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桜咲く春に  作者: 壱岐颯
4/5

テスト勝負

今日もいつも通り起きてランニングをしてシャワーからの朝ごはん。そして今は登校中である。


昨日は入学式だったが今日はテストがあるらしい。ちなみに明日は6限まで授業がある。桜花高校は県内でもトップクラスの進学校である。

そう、おれは勉強が得意だ。実際、入試の問題で解けない問題はなかった。しかし、主席になったら挨拶しないといけないから全教科で8割くらいの点数に調整した。


主席の子は神楽美春(かぐら みはる)という女子だった。なんと、おれの右隣の席の子だった。


学校に着くと俺の席にクールそうな黒髪ショートカットの女子が座っており西園寺さんと話していた。

視線に気づいたのか黒髪ショートカット女子がこちらを向き西園寺さんに話しかける。

西園寺さんはこちらを向き瞳を輝かせる。


「おはよう!神宮寺くん!」

「あ、あぁおはよう」

「あ、ごめんね。この子は定峰菊定峰菊(さだみね きく)って言うんだ。私の幼馴染だよ!」

「よろしくね神宮寺くん。」

「あ、うん。よろしく‥」


そのまま、トイレに行こうとしたが定峰さんがすごく見てくる。おれなんかしたっけ?


「神宮寺くん、前髪上げて眼鏡とってくれる?」

「え?」

「菊、どうしたの?」

「私の可愛いセンサーが反応してる。神宮寺くん、こんな見た目してるけど多分、カオ、イイ。」


なんでカタコトなの。ていうかなんでそんなことわかるの。


「…そんなわけないから。ちょっとトイレ行ってくるよ」


そう言っておれは逃げた。

トイレの手洗い場でおれは鏡に映った自分を見る。確かに自分は容姿が整っておりどちらかというと可愛い系の顔だ。でもおれはこの顔が嫌いだ。だから隠す。人に見せたくない。

そのまま、始業のチャイムがなるまでおれはトイレでぼーっとしていた。


「神宮寺くん、さっきは菊がごめんね。」

トイレから戻ると西園寺さんにそう言われた。

「あぁ、全然大丈夫。」

「ねぇ、神宮寺くん」

「な、なに?」

「連絡先交換して?」

「え、なんで?」

「特に意味はないけど?」

「……」

「だめ?」

くっ、その上目遣いはずるいだろ。

「俺、他人が苦手なんだよ。だからあんまし人と関わりたくないんだ。」

「わかった!ありがとう!」

そう言って西園寺さんは携帯を出してきた。

「あの、…話聞いてた?」

「うん、聞いてたよ?だから連絡先交換しよ?」

ダメだ。聞く気がない。

「……」

「そんなに嫌なの?」

「いやと言うか、さっきも言ったけど人が苦手なんだ。」

「そっか、なら今日テストあるよね?その点数で勝負して私が勝ったら連絡先教えて?」

まぁ、テストで勝てばいいだけだしこれで諦めてくれるならいいか。

「わかった。君が勝ったらね。」

「やった!絶対だよ!」



結果はおれの余裕勝ちだった。



テストの次の日の放課後、西園寺さんは返されたテストと順位表を俺のと比べている。

「むぅぅ悔しい。そんなに頭がいいなんて聞いてないよ!」

「これでも勉強できるからね。これで連絡先交換はなしね。」


この高校ではよくある廊下に順位が張り出されるのではなく個人に自分の点数と順位が書かれた紙が渡される。

ちなみに国語、数学、英語、理科、社会、5教科の合計は481点で順位は2位だった。

西園寺さんは5教科の合計が352点。順位は97位。なんでこの点数で勝負しようとしてきたのかわからない。


「絶対私より下だと思ったのに!」

この高校は偏差値で言えば60を超えてくる。352点といってもテストの内容から考えれば十分とれているといえる。

それにしても、この点数で2位とは。点数や順位が張り出されるわけではないので本気でやったつもりだったのだがこれは悔しい。

俺は次の中間テストで1位をとることを決めた。


「それより、樹くん部活には入るの?」

「今のところ入るつもりはないかな。」


ここでみんな気になるだろう。いつの間に名前呼びになったのか?

