表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

01【見渡す限りの銀世界】

私の名前は桜ヶ丘かな16歳ピチピチの高校一年生


「ピチピチって魚か何かか?」


父がニヤニヤしながら語りに入ってくる


「ちょっとお父さん、なに勝手に入って来てるのよ!

いまは読者さんに物語の説明してる所なんだから出て行ってよ!」


「お父さんどうしたの?」


「もぉーお母さん!お父さんが邪魔してくるからあっちに連れて行って」


「はいはいわかったわよ、ほらあなた行くわよ」 


母は父を連れて出て行った


「おほん!

ではもう一度最初からご説明をします!」


「時間で~す!」


「えっ!?時間?何それ聞いてないんだけど?

ちょっと待ってよ!まだ何も説明してないんだけど!

てかあなた誰よ?ちょっと押さないでよ画面から見切れちゃうでしょ!ちょっと!あぁー!」


「と言うわけでJKでも狩猟がしたい始まります!!」


「ちょっと勝手に始めないでよ~!」

【20xx年】


政府は深刻なハンター不足による二次被害に頭を抱えていた

ハンター不足により鳥獣達が増加し農作物への被害が増大した

その打開策として新たな法律を政府が発表した

猟銃による狩猟免許取得年齢改正法

今までの取得年齢20歳を大きく下回る16歳に設定したのである

それにより今この瞬間、新たなハンターが生まれようとしていた


【北海道/1月8日/-9.3℃/晴れ時々曇り】


見渡す限りの銀世界、吐く息は白く風が肌を切り裂く様に通り過ぎていく

ただ立っているだけでなのに凍えるほどの寒い場所

そんな中、スコープを覗く女の子がいた

女の子からこぼれる白い煙は口元を覆い隠しマスクに霜として付着している

だが女の子はじっとその時が来るのを待っていた


「ジッ、そっちはどうだ?」


「ピッ、目標補足いつでも撃てるよお父さん」


「ジッ、了解こっちもOKだ、何時も通りでいくぞ」


「すー」

「さー」

「のー」


「「せ!」」


パーン、パーーンパーーーンパーーーーン

銃声が山に響き渡っていく

撃ち出された弾丸は見事に命中し獲物はその瞬間飛び跳ね走り出し数十メートル先で絶命していた


「やったー晩御飯ゲット!お母さん喜ぶね」


「よし、近くの川まで運ぶぞ」


「今日のは二匹とも大きいね、お父さん」


「ああいつもより奥に来て正解だったな」


「でも帰りが大変だね」


「言うな、辛くなる」


【小川】


バシャン!


「ふぅー流石に大きいと内臓処理だけでもこたえるね、お父さん」


内臓は食べられる部分は余す事無く食べる

それが命を仕留め頂く事だとお爺ちゃん達、先輩猟師から教わった事の一つである


「まぁー私も食べられるなら汚く食べられるより綺麗に食べられたいもんね」


「いや食べられたくねぇよ」


食べられない内臓はどうするかと言うと場所や人によって違う

その場で穴を掘り埋める人、袋に入れて持ち帰る人

私達は後者だ、極力狩り場を汚さない

空の薬莢も持ち帰り来た時よりも綺麗にして帰る、山の神様から頂く命を大切にする

これが私達が所属している部署の教えであり先人達からの一つの教えである


「よし二時間程あれば血抜きも出来るだろうから、少し早いが昼飯にするか!」


「やったーご飯♪ご飯♪」


かなが嬉しそうに小走りで父の元へ駆け寄っていった


「塩と味噌どっちがいい?」


「んー究極の選択だね.....塩いややっぱり味噌!」


かなは悩みに悩んだ末に味噌を選択した


「よしちょっと待ってろ」


「みーそ♪みーそ♪」


父は鍋に先ほど仕留めた猪の内臓をいれ煮込み始めた


「よし、じゃあ一回水を交換っと、えーと野菜野菜?」


「はいお父さん」


「おーそれそれありがとう」


父は手際よく鍋に放り込む

この野菜はあらかじめカットしてジップロックしてきた物である

中身はキャベツ、玉ねぎ、もやし、ニンジン、しめじなどごく普通の野菜達だがこれが合わさると究極の美味しさになる


「あとは煮込むだけだな」


グツグツ♪

味噌の香りが周辺に広がる


「うーんいい匂い!」


「よし後はネギとたまごを乗せてと、最後にゴマ油を一回しして完成!

