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村っぽいところ編 その2


「君、とても旅行には見えないけれどなぁ…」


 その村長が目の前にいる。縁側の前に私は立っている。一斉に村人たちが私の方を向いている。威圧感がすごいってさっき言ったっけ?背中でも分かるもんだぜ。村長の言うことはもっともで、私は何も持っちゃいない。頭にヘアピンはぶっ刺してるけど。あああとスマホも持ってたわ。


「あーテント張ってるんですよー。あっちの方」


 適当に指を指す。森の中ならオッケーだろということで、ここの村に来て最初に横切った森に指した。つまり後方。すると村人がざわざわした。あっなんかしくったかも?


「…あそこは()()だよ」


()()()()?」


「名前の通り、谷だよ。周りは木に囲まれてて見えないけれど、中は切り立った崖のようになっているんだ」


 ちょっとイメージ湧かない。


「えーと…」


 私の頭上に浮かぶクエスチョンマークに気づいてくれたようで、


「バウムクーヘンみたいな感じ…じゃないかな」


 と答えてくれた。

 ジジイは洋菓子の名前なんか知らないと思っていたから驚きだ。


(ミソラのひねくれ具合にも驚きです…)


 はんぺんが口答えしたので、足で踏みつける。ぷぎ、と変な声を出した。

 そうか、あそこは崖だったのか。森の中に一瞬見えた金網は、落下防止のフェンスといった所か。


「あぁ…フェンスのすぐ横に張ってるんですよ。道路がちょっと近いですけどね」


 これは自分の目で見ているのだから間違いない。あの金網がフェンスだとすると、道路から谷まではさほど離れていないだろう。


「そうかい、谷に落ちないよう気を付けるんだよ」


 なんと優しいジジイであろうか。もはやジジイと呼ぶのが申し訳なくなってきた。

 さて…ぐだぐだしていても仕方がない。単刀直入という奴だ。今日の私は姿が若いからかなんだか自信に溢れている、気がする。


「あの、さっきの()()()っていうのは…」


 村長はすこし苦笑いをした。


「うーんとね、特殊な言い方なんだけれど…自分の意思でいなくなった、ってことかな」


「えーと…家出、ですか?」


「ニュアンスとしては、そんな感じかなぁ」


 このおじさま(ランクアップした)、横文字も使えるらしい。


「学生さんですか?」


「うん。まだ中学生の女の子だよ」


「鎌田さん、うちらは帰ってもええですか?」


 さすがに、村人たちも帰りたいらしい。


「分かった。じゃあ、今日は解散ということで」


 ・


 その後も、村長(本当に村長だった)から詳細な話を訊いた。誰が殺されたのかも分かんないなら、とりあえず目の前のことに首突っ込むしかないっしょ。

 

 行方不明になったのは、岬ミキ。韻を踏んでるのかなぁこれは。まあそこには突っ込まないということで。

 中学二年生。この村、べべれけ村のべべれけ中学校の生徒だ。…名前に突っ込みたいよなぁ。私もそうだ。べべれけ村って嘘だろ普通に。でもGPS使ったらホントにそうだったわ。ちなみに東日本な。

 いなくなったのが発覚したのは、今朝の7時。岬ミキの父親が部屋に起こしに行ったところ、消えていたらしい。携帯、財布と共にハンドバッグを持ち出していたようで、家出だと予想される、とのことだ。また、岬ミキの父親はミキが風呂から出て部屋へ向かうところまでは見ている。

 つまり、出ていったのは真夜中から今朝…それもまあまあ早くまでのようだ。父親談によると、うちの子が家出するとは考えにくいらしい。まあ知らんけど。

 よくもまあこんなに教えてくれたなぁと思ったけど、なんか私がかわいいからだろうたぶん。いやマジで。

 そいで私は、岬ミキの学校の友達に話を訊くことにした。なんでも、毎日学校に集まって遊んでるらしい。全校生徒5人だってよ驚きだろ?


 ・


 昼の2時をまわった。私は今、コンクリートの校舎の前にいる。これはもはや校門の意味をなしていないんじゃないかくらいのボロボロの錆びた校門(開いていた)を横切って、敷地に入る。

 この学校、ちっちぇわ。私の居たところの1/5くらいだわ。U字型の校舎の真ん中に入り口がある。ガラスの開き戸。グラウンドはその後方にあるようで、突き抜けになっている表の開き戸からちょっとだけ見える。つまり同じような入り口が2つあるってことだ。こっち側と、グラウンド側。覗いてみるが、人がいない。グラウンドで遊んでいるわけじゃないようだ。