簡単に言うと押し切られた。まぁ名前くらいならいいけど、西園寺さんも自分のことを春って呼んでって言ってたけど無視してる。

ちなみに西園寺さんの幼馴染の定峰さんにも名前で呼ばれている。


「神宮寺樹くんっている!?!?」

そろそろ帰ろうかと考えていたところで教室のドアが急に開いたと同時に俺を呼ぶ声がした。

見てみると、茶髪をツーブロにした男子がいた。そこら辺の男性アイドルグループと比べても明らかに見栄えがいい。


空音(そら)?どうしたの?」

西園寺さんと知り合いだったのか、男子に話しかけている。

「あぁ春。神宮寺くんを探してるんだけどこのクラスにいるって聞いてさ。」

「樹くんなら私の後ろにいるよ?」

西園寺さんがおれの方に目を向ける。つられて男子生徒もこちらを見ると同時に近づいてくる。

「君が神宮寺くん!?!?おれの知っている見た目とだいぶ違うけど…まあいいか!おれは2組の川崎空音(かわさき そら)!一緒に剣道部に入らない!?」

「空音?なんで樹くんを誘うの?」

「あ?なんでって、神宮寺くんって中学2年のころ全中個人で優勝だぞ!中3は全国大会にも出てなかったけど。おれ神宮寺の剣道が大好きなんだ!」

「樹くんってそんなにすごいの?」

「別に、家が剣道とか武道の道場だから。たまたまだよ。」

俺の家は昔から続く神宮寺道場を経営していた。それが嫌で出てきたんだけどね。

「たまたまで全国1位はなれないと思うんだけど。」

「それで、神宮寺、いや樹!剣道部に一緒に入らない!?」

「いきなり呼び捨てか。ごめんけど部活に入るつもりはないんだ、ごめんね。」

「いいじゃないか!おれのことも空音って呼んでいいからな!もう剣道はやらないのか?」

「あぁ、もうやめたんだ。ほら手を見てよ。豆もすでになくなってるしここまでやらなかったら自分の型も忘れてるよ。」


剣道は1週間も練習しなければ自分の姿勢や竹刀の持ち方、足幅、踏み込む動作などわずかに違いが生じることがある。やらない期間が長ければ長くなるほどその影響は大きくなる。本気で練習して追い込めば1日で体は動くだろうが変なクセがついてしまう。やるとしてもそれはごめんだ。


「そっか、ならしょうがないな。じゃあおれも部活は入らなくてもいいかなぁ。」

「そんなに簡単に諦めちゃっていいの?」

「あぁ、樹も入らないみたいだし無理に誘うのもよくないだろ。おれ自身も強いわけじゃないからな。」

「おれもう帰ってもいいか?」

スカバの新作飲みに行きたいもん。

「あ、あぁだったらおれと一緒に帰らないか?」

「空音ずるい!私も菊誘って一緒に帰る!」

「おれこのあと予定あるんだ。また今度な。」

2人が言い合っているのを横に俺は教室を出た。




「樹っていつもああなのか?」

樹が出て行ったあとの教室で菊が来るまでの間空音と春は2人で話していた。

「うん、私にもいつもああだよ。でも樹くん剣道も強いんだね」

「剣道も?」

「うん、この前私を不良から助けてくれた男の人がいるって言ったじゃん?あれ樹くんのことだよ。」

「まじか。ケンカも強いのかよ。」

「あと頭もいい。今日返されたテスト学年2位だった。」

「は!?なんでもありじゃねえかすげえな。」

「春ーお待たせーってなんで空音もいるの?」

「樹くんに一緒に剣道部入らないかって誘いに来たの。」

「へぇ樹くんって剣道強いのね。意外だわ」

「そうそう、意外と言えば樹めっちゃ雰囲気変わってたんだよな。」

「そうなの?」

「あぁ全中優勝した時の写真見てみろよ」

そう言い空音は1枚の写真を携帯に表示し机に置く。

携帯を春と菊が覗き込む。

「「えっ」」

2人は絶句する。そして叫ぶ。




「カッコいい!!!!」

「カワイイ!!!!」




写真の表彰台の1位の位置には今の樹からは考えられないくらいの美少年が賞状とメダルを持って笑っていた。


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