの前で商品を眺めていると突然つむじ風が吹いて来た。おばさんは散らばった商品をかき集めながら私に話し掛ける。中国語なのでわからない。ちょうどその時、通りすがりの男性が「天女が通り過ぎたと言っているんだよ」と笑いながら英語に訳してくれる。「天女?」と私はつぶやく。そうするとおばさんが続けて、「これからどこへ行きなさる?」と尋ねる。「タイ、ネパール、インド」と私。彼女は「インドで福徳薫るどなたかと会うじゃろ」と言う。言っている意味が正確にわからなかったが、インドでいい人に会うというのはわかった。
訳してくれた男性が別れの挨拶をし、私も去ろうとすると露天商のおばさんは私にちょっと待ってというジェスチャーをして、何かを紙に認め、書き終わると私にその紙を見せてくれた。そこには漢字で「四柱推命」と書かれている。四柱推命と言えば、中国で有名だが、当時、日本の国民にはまだ余り知られていなかった。幸いにも家の近くに四柱推命で占う人を知っていたので、私はすぐに理解した。でも、なぜ彼女がそのように書いたのかわからなかった。自分は商売人であるけれども、「占い師」でもあると言いたかったのであろうか。とにかく、お礼を言ってその場を離れた。
その後、この市場を見て回るのだが、かなりの大きな敷地面積に露天商がひしめき合っているのがわかった。