異色短編1 ネズミ国家
いつもと変わらない、のどかな朝。
少年Aは、飼い犬とともに意気揚々と散歩をしていた。
散歩コースは、川沿いの土手。毎朝飼い犬と潮風を浴びながら散歩するのが、少年の日課となっていいた。
いつものように歩いていると、飼い犬がぐいぐいと引っ張っていたリードが、ピクリと止まった。
なんだと思い振り返ると、犬が道のはしにある草むらの中に頭を突っ込んで、わんわん吠えていた。
糞だろうか。少年は小走りに犬に駆け寄った。
鳴き声の要因は糞ではなかった。犬の正面には、小さなネズミが、二本足でたっていたのである。
ーうわっ!
少年は思わず声をあげた。
「やい、そこなやつ。うるさいっ!」
「ええええ!」
少年はまたもや声をあげた。
ーネズミが、喋った!? なんで!?
しかし、驚いたのもつかの間、ネズミが口をひらく。
「おい、おまえ、動くな、動いたら撃つぞ」
そう言ってネズミはなにやら機関銃らしき物を少年の方に構えた。
ーひいいいい!
「おまえ、なんで俺の居場所がわかった?」
突然の質問に、少年は動揺する。
「え、えーっと、犬が吠えたから…」
「なるほど。こいつの仕業か…」
そう言ってネズミは、今度は犬の方に機関銃を構えた。
「俺の存在を知られたからには…やるしかないな」
ネズミが引き金に指をかける。
「やめろ!!」
少年はとっさに叫んだ。
ーやべ…
「なに、この俺に口答えするとは…いい度胸だな…」
「いや、その…」
「お前にいいことを教えてあげよう…」
「え」
「明日、人類は滅びる…」
「え」
突然の言葉に、少年の口は自然とあんぐりとひらく。
「どういうことだよ…」
「我々ネズミは、人類をも上回る科学力を持っているのだ。」
「嘘だろ」
「いや、ホントだ。どのようにして滅亡させるかは、君には秘密だが…
いずれわかる」
「嘘だ」
「黙れ」
「嘘だああああああ!!」
少年はとうとう怒鳴った。怒り狂い、ネズミを、持っていたリードで、
ペチン!!と殴りつけた。ネズミは倒れた。
ネズミの手から離れた機関銃が、少年のもとに転がってきた。
手に取ってみると、引き金の上に小さなモニターがあるのに気付いた。
ーなんだこれは…
よく見てみると、それはモニターなどではなかった。
そこには見たことのない世界が広がっていた。ネズミたちがたくさんおり、とても現実とは思えない世界だった。よく見るとネズミが何人かで担架を運んでいるのがみえた。少年が目を凝らして見ると、そこには人が寝そべっていた。しかも一人ではない。その後ろにはまたネズミたちが担架を運んでいた。そこにも人が寝そべっていた。どれも黒人だった。
少年は昨日の臨時ニュースを思い出していた。
「今日未明、南下川動物園の、[ネズミ館]を観光していた黒人男性数人が、行方不明になっていることが、警察への通報で明らかとなりました。
黒人男性数人は、今も捜索中ということです」