父さん特製狩猟ラーメン!」


「うわーおいしそう」


「「いただきます!!」」


ラーメンの湯気が視界をかなの視界を奪うがそんな事お構い無しに先ずはスープを飲む、食道を通り越し胃袋へ内側から暖めてスープが流し込まれていく

そして次にかなは豪快にどんぶりの底から麺をすくい出し一心不乱にすする

ズルズルルッ!


「ふぅーおいしーい!

やっぱりこの場所で食べるお父さんのラーメンは世界一だよ」


「そうだな家で食べてもこの味は再現出来ないな」


「お父さん今度はお母さんも一緒に食べようね」


「そうだな....」


「どうしたの?お父さん?お母さんが心配?」


「まぁな」


「大丈夫だよ.....だって足を骨折しただけだし」


「それもそうかガハハハ!まぁ美緒は昔からおっちょこちょいの癖にせっかちだったからな」


「まぁー確かにせっかちだね」


「美緒と初めて会った時もあいつ階段から落ちてきて俺に体当たりプレスかましてきたんだぜ」


「えーうそー」


「ほんとほんと、それから事あるごとに怪我しててな、こいつを守ってやらないといつか本当に死んでしまうんじゃないかと思ったんだよ」


「へえー初めて聞いた」


「まぁー別に話するような事でもないからな」


「ううん、そんな事無いよもっと聞いてみたい」


ピピピピピ!

父の腕時計が鳴った


「おっ!もうこんな時間か獲物を引き上げて帰るか」


「帰ったら話の続き聞かせてね」


「母さんに聞きなさい」


「ええーなんでー?」


こうして私達はラーメンで暖まり獲物を引きずり極寒の狩り場から帰宅したのであった


【自宅】


「ただいま」


扉を開けると一目散に黒い陰が私を襲う


「グヘッ!

ちょっとモモ!突進は危ないから止めてって言ってるでしょ?もぉー!」


「わふ?」


「やはり確信犯か!」


この子はモモ、シベリアンハスキー4歳らしい

私が中学生の時に拾ってきた元捨て子ならぬ捨て犬

家族は元々動物好きなので誰一人嫌がる事も無く家族の一員となった

名前は私が命名、この子が入っていた段ボールに果物の桃が描かれていたのでそれをカタカナにしてモモと名付けた、少し安直過ぎたかな?

まぁー本人も私も気に入っているからいいかな?

