表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ワールドマスター』/サイバーソーシャルネットゲーム  作者: 著者不明
ERROR4 『偽りのディカイオシュネプログラム』
56/109

エピローグ

 

【二一五三年/機月一二日/風の日/二三一八時/始まりの世界/ジョルトー城下町】


 俺は四人がけの丸いテーブル席を一人で占拠して食事を摂っていた。


『あいつの動きはお前そのものだ』


 俺の脳内に、周りには聞こえない声が響いた。

『ワールドマスター』に存在する【コール】機能を使えば、『ワールドマスター』にログインしている限りどんなに離れた相手だろうと通話が可能だ。

 俺は今、その機能を利用してある男と会話していた。


『あいつはお前じゃないが戦闘能力は俺たちと同等だ。お前の“先読み”も健在だった』


 そう告げているのは俺と背中を合わせるように、後ろの丸テーブルで俺と同じように一人で占拠して食事をしている〈エクスカリバー〉だった。

“聖剣”VS“魔王”の一戦があった翌日、〈エクスカリバー〉からいきなり【コール】が飛んできて俺は城下町の飯所に呼び出されたのだった。


『俺のやろうとしている事がすべて読まれている。そんな動きだった。やり辛かったぞ』


 負けたといってもノーダメージのくせにどの口が言ってるんだ。偽“魔王”が動きを読んで反撃しても〈エクスカリバー〉のやつズバ抜けた反射神経で避けまくってたし。


『場外負けってルールがあって良かったじゃん。一生決着がつかないのかと思った』


『負けた言い訳をするのなら……思考がこんがらがってしまってな。偽者のはずの“魔王”が本物の“魔王”と同じ動き、同じ強さだったんだ。驚くのも無理はないだろう?』


 それは俺も同じ事だった。あの闘技場での試合を観た時、俺も体を固まらせてしまったのだから。


『なぜお前特有の動きをできる者が二人もいるのか……。まあ、何にしても試合中に考えることじゃなかったな。しかも、相手はお前と同レベルのプレイヤー。命取りになる雑念だった。結果、俺は場外に飛ばされてしまったわけだが』


 やれやれといった感じで背中からため息が聞こえてくる。


『まあ決勝戦を楽しみにしていよう。もしかしたらあの偽“魔王”も負けるかも知れないからな』


『はあ? お前に勝ったプレイヤーが……俺と同等の動きができる偽“魔王”が負けるだって?』


『ああ、それが有り得ない話じゃない。決勝戦はプレイヤー名不明、二つ名で大会登録している奴と偽“魔王”との対決だ。そいつは準決勝で〈ヴァルキュリア〉を負かしている』


『ヴァルが負けたぁ!? それ本当かよ!? あいつが負けるとしたらお前くらいだと思ってたけど……。そいつの二つ名って何て言うんだ?』


『……“ソロ”だ。その二つ名の意味に違わずソロプレイヤーのようだな』


『うーん、聞いたことないな。俺がいない間に有名になったプレイヤーか?』


『俺も知ったのはつい最近だ。『ワールドマスター』開始後についた二つ名のようだ。攻撃スキルは【居合い】と【ライフル】を使うらしいぞ』


【居合い】に【ライフル】。どちらも攻撃後の隙が大きいスキルだった。

【居合い】は対象を一刀両断できる大ダメージを狙えるが、攻撃を放った後がもろに隙だらけだ。【居合い】以上に【ライフル】に関しては特殊なデメリットが存在する。超遠距離攻撃が可能であることやヘッドショットによる即死といったメリットもあるが、キャラクターが持ち歩ける弾数が六発だけという制限があるため、六発撃った後はただの死にスキルになる。

 しかも一発撃った後はコッキングして次弾を装填し直すという作業が必要なため、闘技場というフィールドで撃てるのは実質一発、うまく間合いを取れたとしても二発が限度だろう……。どちらにしてもタイマンでまともに戦えるスキルとは思えない。

 なんにしても、このスキル構成から考えて“殺るか、殺られるか”の戦闘を仕掛けてくるのが予想できた。ここまで勝ち残っていることを考えると、一撃必殺を見事に通してきたということだろう。

 あの一切油断も隙も無い〈ヴァルキュリア〉相手にさえ、だ……。


『ふーん、完全にノーマークのダークホース……。新規参入組みってわけだ』


『……いや、違うな。名前を隠していても戦い方で分かる。おそらく“ソロ”はお前もよく知っているプレイヤーだ。二年前でさえ驚異的なプレイヤーだったが……お前のいない二年の間にさらに成長したらしい。この二年間、どれだけ気まぐれに放浪したのだろうな……』


『放浪……? 俺がよく知ってるだって? 誰なんだよ、そいつ』


『自分の目で確かめることだ。観ればすぐ分かる』


『そうさせて貰うかな。試合っていつだっけ?』


『四日後、六月一六日だ。スケジュールでは夜の部になっている。なんと言っても決勝戦だからな早めに闘技場の席を取っておいた方がいいぞ。……まあ、なんにしてもだ。今回の大会で俺と肩を並べるプレイヤーがお前以外にもいると思い知らせれたな。……面白い』


『はぁ……。このドMめ。面白くなんかないっての』


 くつくつと背後で笑いを漏らす〈エクスカリバー〉に俺は呆れてしまう。


『気をつけろ。あいつが“魔王”と名乗っているのには何か理由があるはずだ。遅かれ早かれお前も偽者と対決しなければならない時がくるぞ。……舞台の上などではなくな』


『ああ、分かってる。ありがとな、〈エクスカリバー〉』


『ふん、勘違いするな。偽“魔王”も本物のお前も、倒すのはこの俺だからな』


 それで話は終わりとでも言わんばかりに〈エクスカリバー〉が席を立つ気配がした。


『言い忘れたが……会計はお前持ちだ。情報代にすれば安いもんだろう』


『はあっ!?』


 俺は〈エクスカリバー〉がいたテーブルへと慌てて振り返る。

 そこには幾つもの皿が塔のように高く積み上げられているのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