宝物庫の番人②
「さて、入るわよ」
そう言ってテマソンが扉を開けようとしたその時、ボウガンの矢がテマソンの頬を霞め扉に突き刺さった。
「誰?そこにいるの」
テマソンは険しい顔になり、自分の後ろにテリーをかくまうと叫んだ。碧華もフェルの手を掴むとテリーの横に押しやると、テマソンの横に立ち二人を扉の間に置くと、真っ暗な階段の先を睨んだ。
「さっきから私やフェルに石とか投げつけてきていたのはあなたね。出てきなさいよ。何がしたいの?」
碧華は叫ぶと、不気味な笑い声が響いた。
「ふははは、あなたごとき日本人はここで命を落としても誰も悲しみはしませんよ。昔から悪運だけはあるみたいですけどね。歴代のレヴァント家の城主の呪いを受けて呪い殺されればいいものをしぶとく生きながらえて、こともあろうことか、自分の子どもにこの城の管理をさせるだと、ふざけるのもたいがいにしていただきたいものですな。この城は代々我が、サルジュ一族が管理してきたんだ。なのに日本人がしゃしゃり出てきて大きな顔で指図しやがって。お前の父親だってそうだ。レヴァント家の養子のくせに、坊ちゃまより誕生日が早いってだけで、レヴァント家の長男気どりでこの城に夫婦で口だししてきやがって」
そこにいたのはロン・サルジュで長年執事として働いていたマシュー・サルジュの息子だった。今は城の事務員をしている人物だった。
「何を言ってるの?エンリーや栞ちゃんはこの城の事を思って、修繕費用を自費で出したり、栞ちゃんも今じゃリリーの代わりによく仕事をしてくれているじゃない。それに比べてあなたがいうサルジュ一族はどうなの?あなたは仕事をさぼってばかりで、確か今日も出社してきていなかったわよね。あなたのお父様は確かによく気が付いて有能な執事だったけれど、あなたは執事試験にもまだ合格できていないんでしょ」
「ちっ、また親父のことか?今は時代が違うんだ。俺はこの城を手に入れてやるんだ。親父のようにただの使用人で終わってたまるか。この城の城主を影であやつって、金銀財宝を俺の物にしてやる計画だったのに俺の周到な計画をぶち壊しやがって・・・邪魔なんだよ!日本人ごときがこのアトラス人の誇りである歴史ある偉大な城で大きな顔をしていいわけがないんだ」
サルジュの憎しみに歪んが顔を見て碧華が言った。
「お父様も同じ考えだったのかしら?サルジュさん・・・私や栞のことが邪魔だったのならアトラスに移住する前にどうして言ってくれなかったのかしら。マティリア様やレヴァント家の皆さまが日本人である私や栞がこのグラニエ城にくることが気に入らないのならあなたがどうどうと進言すればいいでしょ。だけど、その上で、どうするのか決めるのはあなたではないけどね。申し訳ないけど、私はこれからもここに遊びに来るし、栞もここの仕事を止めたりしないわ。あなたがどう思おうともね」
「ふっ、そうでしょうね。ずうずうしい日本人の考えることですから。ですからこの機会をずっと待っていたんですよ。ここはね、扉を閉じてしまえば出られないらしいんですよ。父から密かにこの存在を聞いていて調べあげたんですよ。あなたはここで死んでください。ここにくる方法はそこのガキが持っている日誌と見取り図にしか書き記されていませんしね。安心してください。遺体は時期をみて偶然を装ってみんなにさらして差し上げますよ。アーメルナの時のように忘れ去られたりしませんよ。まっ発見の知らせをする前にこの中の宝物は俺が運び出して有意義に使ってあげますよ」
そう言ってもう一度ボウガンで今度は碧華を狙おうと後ずさった。
「さあ、最後に宝物庫を見させてあげますよ。さあ中に入れ!それともここでこの矢で今すぐあの世に行きたいか!レヴァント家の呪いを受けるがいい」
「サルジュ、子どもたちは関係ないでしょ」
「テマソン様、長男でありながらあなたはそれを放棄し、よりによって跡継ぎをもうけないなど嘆かわしい。あなたはレヴァント家の血を後世に残すことの大切さを分かっていらっしゃらなかった。そんな女に夢中になってね。ここを子孫たちに引き継いでいくことの大切さをわかっていない愚か者にはもう用がありませんよ。私は認めませんよ。レヴァント家の血が流れていない城主などあってはならないのです。せめてこの宝物庫で命をもってマティリア様に懺悔してください。この神聖なる城をアトラス人ではない人間を招きいれた罪をマティリア様に懺悔してください。その罪な子どもと一緒にね」
「何を言っているのサルジュ!あなたにこんなことをする権利はないはずよ。ましてやレヴァント家のことに口を出す権利もね」
「いいえ、俺は父に頼まれたのですよ。そして父はあなた様のおじい様に託されたのです。ヴィクトリア様をそして、この城をね、次の世代へと続くようにね。ですが、もう終わりにしましょうか。あなたがいてはこの宝物庫が穢れてしまう。ここで死んでください。ご安心ください。一年ほどしてほとぼりが冷めたら回収して差し上げますよ。正当な後継者であるライフ様やファン様にこの高貴な場所をお教えする為にね」
テマソンはサルジュを睨みながらも後ろ手でドアを押し開けると、小声で後ろの二人に囁いた。
「テリー、ファン早く中に入りなさい。碧華もよ」
「でも・・・この中には出口がないんでしょ」
「いいから早く入りなさい」
テマソンはサルジュを睨みながら後ずらさりながら三人が宝物庫の中に入ったのを確認すると自分も中に入り、扉を閉ざした。そのすぐ後で、サルジュが扉に近づき鍵である腕輪を扉から抜き取る音が聞こえた。
こうして四人は宝物庫の中に閉じ込められることになった。




