捜索メンバー
それから休憩を終えた後ヴィクトリアは自室へと戻り、チャーリーはどうしても行かないといけない仕事があったと言って仕事に出て行った。
ビルと栄治もジャンニから家系図の場所を忘れたようだというシャリーのため、家系図捜索を手伝ってほしいと要請がありビンセント家に行くことになった。
更にフレッドとエンリーも会社から緊急の呼び出しを受け、二人そろってそれぞれの会社へと戻ることになった。
「フェル、くれぐれも勝手な行動をするんじゃないぞ」
「わかってるわパパ、大人しくしてるわよ」
フレッドはトラブルメーカーの娘の事を心配しながら、碧華とテマソンに娘を託し、仕事へと戻って行った。
エンリーもテリーに無茶をしないようにさとし、仕事へと戻って行った。
「碧華ママも一緒になって無茶をしないようにしてくださいね」
全てお見通しだと言わんばかりに碧華にもくぎを刺した。
「あらエンリー、心配いらないわよ。私の大切な宝物には傷をつけないように細心の注意を払うから」
「はあ・・・碧華ママもですよ」
「は~い善処します」
苦笑いを浮かべてエンリーは仕事へと戻って行った。
「エンリーたら心配症ね。相変わらず20年前と変わらないわね。今じゃ大財閥の社長だっていうのに」
エンリーの様子を見ながらテマソンが言うと栞が言った。
「あらテマソン先生、エンリーは変わりましたよ。会社じゃすごい怖い存在感を出して、駄目社員をしかりつけているって聞いたわ。時々私に秘書の子からヘルプの要請電話がかかってくるもの。怒りを静めにきてくださいってね」
「そうだよテマおじさん、父さんがどんな時でも優しいのは碧ちゃんに対してだけだよ」
「そう言えばそうね。私の旦那様なのに、嫉妬しちゃうぐらい仲いいし」
栞もそう言って碧華が図書室の窓を開けて、車に乗り込もうとしているエンリーとフレッドに手を振っている後ろ姿を眺めながら言うとフェルも言った。
「家のパパだってそうだよ。今日だってすごく忙しいって昨日言ってたのに、碧華おば様からのメールを読んだとたん一緒に行くって言いだしたんだから、私も碧華おば様大好きだけど」
満面の笑顔で手を振って見送っている碧華を眺めながらテマソンが言った。
「そうね、碧華にいったん気を許しちゃうと損得勘定なしに助けたくなるから不思議よね。もうすっかりおばあちゃんなのに、20年前からちっとも変わってないわ」
「でもママ、この二十年ですごい友達が増えてるんじゃないかな。年齢関係なくママをしたって毎日携帯に連絡が来てるみたいだし、誕生日なんかすごい量だもんね」
「そうね、あの量には引くわね。世界中に友達いるものね」
「僕も、なんだろうな、碧ちゃんといるとここら辺が暖かくなるんだよね。腹が立ってイライラしてる時でもさ」
「あ~私もそう。イライラしてどうしようもなくなると私も碧華おば様に電話よくしちゃうのよね」
フェルも大きく頷いていた。
「みんな私も大好きよ。さあ~、探検を開始しようよ!時間がもったいないし」
碧華は窓を閉めると振り向き四人に向けて言った。すると栞が首を振った。
「ごめんねママ、私はまだ仕事があるから。明日にしたら?」
「え~駄目よ」
「そうよ碧華、明日にしなさい。まだ明日は日曜日じゃない、どうせあなた明日も会社に行かないつもりでしょ」
テマソンも栞の意見に同意したが顔を膨らませて反論した。
「駄目よ、今日じゃなきゃ、どうしてだかわからないけどそう思うの!」
「はあ・・・碧華なんなのその根拠のない自信は」
「だってえ~」
「僕も今日がいいと思う」
碧華を援護したのはテリーだった。碧華はテリーを抱きしめながら言った。
「そうよね。さすが私の孫だわ~」
碧華はテリー頭を撫でながら言った。テリーもまんざらでもなさそうだった。テマソンは小さくため息をつくと言った。
「栞ちゃん、この三人の事は私に任せて、危険なことが起きそうだったら引き返させるから」
