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『ワールドマスター』/サイバーソーシャルネットゲーム  作者: 著者不明
ERROR1 『始動するワールドマスタープログラム』
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第九話 『ログインしたら真っ先に一之瀬をPKする』

「CSNサーバに繋がってるのはガイアサーバじゃなくてパラレルサーバよ。二人ともパラレルサーバにインしたら目の前にあるモニュメントから動かないで頂戴。迎えに行くわ」


 永森さんが二人を『ワールドマスター』まで案内するつもりらしい。サイバーネットワーク内の案内は彼女に任せよう。

 俺は愛用していた漆黒のBWD『エンペラーブラック~あの時の激情を闇に還して~』を久しぶりに装着した。思わず名前をつけてしまうほどの愛機である。

 そこでふと気になり、透過モニター越しに一之瀬を見る。


「……なあ、一之瀬。ゲームに興味なかったお前がどうして『ワールドマスター』に参加しようと思ったんだ? 何か理由があるのか?」


「はあ? どうしてあんたみたいなゲーオタにそんなこと話さなきゃいけないのよ」


 ぷっちーん。自分だってゲーヲタに片足突っ込んでるくせにこの女っ!

 どうせ一〇〇億円に眼でも眩んだんだろっ。

 もう怒ったぞ。ログインしたら真っ先にこいつPKしよう。

 くくく、この俺様に楯突いたことを後悔させてやる、くははははは!

 向こう側でオープンを待つために、サイバーインしておこうと思ったその時だった。

 窓の外のあちこちからある声が重なって木霊しだした。


「「「10……!! 9……!! 8……!! 7……!!」」」


「にひひ。カウントダウン、だぁね。みんな待ちに待ったCSNゲームだからねぇ」


 虎雄が窓へと視線をやって笑った。

 きっとみんなこのゲームがどんなゲームなのか期待を胸に数字を叫んでいるのだ。


「テレビでもカウントダウンしてるわよ。凄いわね……。大晦日みたい……」


 一之瀬が垂れ流しにしていたTVを見ながら呆気にとられていた。


「「「5……! 4……!!」」」


 学園から、いや街から響く声に未来がはしゃぎながらカウントダウンに参加した。


「「「3……!!」」」


 それに続いて俺と虎雄もカウントダウンを始めた。


「「「2……!!」」」


 永森さんと一之瀬も苦笑すると俺たちともに声をあげる。


「「「1……!!」」」


 俺は眼をつぶり、BWDの電源にゆっくりと手を添えた。


「「「0……!!」」」


 電源を入れた瞬間、俺の意識はサイバーネットワークの中へと落ちていった。





 壮大な音楽と共に、俺の視界を次々と見たことも無い風景や光景が通り過ぎていく。

 森林、砂漠、マグマ地帯、氷雪地帯、機械文明、王様が軍勢を前に演説する姿、平原を駆ける恐竜たちの姿――そんな中、ハキハキとした女性の声が聞こえてくる。


『ようこそ『ワールドマスター/サイバーソーシャルネットゲーム』へ!

 あなたは幾つもの【世界】をまたにかける『異世界冒険家』です!

 『ワールドマスター』には幾つもの【世界】が存在します!

 クエストを攻略して、異世界への扉を開こう!

 そこには人類の想像を超える未踏の地があるはずです!

 ここで幾つか存在する【世界】を紹介しておきましょう!

 まずは――』


「えぇい、世界観の設定など興味はない。スキップだ」


『スキップしました。『ワールドマスター』のシステムをご紹介します!

 『ワールドマスター』は【複合ステータス制】を採用しています!

 【キャラクターレベル】と【スキルレベル】、そして【職業】と三つの【称号】の組み合わせ、装備品によって総合的なパラメーターを――』


「スキップ」


『スキップしました。それではキャラクターメイキングに移ります! 自己反映モードで作りますか? それともエディット――』


「自己反映モードでオッケー!」


『自己反映モード開始――脳波を計測しています。可能な限り何も考えないで下さい』


「ログインしたら真っ先に一之瀬をPKする。ログインしたら真っ先に一之瀬をPKする」


『計測できませんでした。脳波を計測しています。可能な限り何も考えないで下さい』


「……………………」


『計測完了しました! このキャラクターを使用しますか?』


 視界に映しだされたキャラクターは鏡を見ているかのように真っ裸の俺そのものだった。

 どうやら記憶にある俺の姿を読み取ったらしい。

 いやーん、そんなところまで鮮明に映さないでっ!

