05【野生動物】
【20xx年】
政府は深刻なハンター不足による二次被害に頭を抱えていた
ハンター不足により鳥獣達が増加し農作物への被害が増大した
その打開策として新たな法律を政府が発表した
猟銃による狩猟免許取得年齢改正法
今までの取得年齢20歳を大きく下回る16歳に設定したのである
それにより今この瞬間、新たなハンターが生まれようとしていた
「お父さーん!!」
まだ日が登ったばかりの朝にかながけたたましく父を呼んだ
「ねぇー見てよ父さん!」
家の裏庭には、かな専用の畑があるのだが見事に何者かによって荒らされていた
「ありゃりゃ酷いなこりゃ」
「酷いってもんじゃないよ!折角丹誠込めて作った野菜達がー」
「うむ足跡から見ると鹿の仕業だなこりゃ」
「鹿!?おのれ~鹿の奴め許せん!」
因みに北海道での鹿などによる農作物への被害額は50億円とも言われ、年々増加の一途を辿っている
これもやはり増えすぎた鹿などが山から食料を求めた結果なのであろうハンターも少なくなってるしね
「ねぇー父さんこの場合どうしたらいいの?」
「そうだな一般的にはカカシを立てたり音で撃退したり、あとは柵だけど...」
柵は見事に支柱が地面から折れ曲がっていて意味が無くなっている
「やっぱり網の柵は効果が弱いからな、ここは思い切って電気柵にでもしたらどうだ?」
「えっ!?買ってくれるの?」
「自分の畑は自分で対処しなさい」
「ええっ!父さんのケチー」
【電気柵】
簡単に言うと網の代わりにワイヤーなどの電線に電気を流す至ってシンプルな構造だが効果はバツグンである
100mで4~5万程と別に手の届かない値段な訳では無いが高校生にしてみれば痛い出費には違わない
「ケチって、そう言う事はお母さんに相談しなさい
我が桜ヶ丘家の家計はお母さんが握っているからな、それに小遣いが月三万の俺に相談したのが間違えだハハハハハッ!」
「お母さんは買ってくれないからお父さんに相談してるんじゃん」
「無理なものは無理だ、ほらさっさと直さないと学校に遅れるぞ」
「わかったよ、後で母さんに相談するよ」
「わかったならよろしい、ほらそっち持って」
かなはささっとなぎ倒された柵を修復し学校へ向かった
キーンコーンカーンコーン♪
チャイムより少し遅れてかなが教室に飛び込んできた
「ギリギリセーフ!」
「アウトだよ」
「あっ!めぐ先生おはようございます」
「はいおはよう」
可愛く挨拶を済ませ席に着こうとするかなに先生が一言言い放った
「かなー良い物をあげよう」
「えーなになに?げっ!遅刻警告書!」
【遅刻警告書】
ここ陽垂学園で遅刻者に渡される書類である
3枚集めると1日欠席扱いとなり5枚集めると奉仕活動と言うなの強制労働が待っている
因みに強制労働の内容は月により異なり今月は来月に行われる町内清掃への強制参加
チケットが貰える2日間
「はーい席に着いてーHR始めるわよ」
「ううーこれも全て鹿のせいだ」
HRも終わり休み時間
「かなちゃん畑は大丈夫だったの?」
一応ひなには通学前にメールで遅れると言っておいたのであった
「もー最悪だったよ」
「柵はなぎ倒されるし野菜は食べられるし朝から最悪の気分だよほんと」
そんな話をしているとふと話に入ってきたのは一応中学からの知り合いであるクラス委員の神崎はなである
なぜ一応を付けたかと言うと彼女は、かなひなコンビには眩しすぎる存在であるからだ、成績優秀、スポーツ万能
かなひなコンビが陰の者であり神崎はなは陽の者である
それはまさしく太陽と月、かなひなコンビが陰の者である限り一生合わさる事のない存在である
「へぇーそんな事があったんだ、私のおじいちゃんもこの前鹿に畑荒らされたって怒ってたよ」
「ほんと鹿増えたよね、この前もこんな事があったんだよ、、、」
そんなこんなで放課後
「かなちゃんじゃあねー」
かなは今日バイク通学したためひなとは校門で別れた帰路につく
因みにひなのバイク通学はまだ許可が降りていない
かなはのどかな田んぼ道をひた走っている
「んっ!?アレはまさか!」
自宅に近付くにつれ自分の畑に何か蠢く物体が居るのに気付いた
「やっぱり鹿か!コラー!コノヤロー!」
ピッピィー!
クラクションで威嚇しながら畑に向かうが我関せずの鹿達
「クソっ!流石人に慣れているだけあるな、完全に舐めてやがるな」
ようやく鹿も此方を視認したのか一目散に逃げ出したのだが一匹だけその場から動こうとはしない鹿がいた
バイクを降り近付くとそこには朝直したばかりの柵の網に角が絡まり身動きが取れなくなった鹿がフゥーフゥーと荒い息を吐きながら此方を睨み付けてくる
どうにか山にお帰り願おうと近付くも鹿はその場でジタバタと暴れ出し手に負えなかった
だがそれよりも鹿と目が合った瞬間かなはこれ以上近付けなくなった
かなの体が一瞬で危険を察知しこれ以上は踏み込むなと脳が体に信号を送る
いまだに荒い息を立てながら此方を睨み付ける鹿にかなは一瞬たりとも目が離せず
そのまま一歩また一歩と後退して行くので精一杯であった
そしてある一定の距離を離れた所でようやく体がいうことを効いた
「ハァーハァー
こ、怖かった...と、取りあえず父さん電話しないと」
かなの額から汗が流れでる
震える体を落ち着かせ何とか父に電話を掛けた
「と、父さんいまどこ?」
「どうした急に?」
「まだ畑?」
「そうだが?どうした?何かあったのか?」
「う、うん、朝直した柵に鹿が絡まってる」
「そうかわかった、危険だから近付くなよ」
「うん、少し近付いただけで危険ってわかったから大丈夫」
「危ないからそれ以上近付くなよ!わかったか?
1~2時間したら帰るからそれまでは家に居なさい!」
「う、うんわかった」
電話を切ると私は一目散に家の中に逃げ隠れたのであった
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