三角関係
その後チャーリーが日誌を大切そうに胸にしっかり抱きしめて図書館に戻ってくると、まだ捜索を開始してあまり過ぎていないというのに、既に七人の座っている椅子の下にはかなりの本がおろされていた。だが探している場所を特定するようなものが書かれている内容ではないようだった。
三人が図書室に顔を出すと、気が付いた全員が一斉に顔を上げた。
「おや、どうしたんだい?何かみつけたのか?」
声を出したのはビルだった。
「見つけたというより、チャーリー大叔母様がこの城の秘密の部屋の場所などを細かく書いてあったレヴァント家のご先祖様のお一人の日誌を持っているって聞いたので、それを先に見ることになったんです」
「なんだって!そんな日誌があったんですか?」
「そうみたいです。そっちは何か見つかりましたか?」
そう言って栞がビルに近づくと、下に置かれた本や書類には付箋がはられていた。
「あら、その付箋の部分には何が書かれてあったんですか?」
「ああこれは、秘密の部屋ではないんだけどね、100年ぐらい前のレヴァント家の城主が書いた家系図があったのでね興味深いと思ってね付箋をしていたんだよ」
「あら私の所にもあったわよ。これはかなり古そうね200年ぐらい前かしら」
テマソンがそういうと古そうな書物のページを開いてみせた。手書きで書かれたそこには家系図のようなものが書かれているようだった。
「ああ、そういうのでしたらこっちにもありましたよ」
フレッドも自分が読んだ本の一つを拾い上げて開いた。
「すごいわねえ・・・ねえ、これグラニエ城祭にレヴァント家の家系図を作って中央階段の壁のところに貼りださない?このお城の歴代の当主の写真や絵とかあるでしょ。それを真似て似顔絵付きで書いたら見るだけでも楽しそうじゃない。すっごい大きな家系図ができそうでワクワクしちゃうわね」
そう提案したのはなんとここにいるはずのない碧華だった。
「ママ!」
栞が叫んだと同時にテマソンも驚きの声をあげた。
「碧華、あなたどうしてここにいるのよ。新作の構想は終わったの?」
図書室のドアの前に立っていたのは碧華だった。
「どうしてって、退屈になってきたから遊びにきたのよ。もちろん終わっていないわよ。白紙よ白紙」
「なんですって!じゃあこんなところに来ている暇なんてないはずでしょ!まったくあなたはいくつになってもしょうがないわね。たまには余裕を持って仕上げなさいよ」
テマソンの言葉に反論するかのように碧華が舌出して言い返した。
「べえ~!、そんなに文句ばっかり言ってるとしわがまた増えるわよ」
「なんですって!」
「まあまあ、テマソンもそう怒らないでやってくれ、ところで碧華さん、どうやってきたんだい?」
栄治は碧華とテマソンの間に入り仲裁に入った。
「私?会社で息抜きしようと思って一階におりていったら、ちょうど、一階のショップにアマンダさんが花を生けに来ていたのよ。後でグラニエ城に戻るっていうから乗せてもらってきたの。また次の依頼が入ってるって補足の道具を運んだらすぐに出かけていったわ。夕方からも仕事の依頼が入ってるんですって。週末は忙しいって言っていたわ」
「そうなんだ。すごいなあ、アマンダさんは」
「そうよね・・・今じゃお花のスペシャリストだもんね」
テリーは碧華の出現で三人の様子を感心しながら見守っていた。
(いつも思うけど、碧ちゃんとテマおじさんが言い合いを始めたと思ったらすぐに仲裁に入ってすごいよな栄治じいじって、瞬時に言い合いはなくなって話題がすり替わったちゃったよ)
栄治じいじもまた僕の大好きな一人だった。いつもリンに取られているけど、栄治じいじはとても聞き上手なのだ。決して反論なんかしないで、ただ頷いて聞いてくれるのだ。
だけどこの碧ちゃんと栄治じいじとテマおじさんの関係は不思議で仕方なかった。
以前に聞いたことがある。碧ちゃんとテマおじさんは呼び捨てにしているのに、どうして栄治じいじと碧ちゃんはお互いをさん付けで呼び合うのかと、そう聞くと、碧ちゃんと栄治じいじも互いの顔を見あって同じ返事が返ってきた。
「であった頃からそう呼びあっているから今更違う呼び方で呼ぶと変な感じがするんだよ」
その後で碧ちゃんが耳打ちした。
「私すごく気にいっているのよ、栄治さんに碧華さんって呼ばれるとね、もうすっかり顔にはしわまみれのおばあちゃんなのに、20代の自分に戻れるような気がするから気に入ってるの。あっもちろん、碧ちゃんって呼び方も、碧華って呼ばれることも嫌いじゃないのよ。だけど、栄治さんに呼ばれる碧華さんは特別なのよ」
そういった碧ちゃんの笑顔が忘れられずにいた。この二人の関係もまた謎の一つだった。すごく仲がいい夫婦なのだが、べったりというわけではない。どちらかというと、碧ちゃんとテマおじさんの方がべったりのような気がする。よく喧嘩もしているみたいだけど、だけど、栄治じいじと碧ちゃんが喧嘩なんかしたところを見たことがない。なのに、互いのことを良くわかりあっている熟年夫婦って感じなのだ。
テリーが三人を眺めながらそんな事を思っていると、不意に碧華がテリーに話しかけてきた。
「ねえ、テリー、どう見つけられそう秘密の部屋」
「まだわかんないな、でも、チャーリーひいおば様すごいよ。だっていろんな秘密の部屋を知っているんだ。この城もすごいよ、この図書室にもあるんだよ秘密の部屋」
「えっそうなの?みたいわどこどこ」
まるで10代の少女のような反応をする碧華おばあちゃんは僕は大好きだった。
その後、チャーリーひいおば様が日誌を持って図書室に来るまでの間、碧ちゃんに図書室の秘密の部屋の入り方を実践してみせたのは言うまでもなかった。
図書室にいた全員もその後ろに興味深げにのぞき込んでいた。