 って、おいこのデータどっかに漏れないだろうな!?


「そのイケメンでいいよ。見るからに紳士で心優しいダンディズムなそのイケメンで」


『服装に使用するイメージデータを転送してください! ただし、イメージデータを適用した装備は、元にした装備の性能を二割劣化させた状態になりますのでご注意ください!』


「イメデなんて作ってない。初期設定の服装でいいよ」


『キャラクターの名前を決めて下さい! 尚、死亡しても名前は変更できません!』


「ジャスティス」


『その名前は他のプレイヤーが既に使用しております。他の名前をおっしゃってください』


「しねくそが。ぶち殺がすぞ。誰だよ、畏れ多くも勝手に俺様の名前を使ってるやつは」


『〈しねくそが〉でよろしいですか?』


「よろしくない! 全然よろしくないですっ! 『おっす、しねくそが』とか『凄いじゃない、しねくそが』とか言われたくないですぅうう!」


『キャラクターの名前を決めて下さい! 尚、死亡しても名前は変更できません!』


「……じゃあ……セイギ?」


『セイギでよろしいですか?』


「うーん……まあまあかな」


『初期ステータスパラメーターを割り振って下さい! 各ステータスの詳細が知りたい場合はおっしゃって下さい!』


 俺の眼前には幾つかの英字が羅列していた。

【STR】【INT】【DEF】【MIN】【AGI】【DEX】そして――【CHA】。

 すでに各パラメーターの初期値は『10』になっている……のだがなぜか【CHA】だけが『0』になっていた。

 割り振れるポイントは『10ポイント』とある。この数値は全員共通だろう。

 ステータスの英字、ほとんど予想はつくんだけど……【CHA】ってなに?

 俺は眉をひそめながらもヘルプを呼びだす。


「各ステータスの説明とあなたのスリーサイズを恥ずかしがりながら廊下で転んで取りつくろうドジっ娘のように教えて下さい!」


『【STR】は総合的な物理攻撃力を表します。

 【INT】は総合的な魔導攻撃力を表します。

 【DEF】は総合的な物理防御力を表します。

 【MIN】は総合的な魔導防御力を表します。

 【AGI】は総合的な素早さを表します。

 【DEX】は総合的な器用さを表します』


「…………。スリーサイズと【CHA】はどうした。ちゃんと恥ずかしがりながら説明してくれ。べつにスリーサイズだけでも、い、いいんだぜ? チラッ、チラチラ」


 しかし、どうしたことだろう。いくら待とうとも返答がない。

 俺は「ちぇー」と口を可愛く尖らせると、メイキングを進めることにした。

 指を伸ばし【STR】――物理攻撃力に『10ポイント』を割り振ろうとして、指を止める。

 ……少し考えた末、つつつ、と指を動かし【CHA】にボーナスポイントを割り振ってみた。


『【CHA】にボーナスポイントを割り振ることはできません!』


「できねーのかよっ! なら選択肢に入れとくなっての!」


 結局、俺は【STR】に『10ポイント』を割り振って『20』という数値に変える。


『すべてのポイントが割り振られました! これでよろしいですか?』


「よろしくありますん!」


『それでは異世界での冒険の始まりですっ!! ご武運を――ッ!』


「はい、お姉さんストーップ。今の台詞をどう認識したのかなー? かなー?」


 先ほどの若々しい女性の声とは違い、今度は緊迫感のあるバリトンボイス――オジサマの渋い声へと切り替わる。


『世界暦二一五三年、無数の異世界を繋ぐ《ゲート》の存在が――』


「うるさい、おっさんは黙れ」


 なんだか始まったオープニングっぽいものを俺は一瞬で飛ばしていた。

 次の瞬間。

 俺は『ワールドマスター』の大地へと足を踏み降ろしていた――



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