狐に包まれる〜春〜
「ただいまあ〜」
「お帰りなさい!」
帰宅すると、妻の雪狐が尻尾を、わさわさと振って出迎えてきた。
「今日は、稲荷町の稲荷神社から安産のお守りが届いたんですよぉ~♪」
僕は、出迎えた幼妻の差し出した「お守り」を見た。
なんだか、スマホのストラップのようだ。
水干姿の狐の耳と尻尾(九本の尻尾)を持った、人間のような・・・
ありていにいうと、「狐の神様」の像というかフィギュアをチェーンでぶら下げられるようになっている。
「このお方は~・・・
稲荷神社のご本尊のご先祖で、街をつくった「秋」って神様です。」
「・・・でもコレ・・・」
すごい造形だ。
「今の次期お社様がですね。
フィギュアとプラモデルがお好きで、こうやって金属鋳造をやっておられるんです。
私が、旦那様の子を妊娠したら、「お祝いに」って。」
「へッ!?」
雪狐は、こう見えて十八である。
「に・・・妊娠!?」
「はい♪」
確かに、することはしていたが・・・
「でもコレ・・・」
純金だ・・・
「お金に困っても売らないでくださいね。
安産の加護や円満の加護だけでなく、金運の加護もありますから。」
僕は、冷や汗をかいた。
「ってことは、そんなことをしたら祟られる?」
「ですねえ・・・」
しかしだ・・・
「じゃあ、月に一度はコンビニのスクラッチくじでも何口か買うか!」
言うと僕は、妻を抱きしめた。