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秘密の部屋

「ねえお父様、この塔には何があるのですか?」


「セオ、ここには宝物が隠してあるんだ。誰にも見つからないようにね」


「どうして?宝物なら宝物庫に入れておけば安全なんじゃないのですか?」


「あそこにあるものは、この城を維持していくための手段となるものを保管しておく場所なんだよ。宝物っていうのはね、お金なんかでは買えないすごいものの事をいうんだよ。お前もその一つだけどな」


「僕もお父様の宝物なの?」

「そうだよ、お前も大人になったらわかるさ」


(誰だろう、僕の知らない名だ)


テリーは急に体を揺らされた。それで初めてうたた寝していたことがわかった。


「あれ、寝ちゃってたのか・・・セオって誰だろう・・・あの部屋ってどこにあるんだろう」

心の中でつぶやいたつもりが声にでていたらしく、その言葉を聞いた僕を起こした人物が言った。


「あら、確かセオっていえセオディオス・レヴァントのことじゃないかしら」


その声に驚いて後ろを振り向くとそこには手に毛布をもち、顔に丸い小さな眼鏡をかけたチャーリーひいおば様が立っていた。


「チャーリーひいおば様、そんな毛布を持ってどこかに行くのですか?」


「いいえ、午前中もいたけど、一時過ぎぐらいからまたきて、それからここにいて大好きな花の図鑑を眺めていたんだけど、暗くなってきたから部屋に戻ろうと思って」


その言葉に驚いた。図書室と言ってもそんなに広い部屋ではない。確かに高い天井まである本棚にはびっしりと大量の資料や本が並べられているが、テーブルは真ん中のこの大きな丸テーブル一つだし、椅子もこの丸テーブルを囲んでいる椅子だけだ。


確かお昼を食べる時はチャーリーひいおば様も食堂にいたし、僕はお昼に食べてからこの部屋に来た時は二時だったけど、誰もいなかったのに。


「チャーリーひいおば様、僕は二時ぐらいからずっとここにいますけど、ずっといたんですか?」


「ええ、午前中あなたがいた時、テリーがきてグラニエ城祭の話をしていたでしょ」


そう言われて、確かにそうだと思い驚いた顔しているテリーにチャーリーは小さく微笑むといたずらをする時のように目を輝かせて声を小さくしてテリーの耳元に言った。


「このお城にはね、色んな場所に隠れ部屋がたくさんあるのよ」


「隠れ部屋?」


「そうよ、私のこの図書館の隠し部屋は私のお気に入りなのよ。あなたにも教えてあげるわ」


そういうと、チャーリーは壁四方の壁に天井の高さまである本棚の中で扉がある壁の正面の奥の壁まで歩いて行くと下から五段目の高さ位置にある本棚のほぼ真ん中辺りの三冊の本を左手で持つと、今度は右手でその空いた本棚の奥に手を突っ込んだ。どうやらボタンのような物があるようだった。


チャーリーがそのボタンを押すと、チャーリーが立っている目の前の本棚ごと一部が後ろに下がった。チャーリーが軽くその部分を押すと、扉のように棚ごと奥に開いて部屋が現れた。


天井の近くには小さな明り取りの窓が東側の壁の天井に近い位置にあった。窓も開閉できるようになっているようだ。


この図書室は半地下にあるから恐らくこの窓は外からみたら地面すれすれのいちになるのだろうと思われた。そこにはロッキングチェアがあるだけだった。


「ここは瞑想をする部屋なのよ。私は長い間、引きこもりをしていたから、よくこの部屋ににげ込んでいたの。ここ二十年は忙しくしていたから、あまり来ることもなかったんだけど、たまにここに来て色々考え事をしているといいひらめきがあるのよ。もうすぐグラニエ城祭でしょ。どう考えても今回で最後だと思うから最後にすごい私にしかできない花を使った何かできないかしらって考えていたのよ。花は私にとって宝物だから」


「チャーリーひいおば様の生ける花はどれもすごくきれいですから、きっといい作品ができますよ」


「ありがとう。だけどいろいろ考えていたら気がついたらすっかり日が沈んでしまっていたの」


「僕も、秘密の部屋のありかを探していたら寝てしまっていたんです」


「秘密の部屋?」


「はい、聞いたことありませんか。時々夢に出てくるんです」

「どこの秘密の部屋のことかしらね」


「僕も気になって探してみようと思いまして、それで閃いたのが、テマおじさんと碧ちゃんがお揃いの持っているブレスレットがあるでしょ。碧ちゃんのは地下貯水槽室への鍵だったけど、テマおじさんのはどこの鍵だかわからないって、だからもしかしたら宝物の部屋の鍵なんじゃないかって思って」


