γ2
γ→γ2
放出した鼻水は口元へ移動した。
僅かに侵入した鼻水は変な味がした。
「おやおや」
「うん 異常なさそうだね」
挨拶してきた男はそう言って顔を覗き込む。
左右の目を確認している様はぼんやりながらも確認できた。
近所では見ないコントラストの顔だ。
金色の髯が首もとで揺れてくすぐったい。
動いている目は薄い青空のような色だ。
「あとは頼むよ」
男はそう言って去っていき、後には絆創膏の臭いがした。
物腰柔らかで白い服にこの臭いは病院なのだろうか。
そう思いできる限り見回す。
壁が白かったり大きなガラスらしいのが眼下に見える。
広くはない。左に開閉がうるさいドアがある。
上は固定されている角度が悪く天井しか見えない。
この状況を除き今のところ何もおかしいところはないようだ。
観察してると直ちに意識が遠退くのだった。
気付けば揺られていた。
それになんだか騒がしい。
「おい!おい!ったっく・・おい!」
聞き慣れぬ声が聞こえる。
その感じからは怒ってる感じではない。
何か抑えて喋ってるような声を張る感じではない喋り方だ。
目を開ける。
囚人確認のための窓のように長方形の窓があり覗き込む。
月のない真夜中に起きたような暗さだ。
その覗き窓からは動いているものは何も見えない。
しかし声が聞こえた。
「おお!ここだ!おい!おーい!」
ぼんやりとした黒い何かが動いてる。
「聞いてるか?!ヤバいぞ!ギャングがいる!」
どうやら手足は自由だが全身何かに埋まっている。
ギャングどころではない。
うるさいし動けないし腹減ったし。
最悪のタイミングで起きたらしい。
そう思ってると
「ここにいたら何されるかわかんねぇ」
そうボソッというと音と共に黒い何かが揺れだした。
暗いが確認した何かはなんだか樽っぽい丸さ。
(じゃあ今樽の中にいるのかもな・・)
黒い人側では無いような雰囲気の声だと
勘でそう思うと何に埋まってるのか確認することにした。
その音には聞きなれた音が含まれていたからだ。
その音の元を口に含む。
知っている硬さだ。しばらく噛むと中が柔らかくなった。
間違いない。小麦だ。
それを確認して一先ず周囲の小麦を食べることにした。
皮は苦いし邪魔だが選り分けて器用に食べてる場合ではなさそうだ。
(挟まる)
そう不満を覚えつつ動く樽を見る。
どうやら先っちょだけ出た樽は前に一つだけらしい。
さっきより少しだけ明るくなりそう見える。
病院のような場所で付けられた枷のような痛さはない。
それだけでも今の状況は安心できる。
そう思っていると物音がする。
徐々に光が差し込むのが分かった。
光の方向へ注視しようとすると前の樽もおとなしくなった。
どうやら天井が開いたようだ。
それでもまだ薄暗くライトなどの光も感じられない。
自然の薄暗さと気づいたのは僅かに風を感じたからだろう。
天井が開いて作る光彩は人の気配もよこす。
静かな足音は金属のリズムを響かせる。
誰か来た。
この状況に関わる人物であることを確信させる静けさと影だった。
そして喉が渇いた。




