表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/28

図書室の邪魔者

僕はさっそく城内にある昔のご先祖様が書いた日記や本など貴重な資料を保管している図書室にこもって調べものをしていた。


(ここにいると、僕にはレヴァント家のご先祖様たちとは血は繋がっていないけれど、何だろうな懐かしい気がしてくるんだよな。なんでなんだろう・・・)


テリーは物心つく頃から頻繁に訪れているこの城がとてもお気に入りだった。

現在の近代的な建物も嫌いではないけれど、何百年もの昔からずっとここに建って多くの人々の思いや生活の営みを見てきたこの城に愛着が湧いていたのだ。


なんだか懐かしい変な気持ちになるのだ。特にこの図書館で読書するのは大好きだった。

ここにはいろんな思いが残されていて読むのが楽しいのだ。


テリーが一人もの思いに浸りながら、目を閉じて考え事をしていると、突然静寂を打ち壊す人物が現れた。


いとこのファンだった。

いつもなら休みになると、ライフ叔父さんの仕事場があるディオレス・ルイ社の最上階のテマおじさん所有のプライベートルームに行きたがるのに、今日に限って僕についてきたのだ。

こいつも僕と同じ学園の小学校に通っているので今日から三連休だった。

僕はこいつの考えていることがさっぱりわからない。僕とは正反対の性格でライフ叔父さんに性格が瓜二つだった。

誰に対しても愛想がよく、人懐っこい性格をしていた。

嫌いではないのだが、時々うっとうしくなる。


「ねえテリー、僕にも見せてよ」

「だめだよ、お前はまだこの地図の文字が読めないだろ」

「そうだけど、見るぐらいいいだろ」


こいつは肩まである長いサラサラの金髪を毎日ポニーテールにしてみたり、お団子ヘアーにしてみたりと毎日髪型を変えてたりして髪型を女子並みに気にしている。

今日は二つに髪の毛をわけ、三つ編みにしているその髪を両手で持ちながら膨れている。こいつはまだ11歳なのだが、何かと僕に絡んでくるんだ。


「前から聞こうと思っていたんだけどな、どうして男なのに髪の毛を伸ばしてるんだ?」


買い物に一緒に出かけるといつも初めて見る人には女の子と間違えられる。

しかもこいつはそれを喜んでいるんだ。服だってズボンははかないでいつもスカートみたいに見えるワイドパンツをはいているのだ。

多分テマおじさんを真似ているんだろうけれど、テマおじさんは三つ編みなどしていない、後ろに一つに束ねているのだ、テマおじさんはしゃべり方は女みたいだけれど、変な感じはしない、中性的な感じがするのだ。

だけどファンはしゃべらなければ女の子で通ってしまう。


「可愛いだろ。このスタイルが暑くなくていいんだ」

「切ればいいじゃないか」


「僕の勝手だろ、可愛いね。なんて言われるのは今のうちだからね、そのうち、嫌でも男の体つきになっちゃうんだから今のうちに楽しんでいるんだよ」


「僕には理解できないね。まっどうでもいいけど」


テリーは視線を再び机の上の紙に戻すと一人ブツブツ言いながら、横のメモ帳に何かをめもりだした。

ファンは気にしない様子で再び自分の妹のマ―シャや僕の妹のリンの三人の中で誰が一番可愛いかなど、どうでもいい事をしつこく聞いてきた。

こういう時はこいつをおだてておくのが一番いい。


「もちろんお前が一番可愛いと思うよ、もうすぐグラニエ城祭だろ。母さんたちはその準備で大忙しじゃないか。まっ10年に一度のお祭りだからリリーちゃんやテマおじさんも碧ちゃんもその準備で忙しそうだしね。今年はドレスでいったらどうだ?今日ディオレス・ルイにリンやマーシャちゃんも衣装選びに行ってるんだろ。僕はてっきりお前もついて行くんだと思ってたんだけどな」


テリーの提案を聞いたファンが突然機嫌が悪くなった。


「僕は男だからドレスは着ちゃいけないってパパがいったんだ。僕も舞踏会ドレスを着てみたかったのにさ」


明らかに不満顔のファンにテリーはあえてお前は男だからとは言わなかった。


「じゃあ、ライフ叔父さんに勝てそうな味方を連れてもう一度説得に行けばいいんじゃないか?普通の舞踏会じゃなくて、コスプレ舞踏会なんていうのにしたらいいじゃないか、お前よく家でしてるだろ」


「そうか、そうだよ。やっぱりテリーは頭がいいな。パパに駄目だっていわれて諦めてたけど、せっかくのお祭りだもんなあ。パパに勝てるって言ったら・・・リリーちゃんだ!こうしちゃいられないや。さっき城に来たの見かけたからまだいるはずだ」


「やれやれ、やっと離れてくれたか、あいつも誰が一番自分に甘いかよくわかってるんだな」


いそいそと部屋を出て行ったファンを見送りながらため息をついた。


「さて、集中しないとな。だけど・・・この見取り図を見ても何もそれらしいことは書いてないんだよな、碧ちゃんが話してくれた地下貯水槽室への鍵になっていたアーメルナのブレスレットには水の古代文字が書かれていたからあの場所を示していたんだ。碧ちゃんは偶然見つけたらしいけど、残るはテマおじさんが持っているレイモンドのブレスレットも鍵としての機能があるはずなんだ。きっとそこにあるはず。テマおじさんに見せてもらった時には塔の古代文字があった気がしたんだけどな。どの塔のことなんだろう、全部の塔は見てまわったけど別に怪しい所なんかなかったし」


テリーは一人ブツブツ言いながらグラニエ城の一番古い見取り図を睨み続けていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