思い出した宝物
宝物庫から帰る途中、一番最後を歩いていたテマソンにテリーは引き返してきてたずねた。
「ねえ・・・テマおじさん、おじさんは14歳の時何をここに置いたの?」
「あらなんのことかしら」
「僕見たんだよ、おじさんがこっそり、何かをポケットにしまい込んだの」
テリーは一番最後を二人で歩きながら言った。
「あら見ていたの。いやあねえ、内緒よ」
そう言って見せたものは数枚の手紙の束だった。
「何それ?」
「13歳の時にね、アメリカに一年間一人で留学していた時があったのよ。その時に偽名で文通していた時の相手からきた手紙よ。海外ペンパルっていうのがあってね、一年間文通していたのよ。結局アトラスに戻る時に相手に住所を教えそびれちゃってそれっきりになっていたんだけどね、正真正銘の私の初恋の相手よ」
「どうしてあそこに置いたの?」
「さあ、どうしてかしらね、置いたことを忘れていたから、その時の心境は思い出せないわ。だけど・・・とても大切なもののように思えたのかもしれないわね」
「ねえ・・・その子どんな子?写真とか入っていなかったの?」
「入っていたわよ」
そう言ってテマソンが手渡した手紙には桜の木の下で微笑むセーラー服姿の女子高生の色あせた写真が入っていた。
「あれ?この子面影がリンに似ている気がする。なんでだろう。リンがもう少し大きくなったらこんな感じになるのかな」
「あら当然よ、リンちゃんは栞ちゃん似でしょ。栞ちゃんは碧華に似てるじゃない」
「えっもしかしてこの子って・・・」
テリーはまさかというように驚いた顔をテマソンに見せたがテマソンはほほ笑みを返し頷くとその写真をテリーから返してもらい、大切そうに懐にしまい込んだ。
「このことは内緒よ。男の約束よ」
「うん・・・わかった。だけど、碧ちゃんってアトラスに来るまでは英語は全くできなかったって言ってたけど、おじさん日本語で文通していたの?」
「ああ、そのこと、もちろん英語よ、でもね、そうね内容は思い出せないけど小さな子どもが書くような内容だったような気がするわ。そうそう途中から日本語で書いてくるようになったのよ。まったくあの子らしいわね、私は英語で返事をしていたと思うわ。多分だけど、学校の先生とかお友達に訳してもらっていたんじゃないかしら」
「えっおじさんは子どもの頃日本語は勉強しなかったんじゃなかった?もしかしておじさんも誰かに訳してもらっていたの?」
テリーの言葉に笑みを受けベながら人差し指を唇に当てながら言った。
「まさか・・・あの子じゃあるまし、手紙を誰かに見せたりなんかしないわよ。内緒だけど、こっそり覚えていたのよ。記憶を消されるまでは確かに日本語を話せるまでにはなっていなかったけれど読むぐらいまでは理解できていたと思うわ。あの子との文通の記憶が消えたと同時に覚えた日本語の記憶も消えちゃったみたいだけどね」
「ふ~ん、ねえおじさん、もし、もしもだよ、もしも記憶が消えなかったら、碧ちゃんに会いに日本に行っていたと思う?」
「そうね・・・行ったかもしれないわね」
「そう・・・じゃあもしそうなっていたら、僕生まれてなかったかもしれないね」
「あらどうして?」
「だっておじさん若い頃すごくイケメンだったでしょ。実際会っていたら碧ちゃん恋に落ちていたかもしれないでしょ」
「あら、それはなかったと思うわよ。だって碧華は面食いじゃないもの。親友には慣れたかも知れないけれど、恋人にはならなかったと思うわよ。だってね、あなたの栄治お爺ちゃん、心がすごくイケメンなんだもの、私なんか叶わなかったと思うわ」
「あのね、僕もねそう思うんだ。僕もねイライラした時とかお爺ちゃんと話すとすごくリラックスできて落ち着いてくるんだ」
「そうよね、中々いないわよあんな人、碧華はいい旦那様をゲットしたわよね。うらやましいわ」
「そうだ!僕ひいひいおじい様とひいおじい様のお墓にお礼をいいに行かなきゃ」
「あらどうして?」
「だってどっちがテマおじさんに催眠術をかけたのかわかんないけど、テマおじさんが碧ちゃんのことを忘れたおかげで、今み~んなと楽しく生活できているからさ。ありがとうございましたって言いたいんだ」
「あら・・・そうかもしれないわね。私はちょっと損をしたような気もするけど、きっと私が歩んできた道が最善の道だったのかもしれないわね。今私もすごく楽しいもの。じゃあ、この後一緒に墓所に行きましょうか。後教会にもよってマティリア様にもお詫びいわなきゃね。神聖な宝物庫に長い時間お邪魔しちゃったから」
テマソンはテリーにウインクして言うと、テリーも頷いた。
「うん!」
そうしてテマソンはテリーの肩に自分の手をのせて階段をのぼり始めた。
こうしてテリーの冒険はあっけなく終わってしまった。一人で成し遂げるはずが結局たくさんのファミリーに助けてもらった結果になってしまった。
「僕はまだまだだな・・・今度は僕が助けてあげられるように勉強も体も鍛えなきゃ、それに、この日誌にはまだまだ秘密の部屋があるみたいだし、楽しい夏になりそうだ」
テリー少年の暑い夏はこうして始まるのだった。
それからその年の夏に開催されたグラニエ城祭では、この場所はキチンと安全性を確認し、天井にには電気を通し、一大イベントとして、みんなで楽しめる宝物庫探検ツアーという企画が実現し、地下の迷路を探検しポイントをゲットした者には宝物庫の見学ができる迷宮探検が実現し、大人子ども関係なく多くの人が冒険を楽しんだ。
もちろん宝物庫もきちんと整備され、全てチャーリー・レヴァントによって、花という宝石にも勝る輝きで飾り付けられた宝物庫が披露された。その宝物庫には赤外線や、ガラスなどがつけられ、展示物に触れないように整備と空調設備も整えられていた。
そしてグラニエ城祭の後、再び宝物庫は閉ざされた。しかしそこには新しい写真が飾られていた。その真ん中にはヴィクトリアとチャーリーが座り、その周りにはファミリーが笑顔で勢ぞろいして写ってあった。