栞も碧華が何かをすると言ったら絶対曲げない事を知っていた為に、諦めのため息をつくと息子と母親に念を押した。
「テリーもママもいい!危ないと思ったら無理はしちゃ駄目だからね」
「は~い」
二人は同時に返事をした。わかってるのかなあと疑いの目を向けながらも栞は仕事場に戻って行った。栞は栞で、今からグラニエ城の教会の修復工事の打ち合わせの予定が入っていたのだ。
「ねえ、だけど・・・テマおじさんも碧ちゃんも本当に仕事に戻らなくていいの?今ライフ叔父さんと舞踏会の衣装の打ち合わせとかしてるんでしょ。それに本の出版も近いんでしょ、ここにいてもいいの?僕らなら大丈夫だよ」
そう言ったテリーに碧華が笑顔で言った。
「あら心配してくれているの?大丈夫よ昔なんか数日で仕上げたこともあるんだからまだ、時間はたっぷりあるでしょ」
「碧華、そうやって去年は結局出版が三ケ月も遅れたのよ、今年は予定通りに出版しないと日本行きがパーになるのよ、わかってるの、新作記念サイン会なんですからね」
碧華は両手で自分の耳を押さえながら言った。
「はいはいわかってますよ」
そんな二人を栞は笑いながら言った。
「テマソン先生とママは相変わらず仲がいいよね」
「おかげさまで、これもあなたのおかげよ栞。あなたがエンリーをゲットしてくれたから今もこうして楽しく老後を送らせてもらってるもの。感謝してるわ」
そう言って、娘を抱きしめた。
「もうママ、私いくつだと思っているの?」
「あら娘をギュッってしたくなる気持ちに年齢は関係ないわよ」
そう言ってより一層碧華は栞を抱きしめた。その後碧華はテリーとフェルも抱きしめながら耳元で囁いた。
「可愛い私の救世主たち、何としても宝物庫を見つけてね。私の新作のインスピレーションがわきそうな予感がするのよね。頼りにしているわよ」
「任せてよ碧ちゃん」
「私も頑張るわ」
二人の言葉に碧華は二人の頭をそれぞれ撫でて笑顔で頷いた。
「テリー、まっ私達は趣味で仕事しているみたいなとこあるから今は会社に拘束されていないから大丈夫なのよ」
「そうよ、それより、こっちの宝物庫の方がきになるわよね、記憶喪失のテマソン」
「まあ・・・そっそんなことないわよ。私はあなたがまた無茶をしそうだから止める人間も必要だと思うから一緒に行くって言ってるんでしょ」
「ええ~そんなこと言って・・・どうだか」
再び口論を始めたテマソンと碧華にやれやれと言った顔をした栞はテリーに二人は任せて仕事に向かった。
「もう二人ともそれぐらいにして、今は暗くなるのが遅いって言っても早くしないと夕飯に間に合わなくなるよ。料理長さんの料理はタイミングがずれると絶品を味わえなくなるんだよ」
「そうだったわ。急ぎましょ」
ピタリと喧嘩を止めた碧華とテマソンはテリーとフェルとを引き連れて、準備を開始した。テマソンが描いた見取り図と懐中電灯も調達してきた。テリーは肩に自分が家から持参してきた鞄をかけ、チャーリーが持ってきた日誌を入れた。
「あら碧華、その鞄はいらないでしょ」
いつも持ち歩いているリュックを背負いだした碧華にテマソンが言った。
「嫌よ、ここには七つ道具が入っているんだから」
「また変なこと言ってこの子は、まあいいわ、重くなったからって持ってっていわないでよね」
「べえ~そんなこといいませんよ~だ」
碧華はテマソンに舌をだしてアカンベェをしてみせた。
「ねえテリー、碧華おばちゃまっていつもこんな感じなの?」
「そうだよ、テマおじさんといる時はこんな感じだよ」
「そう、すごいね、全くの赤の他人で、夫婦でもないのに、まるですごく仲のいい姉弟みたい」
「そうだよね、でもまっ一応義理だけどあの二人姉弟だしね」
「そっか・・・そうよね。なんだろうな。私ね、碧華おばちゃまたちといると、すごく安心するんだよね。嫌な自分が薄まって行く気がして」
「同感」
二人は仲良く見取り図を見ながら言い合いをしているテマソンと碧華を見ながらテリーは小さく頷いた。




