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γ4

γ4


 動悸を起こした原因は何か。



 緊張だろう。



 普段アドレナリンの影響は緩やかだ。



 緊張は直ちに心臓を震わす。



 心音が高まっていくのが感じ取れる。



 (予感してるのか)



 心臓は本番へ向けて準備をした。



 おれの意識に反して。



 根源的な予感を感じとる本能が。



 覚悟を決めなければ。




 マラカスNo1は樽に空けた穴から手を出す。



 腕毛は無い。指毛はある。



 いやそんなことはどうでもいい。



 「それで協力は何を?」



 自力で逃げ出せそうなのに何故協力が必要なのだろうか。



 そういう疑問を投げ掛けた。



 「逃げるためだ」



 端的で本質が見えない。



 短い答えの中に想定される最悪のパターン。



 それは囮にされることだ。



 「ああ、協力してもらうのは逃げるため ってことだ」



 やはり誰が逃げるためという点は明らかになっていない。



 囮にされる可能性は残る。むしろ強まった。



 「そんで、協力した方が逃げれられる確率は上がるだろ」



 (おかしい)



 移動中だから車から飛び降りたら車は止まる。



 連行人は連れ戻すため探したり追いかけたりするだろう。



 目の前で逃げるより逃げる時間は稼げるだろう。



 捕まったとしても連行人の人数を逃げる時間分割くことができる。



 (割いたら・・なるほど)



 「説明が下手だな わかった」



 「わかったの? ほぁーじゃこれでお前も穴空けとけ」



 話で中断してた穴から出た腕の行方だが、こちらにやって来た。



 看守窓の目の前まで来た指に挟まれたものを受けとる。



 手触りは親指が痛くて人差し指が硬い。



 蓋っぽい。



 裸であることを考えると虫歯防衛に使われてたものだろう。



 (はーそういうことか)



 そう思うと樽を刻む。



 車の出す騒音にかき消されてその音は聞こえない。



 誘拐使われた車と違い防音は甘い。



 No1はどうやら全体に傷を入れていたらしく



 切り込みから慎重に破壊している。



 例えるなら切り目を入れた紙を引き裂くように



 樽を上下に分断しようとしている。



 おれが眠ってる間にそんな下準備までしてたとは驚きだ。



 意外としっかりしている。



 しかしその準備を今から真似しても時間が掛かってしまう。



 最低限の穴を開けて破壊の助けにするしかないだろう。



 「勘違いがないように言っとくが俺は助けないからな」



 「……ああ」



 既に金属を渡して助けてくれている。



 助けに戻ってくることはないということらしい。



 薄情な奴だろうなとは思ってたが実際に言われると落ち着いた。



 昔から人間を粗末にする環境で育ったおれにはその冷たさは慣れたもので



 父の行う無関係という教育方針が変に役に立った。



 No1との関わりはここまでで名前など覚える必要はない



 そう考えるに至った。



 関わりが全くないなら実の親だろうと他人の方が親だと思える。



 親に何か期待しても全く何もなかった。



 親に抱く感情は次第になくなりあかの他人がいる感覚に落ち着いたのだ。



 No1はそういう意味で落ち着く対象となった。



 元々ちょっとやそっとじゃ親密にはなれないしこんな状況に日常を届けてくれただけでも感謝しよう。



 そう思うと現状について考え直すことにした。




 No1は確実に逃げ出すだろう。



 脱出の成否はその後捕まるか捕まらないかで決まる。



 ギャングが相手なら捕まれば手痛いお仕置きがあるだろう。



 密輸状態の今、目的地に送り届けるまでは少なくとも直ちに殺されはしない。



 捕まらなかったらここで生きるか祖国まで密入国しなければならない。



 裸からそこまでするにはまず隠れて様々なものを盗む必要がある。



 その間もギャングから逃げなければならず難易度が高い。



 ならばギャングから逃げるために警察を頼るとしたらどうか。



 暗い中運ばれていることから表立ってできない行為であることは明白だ。



 しかしここまでスムーズに移動できていることから税関などと繋がっている可能性が高い。



 警察も繋がってる可能性は排除できないだろう。



 そもそもおれの国は臓器売買では犯罪者を斡旋すらしていた。



 (完全に逃げれる道はあるのか……)



 そう思うと焦燥してきた。



 (よし 決めた)



 歯に詰まった皮が取れた。

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