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γ6

γ6


 もう一度宣言する。



 逃げないと。



 高尚な話ではない。



 単純にここから逃げないという意味だ。



 そういう決意をしたオナラだ。



 無臭だった。



 そうだろう。



 しっかり小麦に濾過された空気はただただ暖かい。




 忘れ去られていたNo1だがどうもおとなしい。



 ちらっと見てみると肘が出ている。



 肘毛は見れそうにない。



 諦めたとは思えないがどうしたのだろうか。



 「う……」



 うめき声のようだ。



 なるほど。



 考えるまでもない。



 小麦を食べ過ぎたんだろう。



 多分膨張して色々と圧迫してるんだろう。



 かわいそー。



 実際にそんなことあるんだー。





 放っておくにはあまりにかわいそうだが仕方ない。



 「あ"ーーーーーーーーーーーー」



 と叫んだ。



 しばらくすると車が止まった。



 にわかに明るくなるのがわかる。



 荷台の扉が開いたようだ。



 後すぐに揺れ動く光が確認できた。



 ライトを持ってきたのだろう。



 運び出したときより足音は激しい。



 (あ、呼んだは良いけど言葉通じないや)



 「おい、こいつ!」



 「あ? どうした?」



 すぐ隣で樽の異変に驚いている様子をのぞき見る高音声の灰服をのぞき見るおれ。



 「おい、おい! 見ろこれ!」



 何を言ってるか分からないが声が大きい。



 周りに気を使わないような場所なのだろうか。



 「壊したのか!? 裸だったんだろ?」



 普通音声の灰服が疑問符のような音程で喋っている気がした。



 No1の樽は回転させられこちらからは覗けなくなった。



 「知らねーよ。ダイジョブダイジョブ じゃねーよマジで!」



 「ははっ。 似てんな」



 気楽に笑ってますな。肘毛でも見つけたのだろうか。



 「なんかうめいてんな」



 「んー顔色がわるいか?」



 「だな。どうする?」



   ボカーバキバキッ



 話を遮るように破壊音が聞こえた。



 No1が目の前で完全破壊を試みた。



 おれは瞬時に考えた。



 (あ、逃げれるかもしれない)



 「ウォアッ!?」



 「おぉっと」



 辺りに緊張が走る。





 その後言葉もなく盛大に物音が続いたあとマラカスを奏でた。



 後頭部が覗いて見える。



 No1はノックダウンしたようだ。



 (なんだろうこの感じ)



 (そっかこいつ面白いやつだったのか) 



 かわいそうだと思ってたけど間抜けなんだ。



 愛すべき間抜け。それがNo1なんだ。



 「さっすがー」



 「あれ持ってきて」



 「ああ」





 こうして逃げる計画は駄目になった。



 逃げるための手段はなかなかよかった。



 普通に樽を破壊して思い切り扉に体当たりでもすれば怪我は免れない。



 安全に逃げるには怪我はあとを引く。



 だから開けさせて追っ手を打ちのめして悠々と逃げるという策は良い。 



 腹痛が本当じゃないならそういう逃げ方は正解かもしれない。



 でも腹痛が本当で、おれが叫んだのが偶然で、樽を破壊したタイミングが腹痛を我慢できなかったタイミングだとすると……


 

 笑うしかない。



 最善の脱出策と最高のやけ糞ショーが交錯したのが妙におかしかった。



 あたりは当然のように臭いだした。

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