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見取り図

「ママン!」


「あら碧ちゃんも来てたのね、いらっしゃい」


ニコリとしていうヴィクトリアのもとに碧華が駆け寄った。


「ママン、どうしたの?体調が良くないって聞いたから声をかけなかったんだけど」


「大丈夫よ、私はいたって元気よ、ただ、この間転んで足を捻挫しちゃったから、みんな大げさにしているだけよ」


「そう・・もう無理しちゃだめよママンが元気でいてくれることがレヴァント家の平安に繋がってひいては繁栄につながるんだから」


「はいはい、でもあなたももう若くないんだから、仕事も無理しちゃだめよ。仕事は若い子に譲っていかなきゃ」


「はいママン、今は作家活動しかしていないわ。ママン、作家って商売は定年がないから」


「そうね、私もあなたの作品は毎回楽しみにしてるのよ。頑張ってね。テマソンもよ、いい加減、ライフに全て任せたらどうなの?あの子も一人前にあなたの会社運営しているみたいじゃない。年寄りがいつまでも顔を利かせているとやりづらいものよ」


「まあ、ママンまで、私から仕事を奪ったら何も残らないじゃない。私は生涯現役を目標としているのよ。90歳になったら引退を考えるわ」


「ちょっとテマソン、あなたが90ってことは私はまだ20年も働かなきゃいけないってこと」


「何言ってるのかしら、あなた私があれこれと作品のヒントをあげているから今でも現役の作家として成功して、好きなことをできているんでしょ。家に引きこもりたいなら若い頃存分にしたんでしょ。今ぼーっと家で過ごしていたらボケちゃうわよ」


「確かに、待ってくれているファンの子達がいる間は頑張らせてもらうわ、想像の泉が枯れない限りはね。ところで、ママン、テマソンの子どもの頃の事件って何か教えて貰うことできる?」


「ええ構いませんよ、フェル、あなたの後ろにある棚の一番下にあるメモリアルってタイトルのファイルをとってくれるかしら」


そう言ってフェルにそのメモリアルと書かれたファイルのようなものを取り出してもらうと自分の膝の腕でパラパラとめくり始めた。そうして、一枚の写真が納められているページを開くと懐かしそうに語り始めた。

そこには14歳と書かれたテマソンの写真があった。


「あら~可愛いわね」

「ちょっとママンどうしてこんな写真があるのよ。私知らないわよ」


テマソンは自分の身に覚えのない写真を手で隠しながら叫んだ。


「あら息子の写真をスクラップして何が悪いの?」

「ねえ、ママンこの頃のテマソンに何があったの?」


碧華はテマソンを押しのけてヴィクトリアにさらに近づいた。


「ほらよく見て、服がすごく汚れているでしょ。この頃のテマソンってここに遊びにくるたびに城の中を探索していたのよ。それでこの頃も夏休みで遊びに来ていたのよ。それで一日、姿を消したことがあったのよ」


「えっそうだったかしら」


本人は全く覚えていないようだった。


「ちょっとどうして覚えていないの?」

「仕方ないでしょ、碧華だって、14歳のこと覚えているっていうの?」

「それは覚えていないけど、すごい衝撃的な出来事なら記憶の残ってるはずでしょ」


「そうなんだけど、この城に関しての事はほとんど覚えていないのよね。それに二十代~二十年ぐらいはここにはきていないし」


「はあ?母親に会いにも行かなかったの?」

「そういう子よ、私の方が押しかけていっていた感じね」


そういうヴィクトリアはその次のページを開いて、一枚の紙を取り出した。


「あら?それはなあに?」


「これはね、あなたが書いたこの城の見取り図よ」


そう言ってヴィクトリアが広げたのは、大きな六人がけのテーブルの一面の大きさの巨大な見取り図だった。しかも、細かく解説が付け加えられていた。


「あらすごい精密ね、この部屋の秘密の部屋まで書き込んでいるじゃない」


まるで他人事のようにいうテマソンにフレッドが言った。


「思い出せませんか?これを見る限りテマソン少年は確実に行っているようですよ」

「そうなの?テマソン先生」


栞も驚いてたずねたが一番反応したのはテリーだった。さっきまでチャーリーが持ってきていた日誌を読んでいたが机の上に広げられた見取り図を真剣な顔で眺め始めた。


「これすごいよ、今読んでいるこの日誌に書かれてある秘密の空間もきちんと書いてあるよ」


「さすがですね、テマソンさんは子どもの頃から天才だったってことですね、ですがどうして記憶が削除されているんでしょうね。これほどの物を書いたのなら一日では無理でしょうし、記憶が残るはずだと思うのですけど」


