もう一つの通路と犯人
栞とライフは一階の貯水槽室のある壁の前まできていた。そこには玄関ホールに集まっていたファミリーや使用人たちも集まっていた。
大勢が見守る中、鍵である腕輪を壁に埋め込むと、閉ざされていた壁が押しあがった。既に点検予定があるため水は抜いていたのですんなり入ることができた。ライフが中に入ろうとすると栞も後に続いた。
「栞ちゃんは表で待っていなよ。ここは僕だけで大丈夫だよ」
「何言ってるのよ、あんた一人じゃ頼りないでしょ。こう見えても私体は鍛えてあるんだから、私がいたのに、引き留めず送り出した私にも責任があるから」
そう言って腕をめくって筋肉を見せて笑った。
「わかった、じゃあ無理しちゃ駄目だよ。危ないと思ったら引き返すからね。ルルーシュさん、優、子どもたちを頼んだよ。必ず見つけてくるから」
「わかった。お姉ちゃんもライフさんも無理しちゃだめだよ」
「わかってるわ。駄目そうなら引き返すようにするわ」
そう言ってライフと栞、その後に二人の使用人も後に続き中に入って行った。
中はひんやりとして冷たい空気がどこからともなく流れ込んできているようだった。
懐中電灯を照らしながら階段を滑らないように降りるとまだ水は完全に乾いておらず少しぬめりがあり滑りやすくなっていた。
「初めて入ったけど、おじさんこんなとこによくもぐっていけたよな。僕なら無理だな」
「あら、ライフは私がママと同じような状況になったら見捨てるんだ」
「はあ?ならないだろ?それにあの時だっておじさんがもぐって行く必要ってなかったんじゃないか。碧ちゃん水に浸っていたわけじゃないんだし」
「まあやっぱり薄情ね・・・でも今回は助けに行ってくれるんだ」
「当然だろ、叔父さんも碧ちゃんももういい年なんだし、テリーもフェルも僕にとって大切なファミリーたちだしね」
「ありがとうライフ」
「お礼なら無事解決したら言ってくれよ」
「わかったわ、全部解決したらお姉様がアトラスでまだ未発売のあなたが集めていた漫画本の最終巻を日本の友達に送ってもらったのがあるから、終わったらプレゼントしてあげるわ。凄いのよ日本限定発売のその後ストーリー漫画の特典つきなのよ」
「なにそれ?もしかして見せびらかすつもりだったの?」
「そうよ、あなたも時々、日本に出張した時、私に自慢してくれるじゃない、何かと交換するつもりだったけど今回は無条件であなたに提供してあげるわ」
「なんだよ、がぜんやる気になってきたな。よし、仕方ない気合をいれるかな」
ライフは大きなため息をつくと、気合いを入れると、海中電灯の光を頼りに鉄のはしごを探し
登り始めた。その後を栞も続いた。
そうして二カ所同時に宝物庫へと続く通路が開かれた。
その頃、ビルたちは城の中に勤務しているはずのサルジュを探していた。四人の捜索で城中の使用人たちもそれぞれ散らばっていたが今は地下貯水槽の前にほぼ全員集まっていた。
だが、その中にサルジュはいなかった。
ビルは使用人たちにサルジュの行方を探すように命じ、城中を捜索していると、一台の車が城に到着した。
玄関ホールの真ん中にテーブルと椅子を置き、そこで指示をしていたリリーの前に現れたのは引退したはずのマシュー・サルジュとその息子ロン・サルジュだった。
「サルジュ、子どもたちとテマソンと碧ちゃんをどうしたの?」
リリーが両手を縄で縛られたロン・サルジュに詰め寄ると叫んだ。
「俺が悪いんじゃない、俺は悪くない、あいつらが入ろうしていたから入れてやっただけだ。あそこは正当な権利があるものとそれを許されたものしか入ることが許されないんだ、今頃天罰がくだってるさ」
ブツブツと言っているロンの目はどこかうつろだった。まるで何かに憑りつかれているかのように
「お前はまだそんなことを言っているのか!」
そう叫んだかと思うとロンの頬を殴り飛ばし、馬乗りになると何度も頬を殴り続けた。
さわぎを聞きつけた使用人たちやファミリー達が集まってきた。
「落ち着いてください。今はとにかく四人の救出が先決ですから」
マシュー・サルジュを息子のロン・サルジュから引き離しながらビルが言った。
「テマソンから腕輪を奪ったんじゃないの?出しなさい」
「リリー様、申し訳ありません。馬鹿な息子がとんでもないことをしでかしまして、テマソン様の腕輪はこちらにございます。こやつめが家に戻るなりこの腕輪を自分の腕につけながらにやけていたものですから、ひっつかまえて問い詰めましたらとんでもないことを白状しまして、急いでやってきたのですが」
そう言って息子から取り上げた腕輪をスーツの胸の内ポケットからとり出してリリーに手渡した。
「申し訳ありません」
「この人の処分は後よ、宝物庫に急ぎましょう。サルジュあなた行き方を知っているんでしょ、案内してちょうだい」
「はい、あの・・・宝物庫にレヴァント家ゆかりでない人が長時間入っていると精神が崩壊すると旦那様に聞いた気がいたしますので、救急車を先にお呼びしておいた方が良いかと存じますが」
あわてて、図書室に行こうとしたリリーにマシュー・サルジュがいうと、リリーがニヤリとして言った。
「あらそれなら大丈夫よ、救急車じゃなくて、警察を呼ぶことになるかもしれないけどね。全てはあの子達が戻ってきてからね。それに安心しなさい。碧ちゃんの前世はアーメルナだし、今は正式にレヴァント家の人間だもの、それにね、今日わかったんだけど、レヴァント家とビンセント家は親戚だったみたいよ。だから、テリーもフェルも血脈をたどれば私と同じ血が混ざっているんだもの。みんなレヴァント家にゆかりがある人間ばかりだもの。女だからって理由でマティリア様は削除なんかしないわよ」
そういうとリリーは腕輪を自分の腕につけると、さっそうと図書室にむかって歩きだした。




