EX.3
ファースト√のアフターストーリーです。未読の方はぜひそちらから読んでください。
「……」
「何見てるの?」
「んー別に」
晩ごはんとお風呂を済ませて、ようやくゆっくり出来る時間になっても、最近の百合はずっと本を読んでいる。
「小説?」
「そ」
ブックカバーがかかっているから、タイトルとか著者名とかは分からない。
「どういう内容?」
「うーん」
明らかな生返事。その証拠に、百合の目は本から一度も離れていない。
「面白いんだ、それ」
百合の肩によりかかるようにして本を覗き込もうとしてみる。
「……」
百合は何も言わずに本を自分の顔の方に近づけて、私に見えないようにした。いつもだったら暑いとか重いとか言ってくるのに。
「はぁ」
邪魔したら悪いって分かってるけど、最近百合は私のことを放って置きすぎだと思う。
「……」
真剣な、というよりは無表情って表現したほうがいいような顔で百合は本を読んでいる。
周りが見えなくなるほど面白いんだったら、もっと表情に出ると思うけど、ずっとさっきの調子だし。
「百合〜そろそろ遅いよ」
「うん」
「……もう!」
そっと本を取り上げると、百合は驚いたように瞬きをした。
「そろそろ終わりにしたら?」
「……うん」
「どうしたの?」
ベッドに並んで横になったときに、不意に百合が聞いてきた。
「何が?」
「さっきから機嫌悪そうだから」
寝返りをうって、百合の方に身体を向ける。
「機嫌は悪くないよ。ただ……」
「ただ?」
「気になるの、急に本を読みだしたと思ったらずっとそればっかりでしょ」
「……そうかな?」
「そうだよ、何か変だもん」
「何か難しいから、集中して読まないとあれだし」
「ふーん」
納得できてはないけど、納得したようなふりをしてみると、百合は不思議そうな顔をした。
「……怒ってる?」
「ううん」
「じゃあ、何?」
相変わらずにぶいくせに、本気で拗ねたくなる前にだいたいは気づいてくるところがずるい。
「じゃあ、もし私が怒ってるって思うんだったら、百合はどうしたらいいと思う?」
甘えたような声を作って、百合をじっと見つめてみる。
「……」
百合の言葉を待っている今の私、きっとすごく物欲しそうな顔してる。
「理由が分からないと謝るにも謝りようがないっていうか……」
「へー、謝ればいいと思ってるんだー」
「……教えてくれないと分からない」
困ったように眉を寄せる百合を見てたら、なんかいじわるしてるみたいな気分になってきたし、今日は許してあげることにした。
「……ぎゅっとして、今日はそれで許してあげる」
「……ごめん」
「謝らなくていいの……でも、もっと私のこと大事にしてよね」
私の胸に顔を埋める百合はなんか子供みたいで、とっても愛おしく思える。




