くりぃむのオールナイトみんな好きだよね!
季節は春。優しい風が美少女の髪の毛をさらっていく季節。まったりとした時間が流れ、ついつい昼寝をしてしまう季節だ。ちなみに俺が一番好きな季節でもある。
また、春は出会いの季節なんて言われる。だが実際こんな俺に新しい出会いなどはなく、話す相手は両親か妹のみだ。昔は可愛げがあった妹。どこへ行くにしてもお兄ちゃん!私も行く!なんて言って離してくれなかった妹。今は俺と話してくれない妹になってしまった。
その原因はどこにあるかって?みんなは俺がニートだからだと思ってることだろう。だが、そんな簡単な理由ではないのだ。この話遡れば二週間前の朝。入学式を終えたばかりの妹を快く出迎えてやろうと思ってたのだが、肝心のその妹が全然家に帰ってこない。妹は別段遊び人気質というわけではなく、どちらかというと俺と同じくまったりとした時間を楽しむようなやつだ。そんなに積極的な性格ではないが、顔が良い分周りにいろいろと囲まれているのだろうかなどと考えていた。
そんな風に考えて2時間が経った。がちゃりとドアが開き妹が帰ってきた。ただいまーと言ってはいるがその表情は怒りに満ちていた。
「どうした?なにがあった?」甲斐甲斐しく俺が妹に聞くと
「私、もう高校行かないから」と一言残して妹は部屋に閉じこもってしまった。
俺の優しさを無駄にしやがって、俺が一体どれだけの時間お前を待ってたと思ってんだ?ニートだからって無限に時間があると思うなよ!あるけど!別に暇だけど!
そうは言いつつもさすがに心配になったので、再び話を聞くために部屋をノックした。
「なあ!入学式で何があったんだよ!話聞かせてくれよ!お兄ちゃん心配だよ!」
「うるさい!お兄ちゃんとかいうな気持ち悪い。ただイラついてるだけ、兄貴には関係ないでしょ」
「何言ってんだ!関係大有りだ!お前までニートになったら俺が働かなくちゃいけなくなるだろ!」
「なに?私のことなんてどうでもいいんでしょ?うるさいから話しかけないで」
ピシャリ。このオノマトペがここまで当てはまることなんてないのではないかというくらい話を切られてしまった。この会話以来2週間の間妹と俺は会話をしていない。それどころか顔を合わせもしなくなってしまった。両親も同じようで妹になにがあったのか心配していた。良い加減このまま放っておくわけにもいかないので、今一度妹の部屋をノックした。
「あのさ。少し話があるんだけど」
「・・・」しかし、妹から返事はない
「お前のブラ今つけてるんだけど、自信持てよ!これからまだまだ大きくなるさ!」
「・・・」妹をバカにしつつ応援してみてもまだまだ妹からの返事はない
「妹よ。お兄ちゃんは心配しています。なにがあったか教えてください。埼玉県ニート満喫中の兄より」
「はがき投稿してこいよ・・・」おお!ちょっと返事があった!
「お前風呂入ってないから体臭いだろ?お兄ちゃんといっしょにはいろうぜ!」
「・・・」また返事がなくなってしまった。仕方なく真剣に妹に話しかける。真剣な話ってちょっと恥ずかしいよね?
「なあ、本当になにがあったんだよ。さっきまでの話もどうでもよくて、この前言った、俺が働かなくちゃとかも実際どうでも良くて、本当はお前が心配なだけなんだよ、少しでもいいから話を聞かせてもらうわけにはいかないか?」
本心だ。実際実の妹のことが心配でない兄貴などこの世にいるのだろうか。俺が働く未来なんて想像はできないけれど、妹がこのまま悩み続けているのなんて見たくはないのだ。
「オールナイトの上田晋也かよ・・・・」
ボソッと何か言っていたがうまくは聞き取れなかった。そして、ガチャっと鍵が開く音が聞こえ
「入っていいよ・・・」
という声が聞こえた。妹の部屋に入るのなんて何年ぶりだろう。と考えながら部屋に入る。
「入るぞ」ほとんど意味のないその言葉は女子高生の部屋がどのようなものなのか全く想像できない恐れからか、悩んでいるであろう妹への最大限の配慮だった。
「そこ、座っていいよ」
妹が指差す先にはこれまた可愛らしいピンクのふわふわもふもふのクッションが置いてあった。
「ケツで踏んでいいのか?」
「別に気にしないし、いいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
よっこらせっくすとクッションに腰掛ける。そして、じっとりねっとりと妹の部屋を舐め回すように見る。これは別に女子高生の部屋が気になるとかそういうわけじゃなくて、ほらあれだ!動物でも自分が今いる環境を真っ先に把握しようとするだろ!それといっしょで、俺も新たな環境に適応するために仕方なくで観察してるんだぞ!
「あんまじろじろ見ないでよ、変態」
妹に変態呼ばわりされてしまった。なんでだろう。なんか嬉しい。なんてことは置いておいて、読者諸君にも妹の部屋を紹介してやろう。妹の部屋はいって仕舞えば超シンプル。ベッドと小学生の時に買った学習机がほぼ面積を取っており、そのほかにはテレビとゲームくらいしかおいていない。本当に女子高生の部屋かこれ?なるほどなるほどと唸っているとベッドの上に大きな人形がおいてあることに気づいた。
それは昔俺がUFOキャッチャーでとってあげた人形である。
「あの人形まだ持ってたんだな。」
「なに?あたしが大切にしてたらおかしいっての?」
「いや、そんなことはないぞ!ただ嬉しくてな。」
「なら、いいけど。」そういうと妹はうんっと一呼吸置き、入学式でなにが起こったのかを語り始めた。