「あら素敵ね。じゃあ宝物庫さがしをしているのね。そう言えばさっき寝言でセオがどうとか、塔がどうとかって言っていたわよ」


「はい、変な夢を見たんです。セオと呼ばれていた男の子と父さんぐらいの人が見たこともない部屋で話していたんです。その塔の中にはマティリア様がいてお金なんかでは買えないすごい宝物があるとか話している夢を見たんです」


「さっきもいったけど、セオっていう子はもしかして、セオディオレス・レヴァントのことなんじゃないかしら」


「その人ってレヴァント家のご先祖様の誰かですか?」


「ええ、確か・・・テレーズの孫にあたる人よ」


「じゃあ・・・セオの隣にいたのはレイモンドってことでしょうか?」


「もしかしたらそうかも知れないわね、すごいわね、昔の人の夢を見るなんて、もしかしたらテリーはそのセオディオレスの生まれ変わりなのかもしれないわね」


「僕が・・」


「ごめんなさい、本気にしないで、ちょっと思っただけだから。でもすごいわねこのレヴァント家は何度も子孫に生まれ変わってくるなんて。そう言えば・・・昔、お父様に聞いたことがあるわね。なんでもこの城には地下にも塔があるのですって、そこにはマティリア様の像が安置されていて、代々の城主が宝物を納めているんですって、でも次期城主しか入ることができないって言っていたわ。だけどね、お姉様に聞いても、そんな話は聞いたことがないって言われたの。確かに言っていたんだけど・・・私の聞き間違いだったのかしらね」


テリーはそれだと確信を持った。


「ねえ、それはどこにあるって言ってましたか?」


「いいえ・・・私は次女でしょ、教えてくれなかったわ。あっでもヒントなら聞いた気がするんだけど・・・」


「どんな?」


「ごめんなさい、私が小さい頃の事だから、思い出せないわ。また思い出したら言うわね。ほら、もう六時だわ。そろそろ夕食の時間だわ」


チャーリーはそういうと、再び秘密の扉をしめ本を元の位置に戻した。テリーもテーブルに広げていた見取り図を元の場所に戻し、図書室を出ることにした。夕食後、部屋に戻ろうとしたテリーにチャーリーが近づいてきた。


「ねえテリー、明日もこっちにいるんでしょ?」

「うん、日曜日までいるよ。また今日の続きをしようと思うんだ」

「そう・・・邪魔はしないから、私も一緒に探してもいいかしら?」

「えっでもグラニエ城祭の準備で忙しいんじゃないんですか?」


「大丈夫よ、今は構想を練っている段階なのよ。さっき食べながら閃いたのよ。お父様が言ってらした地下の塔を見つけてそこ全体に花を飾ってみんなに披露したらすごい驚かれるんじゃないかしら、今は城の城主とか威張っている時代じゃないでしょ。みんなに見てもらってもいいんじゃないかと思うのよ。駄目かしら?」


「いいですね。僕、この夏休暇の課題にするつもりだったんです。今回のグラニエ城祭は八月の第三日曜日ですから夏休みに入ってからたっぷり時間があるから、チャーリーひいおば様が手伝ってくれるとはかどります」


「あらそういってもらえるとうれしいわ。なんだかワクワクしてくるわね」


チャーリーとテリーが廊下で話していると、車いすに乗ったヴィクトリアが近づいてきた。


「珍しい組み合わせね、午前中もリリーとファンがなんだか悪い顔をして楽しそうにグラニエ城祭の打ち合わせだって言っていそいそと出て行ったけど、あなたたちも打つ合わせ?」


「そうなのよお姉様、楽しみにしていてね。今までで一番心に残るグラニエ城祭に出来るように頑張るわ」


「あら、楽しみだわね。もうグラニエ城祭は参加できないと思っていたのにまた見れるなんてね、私は幸せだわ」


「そうよ、お姉様、だから足の怪我早く治してね」

「そうね、頑張るわ」


ヴィクトリアはそれだけいうと自分の部屋に戻って行った。それを見送りながらチャーリーはテリーに行った。


「絶対見つけましょうね」


チャーリーはそういうと笑顔をテリーに向け、先に再び図書室に向かって歩き始めた。


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