それと家にはあと猫が1匹いる名はカンナ、メインクーンと言う大型の猫だ

カンナは6年前にお父さんが仕事場の同僚から貰い受けてきた

最初はあんなにも小さかったのにすくすくと育ち、今では中型犬ほどの大きさに成長しいる


「お母さん、ただいまー!」


「あらお帰りなさい、どうだったの?」


私はピースサインで応えた


「私も早く猟に行きたいわ」


「もぉーお母さん、怪我が治って無いんだから無理言わないの」


「はーい」


「じゃあ部屋に行ってるね」


【部屋】


扉の前には小学生の修学旅行の時に作ったプレートが掛けられている

部屋の中は八畳のフローリングにクローゼット、女の子らしいカラフルな配色の部屋だ

しかしクローゼットの端にはこの女の子らしい部屋には似つかわしくない黒色に輝くガンロッカーが鎮座している


【ガンロッカー】

アンカーなどで床に固定し動かなくした、銃を保管する為のロッカーこれがないと自宅での保管が出来ない


「あれ?カンナここにいたの?」


眠そうな顔でこちらを見つめるカンナがいた


「ナァーー」


私はカンナの体を優しく撫で回した


「よし、銃の掃除はあとあと銃と弾をしまってと」


「かなーやるぞー」


「はーい」


私は銃と弾をしまい家の隣にある倉庫へと急いだ


【倉庫】

ここは捕ってきた獲物を保管、加工する簡易的な造りの倉庫

私はまだ小さかったからあまり覚えていないが、何でもお爺ちゃんが退職金で建てたらしい

しかしよく婆ちゃんが怒らなかったと思う


「お父さんお待たせ」


私はエプロン姿に着替えた

長靴、防水エプロン、肘まである手袋、コーグル、マスク、頭巾

ここまでしてる人は少ないがお爺ちゃんの教えだから疑問に思わない


「準備出来たか?」


「うん」


「皮剥からいくぞ」


今回の獲物は丸まると太った蝦夷猪(えぞしし)である

猪は北海道にいねぇーよ!とツッコミがあると思うがこれはフィクションであるゆえ何でもありだ


まずは80℃程のお湯を猪にかける、そうすると毛穴が開きすくう用に取ると綺麗に毛が取れる


かな「ふう完了」


毛を取るとそこには淡いピンク色の皮膚が現れる、ここまで来ると猪じゃなくて豚だ


「次は皮剥ぎだな油で滑るから気を付けるんだぞ」


「うん」


「そうそう上手い上手い」


黙々と作業


「皮剥ぎ終わったよ」


「次は頭を落とすぞ、重いから気をつけろ」


「うん」


父が手際良く頭を落とす


「じゃあ、股を開くからここの関節に斧を入れろ」


「うん」


ガンガン!


「よし、両手で後ろ足を力一杯開け」


ググググッ!!パキッ!


「綺麗に開いたな、じゃあ前足側も同様に」


バギッ!

猪は大の字に開いた


「ねぇーお父さん、私ベーコン作りたい」


「おーベーコンかいいな、でもかなに作れるか?結構大変だぞ?」


「作れるよ、最近お母さんにも料理教わってるし」


「そうか、なら頑張りなさい」


「やった~♪」


あばら骨を少し大きめに肉が付く感じで削ぎ取る


「おっ!お父さん分かってるね!」


「ここを塩コショウで食うと旨いだよ!」


「ええーっソースだよ!」


「塩コショウ!」


「ソース!」


「ハハハッ!わかったわかった、半分はソース半分塩コショウな」


「やった!」


父はバラ、ロースなど各部位ごとに切り分けていく

それを私が真空パックに詰めていく


「ふぅー終了!」


「お父さんお疲れ」


「かなもお疲れさん」


「何時もの倍位あるね」


「だな今度ひなちゃんに持って行ってあげな」


ひなは赤ん坊の頃からの幼なじみだ、少し天然だけど元気一杯の優しい子だ


「ありがとー」


「もうこんな時間か、かな後片付けはしておくから、肉持って母さんの手伝いに行ってきてくれ」


「わかったーあとよろしくねお父さん」


【台所】


「お母さんお肉持ってきたよ」


「美味しそうなスペアリブね、さっそく焼いて出しましょう」


私はお母さんと二人で晩御飯の支度を始めた


ガラガラ


お爺ちゃんとお婆ちゃんが寄合から帰ってきた


「ただいま」


「おかえりー今日はスペアリブだよ」


「ほぉーこりゃー立派だ」


「でしょ私が仕留めたんだよ」


「そうかそうか」


お爺ちゃんは嬉しそうにニコニコと私の頭を撫でてくれた

こう見えてお爺ちゃんはこの町の猟友会会長でお父さんと私の師匠でもある

一度山に入れば山を駆け抜ける速さは人間など比で無くまるで獣だ

普段体力では私に負けるのに山の中は別物である、まさに仙人だ

昔どうしてそんなに早く歩けるのか?と聞いたことがあるが山に入ればどこをどう通ればよいかの線が見えるらしい

何それ卑怯じゃん!っと言ったらお爺ちゃんは笑いながらこればかしは慣れるしか無いと言われた

そんな私も山に入るようになってから多少は線の意味が分かってきたけどやっぱりお爺ちゃんにはまだまだ到底敵わない


ガチャ!


「ふぅーさぶさぶ!」


お父さんが倉庫から戻って来たのでみんなで食卓を囲み楽しい夕食が始まったのであった

感想&ブックマークも気軽にお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