「これって…入っていいのかなぁ…?」


「別にいいです。田舎の学校なんて夏休み中はフルオープンです」


「はんぺんの癖に分かったような口を…」


「さ、いくですよ」


「え、この格好で?」


「きっとモテモテですよ、中学生には」 


「おっしゃいったろ」


 開き戸から中へ入る。右手にある階段を昇っていく。二階に着くと、左の方から笑い声が聴こえた。間違いない。何かしてるに違いねぇそうに違いねぇ。

 そこで私はおしとやかなウォーキングに切り替えた。もはやどこに体重を掛ければいいんだ的なウォーキングだ。深窓の令嬢の実力を見せてやろう。


「それは…もはや忍者です~」


「じゃあやめよ…」


「どなたですか~?」


 やばい、気付いたら教室の横にまで来ていた。観念して教室に突っ込む。


「あ、こ、こんにちは~」


「こ、こんにちは…」


 教室にいた人数は4人。女子3、男子1。ちょっと…引かれてる?

 

「私、ミソラっていいます。夏休みに旅行に来たんです」


「あ、なるほど…私はカナです、よろしくお願いします」


 ペコり、と少女が頭を下げる。しっかりした女の子っぽい。かわいい。


「私はテルです、よろしくお願いしますっ」


 にこっ、と笑う。あーかわいいわ。現役女子中学生はかわいい。あざといし。かわいい。それに名前も珍しいなぁ。名前負けしない可愛さである。


「私はフミカですっよろしく!」


 おう体育会系である。笑顔がまぶしい。かわいい。


「俺はテツヤです、どうぞよろしく!」


 爽やかでいい少年である。それにしても役得だね君は…。


 以上4名。美男美女揃いである。…いやおかしいだろ?もっとイモっぽいやつが一人二人いるだろうがよ。べべれけ村だぞ?正気じゃないよ。


「都会の方から、旅行ですか?」


 カナ。もう呼び捨てにしてるわ。コミュ力高し!


「うーん、まあね…」


「テツヤくん。ミソラさんがかわいいからって手を出しちゃダメ、だよ?」


 いやーテルは可愛いなぁ。ほんとかわいい。あざとい。もう大学生はおばさんだかんな…マジで!


「そ、そんなことしねぇよ!」


「うっそだー!」


 フミカもテツヤも爽やかである。心が綺麗になりそうだ。

 …まあ本題に入ろうか。


「岬ミキちゃんについて、話を訊きたいんだけれど…」


「ミキ、まだ帰ってきてないんですか?」


 真っ先に心配した声を上げたのはカナ。もしかしてこの子達のリーダーなのかな?カナだけに…


「うん、そうみたいんだけど…なにか知らない?」


「いや、なにも…みんなは?」


「知らないな…」

「私も…」


「テルは?」


「昨日、だよね?」


「なにか知ってるの?」


「ううん。昨日はミキちゃん、何してたかな…って、振り返ってた」


「…」


 テルは、何かを知っているのか?


「昨日も、今日みたいにみんなで遊んでたよね」


「ああ。確かテーブルトーク…なんちゃらってやつだったよな」


 テーブルトークなんちゃら…喋りながらする麻雀か?


「フミカ、強かったね。真っ先に謎が分かっちゃうんだもん」


「だって、分かっちゃったもん!」


「うーわ、なんか面白そうだなそれ」


 うーわ、なんか面白そうだなそれ…。本音と建前が一致した。


「昨日は珍しく、中で遊んだよな」


「うん。昨日は雨だったからね…」


()()()、大丈夫かな?」


 お部屋?雨で崩れるお部屋?泥ハウスか?


「そのお部屋って、なんのこと?」


「えー、どうしよっかなー」


 テルが勿体ぶる。


「いいじゃん、お姉さんに教えてよ」


「そんなに年離れてるかな…俺たちと」


 ついシニアの余裕が。


「じゃあさ!ゲームで勝ったら教えてあげる!」


 フミカがバシッと言い切った。バシッって効果音がホントに付きそうな感じ。


「オッケーいいよ!」


(なにしてるです!無駄足です!)


「いや…いいじゃん別に…私は夏休み潰してんだぜ?ええ?」


(むむむ…事件から時間が経つにつれて分からなくなるですよ!こういうのは!)


「…さっきの話、聞いてたろ?テルは何か知ってるよ、確実に」


(それは…)


「とりあえず、埋められる外堀は埋める…ってな…へへ…」


(絶対楽しんでるです…)


「さ!何すんの?」


「えっとね…人生すごろく!!」


「じ、人生すごろく…?」


(ああ、脱線です…)

―――――

 人生●●●だと商標登録に引っ掛かるのです…(謎のプライド)

 脱線です!脱線です!ーーーーはんぺん、辞世の詞

 

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