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A国から逃げ隊  作者: 瓜
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私は貴方といきたいの

今回は短い上に、内容が薄いです。

あと、比喩がくどいです。

 ゾンビ達となるべく戦闘しないよう、気をつけながら1階へと向かう。

 存外あっさりと辿り着いた昇降口から、私達は、二人並んで校外へ出た。


 外は、皮肉な程晴れていて、明るかった。

 苦々しい気持ちで見上げる、底が見えない位に高い青空に、燦々と照り輝く太陽と、甘くて穏やかな入道雲が置かれている。

 名画にでも描かれていそうな、上等な天鵞絨の空と、其処に散りばめられた宝石のような光。

 ああ、眩しい。

 こんな日には、余りにも不釣り合いな天気だ。


 …放送の声が言っていた、天原港という所は、此処から200kmと少しばかり行った場所にある。

 何処までも、無限に続く、広大な空。

 その空の下、確実に、地続きだと分かってはいる。が、とても遠く思える。

 地平が、熱に揺らめく。

 むっとした草いきれが、辺りを取り巻いている。嫌気が差してしまいそうな空気だ。

 行っても行っても、陽炎に悪戯されて辿り着けない気がする。


 軽く辺りを見渡しても、生きた人間は居そうになかった。

 代わりに、辺りに建ち並ぶ建物の、割れたガラスと、電灯の消えた虚ろな暗がりが、ぼんやりと見えるばかりだ。

 誰かの家も、疎らに見える雑居ビルも、淀んだ灰色の空気に包まれている。

 働き時の昼下がりとは思えない程、周囲の一帯は静まり返り、音といったら、湿気を含んだ温い風に、葉擦れの音が時々するのみであった。

 僅かばかりの希望を持っていたが、やはりあの出来事は、学校内のみで起きた訳ではないようだ。

 私達は落胆する。悲しいし、厄介だ。


 *

 私は、命を狙われる。

 かつての家族に、襲われる可能性すらある。

 天原港に到着するまでに、一体どれだけの数のゾンビを見る事になる?

 考えるだに恐ろしい。

 それだけではない。

 食糧の問題だってある。

 下手をすれば、食べ物を得るためゾンビ集団の中に突貫する必要もあるかも知れない。

 港までの道程に、一体どれ程の危険があるのか、想像すると眩暈がした。


 *

 私は、いつゾンビになるかも分からないという問題がある。

 今は落ち着いているが、何時、また意識が薄れるか、予測出来ない。

 そうしたらどうなる?

 多分、校内のゾンビ達と同じく、人間…今私の側にいる『三雲さき』に襲い掛かるのではないか?

 はっきりと、そうであるとは言えない。

 しかし、その可能性は限りなく高いだろう。

 でも、どうだろうか、分からない。何もかも、「可能性がある」「かも知れない」といった、曖昧な言葉でしか語れない。

 それが恐くて仕方ない。

 不確かの濃霧に身を隠し、今この瞬間も、死神が私の首に鎌を掛けているのではないか。今に私の意識を、ぷつりと断ち切るのではないか。

 そんな風に考える程、足が竦む。


 *

 それでも、だ。

 行かなければならない。

 歩かなければならない。

 天原港に向かって。この国からの脱出を目指して。


 じわり、と心に火が点り、それと反比例するように、頭が冷えていく。


 西日を背に歩き出す。

 当座の目標は、食糧の確保だ。

 今夜の寝床も探さなくてはいけない。

 そのためにも、私達は先ず、災害時用の備蓄を取りに行く事にした。

 高校からはかなり遠いが、私達の家の近くの公園に、倉庫があった筈だ。

 大体2時間位歩くだろうか?

 天原港へは、公園の近所を走る道路を伝って行けるので、都合もいい。

 まだ、私達は地理的に恵まれている。まだ、マシな方だ。


 自分にそう言い聞かせて、私達は、この町に永遠の別れを告げた。

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