フレッドの指摘でテマソンは再び記憶をさかのぼり考え込み始めた。その時栄治がその見取り図を見ながら言った。


「もしかしたら、思い出したくない何かを見てしまったのかもしれませんね。もしくはその場所を公にしてはいけない何らかの事情があった為に誰かに催眠術でもかけられたとか」


栄治の言葉で何かを思い出したヴィクトリアが膝の上にあるファイルを更に数枚めくって指をさした。


「これじゃないかしら、この写真を撮った一カ月後、お父様が珍しく機嫌が悪くて、何故だかテマソンをすごくしかりつけていたのよ。私が何度も理由を聞いたんだけど教えてくれなくて、テマソンも何があったのか教えてくれなかったわ。この写真がお父様とテマソンが一緒に写っている最後の写真よ」


そこには、老人と顔にあざを作っているテマソンの写真が納められていた。


「あらこの写真の時なら覚えているわよ。おじい様が珍しく私を自室に呼び寄せて、私に言ったのよ。お城の亡霊にはとりつかれるなって」


「なんのことだろうって思ったのよね。あのあざは確か、お父様と口論して殴られたのよ。日本語を覚えたくないってことでね」


「あらあなた頑固だったのね。結局日本語にどっぷりはまたのにね」


「ホントよね・・今じゃこうして日本語での会話の方が多いものね、あなたが英語をしゃべらないから」


テマソンは碧華の方をちらりと見ながら言った。


「すみません、僕も日本語ばかりで」


そう言って先にあやまったのは栄治だった。


「もう栄治さんが謝ることないでしょ。我が家はみんな日本語しゃべれるんだから会話は日本語でもいいじゃない。それで困ってないし、今は優秀な翻訳機あるし」


「まあ、そうやって20年どこに行っても日本語で通してきたんだからある意味あなたはたいしたものだわね」


あきれているテマソンに碧華は舌を出した。


「そう言えばシャリーおばあちゃんに聞いたんだけど、碧華おば様は今年の秋に日本に行くんですよね」


「あら、良く知っているわね。正確には八月の後半からだけどね、半月ぐらい滞在する予定なのよ」


「いいなあ~私も行ってみたい日本」


「あら・・・そう言えばフェルちゃんはまだ日本に行ったことがなかったのね。ご両親の許可が出るようだったら、新学期が始まるまで一緒に日本を観光する?シャリーも同行する予定だから日本は諸外国に比べて治安がいいし楽しいわよ」


「えっいいんですか?ねえパパいいでしょ。私行きたい」


フェルは目を輝かせて父であるフレッドを見た。


「別にいいけど、碧ちゃん、仕事がらみで行くんですよね。この子が一緒だと邪魔になりませんか?」


「大丈夫よ、フェルちゃんも日本語話せるし、テリーも同行するのよ、ボディーガードも同行させれば私が仕事していても大丈夫だと思うし」


「フレッドさん、年寄りでは役に立たないかもしれんが、我々も行くので大丈夫ですよ」


栄治の言葉で碧華の日本行きは碧華だけではなく栄治や栞や優も参加するようだった。


「皆さんが同行するなら安心だな」


「やったわテリー、じゃあ日本のお城巡りしましょうよ。日本のお城って独特の形をしてるでしょ、中の構造をみてみたいわ」


「そうだね」


テリーも同感の様子だった。


「君たちは、子どもらしく遊園地とか行きたいと思わないのか?」


ビルが聞き返すと


「ファンやリンなら行きたいっていうだろうけど、僕はあまり興味がないかな」

「そうなの?じゃあ、旅行計画色々練り直ししないといけないわね」


碧華が言うと、テマソンも話しの輪に入ってきた。


「ちょっと私も絶対に同行しますからね」


「ええ~テマソンも来るの?こっちで仕事していればいいじゃない!」


「まあ?ひどいこと言うのね」


「だってあなた一応まだリーベンス社の重役に名前を連ねているんだから、何日も会社をほっておくのって良くないんじゃないの」


「あら会社には優秀な社長がいるじゃない、ねえエンリー」


「はい大丈夫ですよ。文句ならライフが言いそうですけど、僕の方は構いませんよ。むしろ、サイン会などの碧華ママの仕事のサポートをしていただける方が安心ですから、日本でもAOKA・SKYはいまだに絶大な人気ですからね。日本といえどもその碧華先生が来るとなれば何が起きても不思議ではありませんから」


「去年アメリカに行った時も熱狂的なファンに囲まれて大変だったじゃない」


「あっあれは・・・」


「ほほほっ、あなたたちはちっとも変わらないわね。みんなで楽しんできなさい。そして私にたくさんお話しを聞かせてね。楽しみにしていますよ」


「はいママン、必ず帰ってきますから、ここは私達のふるさとなんですもの」

「まあ・・・嬉しいこと」


ヴィクトリアはほほ笑みながら全員の顔を見渡した。





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